『まちづくり拠点としての可能性』
今回からは、視点を少し焦点化したお話を展開していきたいと考えております。題して、「まちづくりとしての小規模多機能ケア」。小規模多機能型居宅介護(以下「小規模」)が制度化されて早4年が経過しましたが、実践レベルにおけるその運営方針は依然曖昧模糊としているように見受けられます。宅老所スタイルを貫いた実践や、単独型で在宅支援に向き合う実践、高齢者専用賃貸住宅等の居住サービスとの併設型の実践などなど、その実践方法は多様化を極めているようです。もともと、厚生労働省令や解釈通知において詳述されていない「小規模」の運営は、事業所にその裁量が幅広く委ねられていると言えます。これこそが、きめ細やかで臨機応変な対応ができる「小規模」の生命線なのですが、法人・事業所として、細部にわたる具体的な運営方針を示せなければ、その実践は曖昧模糊と化してしまいます。
制度上の曖昧さと相まって、事業を運営する法人の種別・規模・経営方針によってもその実践は様々です。公益法人や営利法人の制度上の問題や、従業員数千・数百名規模の法人から十数名規模の法人、介護保険施設・医療機関を運営している法人や「小規模」単独運営の法人、在宅支援にこだわった経営方針を掲げている法人、居住サービスとの併設を特色としている法人、NPO等ボランタリーな視点で運営している法人、地域ケアやまちづくりにこだわった運営を行っている法人など。法人・事業所に多くの裁量が委ねられているからこそ、その多様化が顕著です。
制度創設から4年を経過した今、「小規模」の多様な可能性が顕在化しつつあります。しかし今は、総体的な方向性を定めるには時期尚早であり、その可能性の芽を潰さずにひとつ一つの多様な実践を丁寧に検証していく時期に入ったものと認識しております。居住サービスとの併設のみならず、他の居宅サービスとの併設、単独型、「グループリビング」との併設等多様な実践方法を検証していく時期に入っているのではないでしょうか。運営方針の一極化ではない、運営方針の多様化の状況も「小規模」の特徴なのかも知れません。
本テーマでは、その多様性ある中の一つの実践方法として、「まちづくりとしての小規模多機能ケア」の実践について考えて行きたいと思います。多様な実践の中の一つとして、「小規模」がまちづくりの拠点として機能する可能性を明らかにしていきたいと考えます。
「利用者の居宅における生活の継続を支援する」(解釈通知)ことが私たちの責務ですが、利用者の生活支援の幅は限りなく広いものです。その幅広い支援を介護専門職だけで担っていくことは到底不可能でしょう。そこには、� 崋租�な課題」�◆峪�間的な課題」といった二つの課題が存在します。�,砲�いては、人間の自立生活を成り立たせるには6つの要件(「�]�働的・経済的自立�∪鎖静�・文化的自立 ��身体的・健康的自立�ぜ匆餞愀古�・人間関係的自立�ダ験莎蚕囘�・家政管理的自立��政治的・契約的自立」)※1があると言われていますが、これら全てを介護専門職だけでは実践できない事実が確認できます。�△亡悗靴討蓮⊃泯韻妨�るように、要介護3の利用者を想定し居宅サービスを組み合わせたとしても、介護保険サービスではフォローが出来ない空白の時間が圧倒的に多い現実が理解できます。このように、利用者の生活支援の範囲を鑑みると、介護保険サービスにおける支援の「守備範囲」は限りなく狭いのです。この守備範囲の狭さは、制度上実践可能な範囲としての狭さと、限られた人員配置で仕事をしている専門職の労力の限界における範囲の狭さといった二つの側面があります。制度では認められていないし、ボランティア精神はあっても体がついてこない専門職のジレンマがそこには生じています。
それらのジレンマを解消するためにも、専門職は自らの実践における限界点を理解し、地域のあらゆる社会資源を活用して利用者支援を行うことが目指されます。そのためには、保健・医療・福祉専門職とはもちろん、地域住民・ボランティア等のインフォーマル・サポートや、住宅・雇用・環境・教育・司法等の生活関連分野とのネットワークの構築が欠かせません。その上で、インフォーマルな社会資源としての地域の住民・商店・企業の力を借りての支援体制づくりが求められます。まちづくりに関与していく介護専門職の面目躍如たる所以がここに生まれるのです。
「まちづくり」と一言でいっても、そこには枚挙にいとまがない実践が含まれるものと思われますが、本テーマでは、杉岡直人氏の言葉をお借りして「まちづくりとは、フォーマル・インフォーマルの両面から、社会資源の活用・動員を通してサービス利用者がコミュニティの生活課題の解決を図る取り組みを指す」※2と認識し、検討してまいります。
また、福祉の視点におけるまちづくりは、従来社会福祉協議会が担ってきた分野ですが、これからの実践は社会福祉協議会のみが行えばいいという視点ではなく、社会福祉に携わる全ての専門職がまちづくりに関与していく実践が求められています。「地域の絆」で特に大事にしている視点は、地域に対して�ヾ蕕慮�える専門職、��汗をかく専門職の実践です。�,蓮⊆�治会長や民生委員等地域のキーパーソンとの関係のみではなく、佐藤さん、山田さんといった地域住民ひとり一人と顔の見える関係の築ける専門職を指し、そのためには主たる地域の活動範囲を自治会、どれだけ広くとも小学校区圏内に留めた実践が不可欠であることを意図します。�△砲�いては、地域住民から見て、具体的に何をしてくれる専門職であるのか理解が出来る専門職の実践を指しています。その専門職がどのような機能や役割を有しているのか、専門職がどのような価値・理念に則って地域と関わっているのかが問われていると認識しています。
そのように考えると地域密着型サービスとして、利用者の日常生活圏域をサービスの対象範囲と定め、その中で、具体的なケアという実践を積み重ねている私たちの取り組みこそが、小地域におけるまちづくりに最も適しているのではないかと推察されます。地域におけるまちづくりの拠点としての「小規模」の可能性と実践について、次回より考えていきます。
※1 大橋謙策氏 『新版・社会福祉学習双書2008 7地域福祉論』 P.22 全国社会福祉協議会
※2 杉岡直人氏 『新・社会福祉士養成講座9 地域福祉の理論と方法 第2版』 P.210 中央法規
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