― 気掛かりだった亡きご主人・ご両親のお墓へ、自分の足で行く事が出来ました ―
「主人の墓参りに行きたい。」と口にされ、続けて「以前はよく行っていた。」と、A様は何年も行く事が出来ていないお墓の事を気にされていました。
この事を口にされた頃のA様は、体調が非常に悪く食事も殆ど摂れず、歩く時も体重の殆どを介助者に任せて歩く程、体力が衰えていました。また、目の手術後間もなくで手術前よりは少し見えるけれど、手元のご飯もあまり見えない時もありました。本人の願望により、元気だった頃なら行きたい時に行く事の出来た墓参りをまた実現しようということになりました。
「気になっていたお墓に行ける」と期待して過ごすA様は日に日に体調面や精神面に大きく変化が現れました。食事はほぼ毎回完食され、介助者の手引きで歩行が出来、職員の顔の表情が変わるとすぐに反応される程に目が良く見えるようになられました。
墓参りと同時に、過去のわだかまりが原因で十数年会っていない弟様にも会いたい、実家の仏壇にも手を合わせたいという願望も口にされ、妹様のご協力により墓から近くの実家に住まれる弟様に会いに行けることになりました。
当日はいつも通られていた道を通り、桜や地元の饅頭を楽しむなど、以前されていたのと同様な過ごし方をして墓に向かいました。道中の飲食店ではいつもの3倍以上の食事量を召し上がられる程、嬉しさが溢れていました。
墓に参り、念願が叶い、「また来れるとは思わんかった。」「次は墓の周りを掃除しに来たい。」と仰いました。
その後、実家に寄ると、長年の凝りがまだ残っておられる様子の弟様はしばらく沈黙でおられましたが、嬉しさで終始微笑むA様を見られ徐々に様子が変わり、最終的には「また来いや。」と言われました。
数カ月前までは、ご両親がまだ生きているという錯覚になられ、夜中にお父様やお母様を探しに行かれることも度々ありました。墓参りに行こうという話が出た頃も、自宅に帰ると「お父さんただいま。」と言われることもありました。
この度、実家の仏壇に手を合わせられてからは、「お父さんはとうに亡くなったよ。」とご本人から言われます。御両親が亡くなられたという現実も自然に受け入れられているご様子です。
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