90代のA様が病気がちになられ、体調に対する不安の訴えとともに昔の学校の生徒・教育の事をよく話されていました。A様は若い頃から定年まで中学の教師として勤め、校長先生としても生徒に厳しくそして愛情を持った教育者でした。実際に勤めていた学校に行くと少しは気持ちが前向きになれるかと思い、本人の口から出るいくつかの学校名を基に数件連絡を取り、A様の思いを話しました。車椅子での学校見学と生徒との触れ合いをお願いするが数件断られ、唯一、浦崎中学の小原校長が引き受けてくださいました。小原校長は「A様は自分達の大先輩です。気持ちは分かります。体調が優れないなら早い方がいいですね。」と快く応じてくださり、「今週、立志式があるので来ませんか。」とお誘いをくださいました。A様に浦崎中学へ行く話をすると喜ばれて、昔勤めていた頃の事を話してくださいました。
当日は車移動にて少し疲れを見せておられましたが、立志式に参加し、式の後に生徒や学校関係者に声を掛けられると「頑張るんだよ。立派になれよ。」と、教師の顔になり、懐かしそうにされました。小原校長はその後、在校生の父兄や身内の中に教え子がいるかもしれないと、調べてくださいました。
A様が浦崎中学へ訪問した事とその経緯などが毎日新聞に記事として取り上げられ、それを見た60年前の教え子から「面会に行ってもいいですか。」と事業所に連絡がありました。再会できる日の少し前にA様の体調が急変し、入院されましたが、教師だったA様と中学1年だった教え子が60年ぶりに再会しA様は涙を流しました。当時の写真を一緒に見ながら娘様もとても喜ばれました。
この翌日、A様は亡くなられ、ご家族からは「最後に良い思い出を残してくれてありがとう。」との言葉を頂きました。
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