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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

「回り道」と「贅沢」の関係

2010/02/02 12:00:00  社会全般
仁伍町内会主催「とんど火祭り」での光景。「とんど」にばかり目を奪われるのではなく、この様な住民間の交流促進の場面にも着眼したいですね。
 NHKの人気番組『プロフェッショナル仕事の流儀』(アンコール2010年1月26日放送「修業は、一生終わらない 鮨職人 小野二郎氏」)を視ました。自身の信念を持って、妥協を許さぬ実践をしている出演者達から、若輩浅学の私が学べることは多々ありますので、時間の許す限り好んで視ている番組です。仕事の内容や、立場、理念によっては、大いに参考になる方から、あまり参考にならない事例もありますが、大なり小なり学べるものが詰まっていると認識しています。
 今回は、80代の鮨職人が、年を重ねるごとにその「専門性」を高めてきたその姿に強い感銘を受けました。高齢になっても高まる能力、若僧には無くて、高齢者にしかない優れた能力があることをどこかで信じている私にとっては、非常に思慮深いことです。
 私が注視したのはこの点ばかりではなく、「無駄が極上を生む」と小野氏が認識していることでした。この番組では更にもう一点感慨深い点がありましたが、この事はまたの機会にお伝えできればと思います。
 つまり、「『手当て』(仕込み)を施した魚のすべてが客に出されるわけではない。例えば、同じ手当てを施した締め鯖でも、二郎が味を見て、その舌にかなったものだけが、鮨として握られ、残りは賄いに回る。こうした『無駄』が、うまい鮨を握るために欠かせないという」(NHKのホームページより)。
 「無駄」や、「回り道」を忌避したり、恐れていては良い仕事が出来ないと予ねてより私は考えています。よい仕事には、「無駄」があるということを覚悟しておらねばならぬ、ということなのでしょう。私たちの実践に置き替えて換言すれば、「無駄」というよりも、「試行錯誤」となるのでしょうか。多くの実践から「試行錯誤」したうち、そこから得られて実益に繋がるものは、僅かかも知れませんが、実益に繋がらず、陽の目を見なかった「取り組み」も自身の身となり骨と化すのではないでしょうか。自身の財産として、蓄えられ、いつかその経験が、自身の信念を具現化する際効力を発揮するのでしょう。飽くなき信念へのこだわりと矜持があればこそ、妥協は決して許されず、厳しい試行錯誤が欠かせない。厳しい試行錯誤の中で、取捨選択が繰り返され、本物が残る。そのことを毎日繰り返すことに、「上達」のヒントがあるように思われます。まさに、失敗は成功のもとなのかもしれませんね。
 時期をずらして、『中国新聞』2009年12月27日の記事から(「今を読む」広島大大学院 総合科学研究科教授 吉村慎太郎氏)。
「近年、大学院生のなかにも資料を注意深く読まないだけでなく、文献収集さえ怠る者が増えているようだ。私は院生時代、1冊の本を借りるため、東京から大阪に行ったこともあるが、そうした経験は今の院生には『おとぎ話』かもしれない。
 『省エネ』的発想からすれば、読むべき文献量を最小限に絞り込み、短期間に論文という成果を出すことが望ましい。しかし、そうすれば、すそ野の狭い、深みに欠けた内容になりかねない。何ごともスピードと生産量を求め、さらに『省エネ』が加わると、論文の『粗製乱造』になる。研究は研究以外に目的はなく、無駄な作業なつきものだ。(中略)
 視覚に訴える教材がもてはやされる。漫画やTVゲーム『熱中症』の半面、熟読がすたれ、聞きかじりの言葉やレッテルに飛び付き、それぞれの妥当性の是非や奥深い背景を理解しようとさえしない。記憶と反復、流行のとらえ方をなぞるがごとき『模倣』が繰り返される。(中略)
 『無駄なことはやらない』という『省エネ』的発想ではなく、人的エネルギーの『浪費』こそが、現状に突破口をもたらす教育研究の原点であるとの認識も必要だろう。(中略)
 自らのエネルギーを積極的に『浪費』する姿勢は、『模倣』がもたらす以上の成果を、遠回りであれ、人間に残す『贅沢』なのだ」。
 私は、19歳より、新聞・雑誌のスクラップを続けております。また、心の残った文章は全て、引用先を明らかにしたうえで、パソコンのフォルダーに蓄積しています。これらの作業には非常に手間がかかり、「こんなことを続けて意味があるのかな?」と思いながらも、早18年が経ちます。
 この一見、何の役に立つのかわからぬ営みこそが、私にとっての「贅沢」なのかも知れません。

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中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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