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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

2015年 年頭の辞※1

2015/01/01 15:31:37  社会福祉
 昨年7月メルボルンで開催されたIFSW及びIASSW総会で「ソーシャルワークのグローバル定義」が採択されました※2。人々の権利擁護のための社会変革の実践や、その拠り所としての社会正義や多様性尊重の原理が強力に打ち出されており、旧定義よりも本新定義はある意味、より本来のあるべき姿への接近が目指されているといえます。

 一方で残念なことに、我が国における人々の権利擁護と社会正義は減退の一途を辿っています。社会保障においては、生活保護費や介護報酬の低減が目論まれる一方で、法人実効税率の引き下げを決行する様相です。また、安全保障では、集団的自衛権の行使容認が閣議決定で成されるという過去の過ちを全く省みない状況が進行しています。まさに、ソーシャルワーカーが、社会正義に基づき、社会変革を展開する対象が目の前に佇んでいるのです。

 折しも、天皇は「新年にあたっての感想」で次のような声明を発しました。「本年は終戦から70年という節目の年に当たります。多くの人々が亡くなった戦争でした。各戦場で亡くなった人々、広島、長崎の原爆、東京を始めとする各都市の爆撃などにより亡くなった人々の数は誠に多いものでした。この機会に、満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています。この一年が、我が国の人々、そして世界の人々にとり、幸せな年となることを心より祈ります」※3。

 実は、政治的発言の許されない天皇や皇太子の近来の発言には目を見張るものがあります。例えば、天皇は「81歳誕生日の会見」でも次のように語っています。「先の戦争では300万を超す多くの人が亡くなりました。その人々の死を無にすることがないよう、常により良い日本をつくる努力を続けることが、残された私どもに課された義務であり、後に来る時代への責任であると思います。そして、これからの日本のつつがない発展を求めていくときに、日本が世界の中で安定した平和で健全な国として、近隣諸国はもとより、できるだけ多くの世界の国々と共に支え合って歩んでいけるよう、切に願っています」※4。

 加えて、その前年の誕生日に先立つ会見でも、「戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し、かつ、改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いています。また、当時の知日派の米国人の協力も忘れてはならないことと思います」※5という件が確認できます。

 更には、去年2月23日に54歳の誕生日を迎えた皇太子も以下の様に述べています。「今日の日本は、戦後、日本国憲法を基礎として築き上げられ、現在、我が国は、平和と繁栄を享受しております。今後とも、憲法を遵守する立場に立って、必要な助言を得ながら、事に当たっていくことが大切だと考えております」※5。

 もちろん、政治的権限に制約のある天皇・皇太子によるこれらの発言は、その範疇に依拠したものであるのか、若干の際疾さを市井に与えているのは事実です。しかしながら、裏を返せば、彼らが、この様なぎりぎりの意見を表明せざるを得ない極めて危険な状況下に今の社会があるということなのでしょう。国民の多くは、この危険な状況にどれほどの自覚を有し、そしてこれらの発言をどの様に捉えているのでしょうか。

 今私たちはまさに問われているのです。私たちが、これから数十年未来に向けて、現下の社会をどの様に導いて行こうとしているのか、と。時の政府が70年前に起こした責任を、現在に生きる私たちが直接的な責任を負うことは無いでしょう。いや、責任の取りようがないと私は考えます。しかし、問われているのは、現在であり、未来に向けての過程にあります。そして、このことに対する私たちの責任は逃れようがありません。過去に犯した過ちを、繰り返そうとする現在と、未来への道筋を現世代がつくったならば、その責任は私にもあると言えます。

 私たちは、現在の課題から目を背けるべきではありません。言わずもがな、現在の課題は、今私たちが取り組むべき対象なのです。そして、この責任から逃れることもできません。これら現在との対峙を避けるために、向き合うことを欺瞞的にはぐらかすために、過去を弄あそぶべきでもないのです。現在に対する重大性に比べ、過去や歴史は、現在の発展のために用いるべき“道具”に過ぎません。しかし、これらは、いまを生きる人々の権利擁護に資するものでなければなりません。我が国における状況は、むしろ、これら歴史を、人々の暮らしを守る権利擁護とは、真逆の方法で用いようとしているのではないでしょうか※6。

 以上の事を踏まえながら、現在の、そして、これからの人々のためにこそ、私たちはソーシャルワークを展開する必要があります。であるならば、まずは、これら目の前の社会構造を人々の目線で的確に捉え、これらと真摯に向き合うことが求められるでしょう。ソーシャルワークの新定義を携え、今年もより精力的に実践を堆積して行こうと思います。




※1 日本を含めてアジア諸国では、本来は旧正月を祝う習慣があります。また、年号や暦は宗教・民族・文化によって多様性が認められますので、敢えて、今年が何年で、1月1日がおめでたいとは考えておりません。しかし、実践家として、社会通念上、儀礼的に「おめでとう」と述べることはあります。
※2 GLOBAL DEFINITION OF THE SOCIAL WORK PROFESSION
Social work is a practice-based profession and an academic discipline that promotes social change and development, social cohesion, and the empowerment and liberation of people.
Principles of social justice, human rights, collective responsibility and respect for diversities are central to social work.
Underpinned by theories of social work, social sciences, humanities and indigenous knowledge, social work engages people and structures to address life challenges and enhance wellbeing.
The above definition may be amplified at national and/or regional levels.
ソーシャルワークのグローバル定義
「ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学および地域・民族固有の知を基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける。この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい」。
(社会福祉専門職団体協議会国際委員会+日本福祉教育学校連盟による日本語定訳)
※3 『朝日新聞』2015年1月1日
※4 『毎日新聞 』2014年12月23日
※5 「田原総一朗「天皇・皇太子が踏み込んだ日本国憲法論」」『週刊朝日』2014年3月21日号
※6 ジョン=デューイ『民主主義と教育(上)』2013年6月岩波文庫PP.125-126「人間は現在にしか生きることはできない。現在とは、過去の後に来るにすぎないものではない、まして過去が産み出したものではない。それは、過去から脱出して行くときの生命のあり方なのである。過去の産物の研究は現在を理解するのに役立たないだろう。なぜならば、現在は、それらの産物から生ずるのではなくて、それらの産物を産出した生命から生ずるのだからである。過去と過去の遺産についての知識が大きな意義をもつのは、それが現在の中に入り込むときなのであって、それ以外の場合ではない。(中略)人々は、現在の未熟さを円熟させる力として過去が提供するものを利用しないで、現在の未熟さから逃避して、その想像上の優雅さの中に生きようとするのである。(中略)過去は、まさにそれが現在に特有なものを含んでいないからこそ、過去なのである。動きつつある現在は、それ自体の運動を方向づけるために過去を利用するならば、過去を含んでいる。過去は想像力の大きな資源であり、生活に新たな広がりを付け加えるのであるが、それは、過去が現在の過去と考えられており、切り離された別の世界とは考えられていないならばのことである」。




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中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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