2012年度介護保険制度改正における大きな目玉とされている「地域包括ケア」。その2009年の報告書では、「自助を基本としながら互助・共助・公助の順で取り組んでいくことが必要ではないか」※1と提言され、「自助は、自らの選択に基づいて自らが自分らしく生きるための最大の前提であり、互助は、家族・親族等、地域の人々、友人たち等との間の助け合いにより行われるものである。したがって、自助や互助は、単に、介護保険サービス(共助)等を補完するものではなく、むしろ人生と生活の質を豊かにするものであり、『自助・互助』の重要性を改めて認識することが必要」※1と結ばれています。
同じく2010年の報告書においても、「地域には、介護保険サービス(共助)だけでなく、医療保険サービス(共助)、住民主体のサービスやボランティア活動(互助)、セルフケアの取り組み(自助)等多くの資源が存在するが、(今後は)『自助、互助、共助、公助』の役割を踏まえながら、有機的に連動して提供されるようなシステム構築が検討されなければならない」※2とあります。
わざわざこの個所を引用する意図は、以下の2点における引掛りがあるからです。一点は、介護保険制度は共助に該当するべきものなのか、という疑問。更にもう一点は、少子高齢化と財政難が相まった現下、これからの社会情勢を鑑みれば自助・互助の重要性は理解できるが、では公助は減退しても良いのかという猜疑心にあります。
そう考えていた矢先に、福祉用具の業者様が持参して下さった『シルバー産業新聞』の白澤政和先生のコラムに目が留まりました。コラムの名前は「快刀乱麻」。如上の疑問が私の中で解きほぐされるのを感じました。わが意を得たりで拝読した内容は以下の通りでした。
「介護保険制度を医療保険同様に『共助』と位置づけていることに違和感をもつ者であるが、いかがであろうか。
従来から、『公助』『互助・共助』『自助』という3つの分類はよくしてきた。介護保険制度との関係で言うと、介護保険制度は公助であり、近隣やボランティアが互助・共助であり、利用者自体が自ら有している能力等を活用することが自助であるとしてきた。今回、これら3つのフォースに加えて、『共助』が加わり、4つに分類され、介護保険制度は、従来からの『公助』ではなく、『共助』として位置づけられていることである。(中略)介護保険制度には、財源の半分が国、都道府県、市町村からの公費が投入されており、(中略)更に国は介護保険法を作ることで介護保険制度の骨格を作り、都道府県はサービス事業者の指定を行い、保険者である市町村が要介護認定の決定を行っている。また、市町村等が保険者として介護保険の運営に責任を持っている。その意味では、介護保険制度は公的責任が強い制度であり、『公助』と位置づけられてきたと言える」※3。
実は若輩の世代においては、既に介護保険制度は共助として位置づけられていたように記憶をしております。当初はピンとこなかったのですが、地域福祉活動を実践していく中で、また住民学習の講師をする中、「共助=介護保険制度」の説明に違和感を持っておりましたので、私の中では、「互助=隣近所のお互い様の助け合い」、「共助=地域の中で共に支え合う仕組み」であると認識し、そのように説明を重ねてきました。互助は、隣近所の御裾分け等、最近隣における非形式の自発的な支え合いを指し、共助においては、一人暮らし高齢者の見守り活動等、自治会や小学校区における形式的・組織的でかつ自発的な地域住民同士の支え合いを想定しております。
介護保険制度が共助であるとの言い分が通れば、政府・行政は、公助と共助のメニューは用意しているのだから、残りの自助・互助を充実させればよいという方向に流れる恐れがあるのではないか、結果として公的責任の逃避や減退に繋がるのではないかと若輩は危惧しているわけです。
そのことに対しても白澤氏は、「それでは、介護に対して公助は何を担うのであろうか。(中略)介護保険制度には国や自治体の責任が大きいことを確認し、公的責任から撤退するかのような雰囲気は避けなければならない警鐘としておきたい。さもなければ、保険料を払う国民から、介護保険制度に対する信頼を失うことを危惧するからである。(中略)『自助』や『互助』も重要であるが、『公助』の重要性を認識して、新たな介護保険制度に改正されることを願っている」※3とまとめておられます。
『自助』や『互助』、そして私の言う意味における『共助』が重要であることは言わずもがなでございます。そして日本型のまちづくりや、社会福祉のあり方を鑑みると、自分たちの地域を自分たちの選択において守っていく住民自治の意識と力を引き出しながら行っていくべき重要性は十二分に認識しているところです。だからといって『公助』が減退して良いというわけでは決してなく、「要援護者」の生活の質、延いては全ての市民の生活の質を高めるために、『自助』『互助』『共助』の増幅のみならず、『公助』においても更なる投入が必要であると認識しています。そうでなければ、『自助』『互助』『共助』のモチベーションは高まることは無いでしょう。私どもNPO活動においても、いくらボランタリーな活動をしていても、行政が全く協力をしてくれないのであれば、気持ちも萎えてしまう側面もあるわけです。無論、本来のNPO活動とはその様な活動ではないものの、そのような感情が起こることも否めない事実でしょう。
古くから、地域福祉の実践が、経済指標におけるビルトイン装置として機能することに警鐘が鳴らさされてきたことを若輩も認識しているところです。「たとえば参加論への社会学者の批判でいうと、『ボランティアで国民を総動員し、住民を漕ぎ手と位置づけ、舵手は依然として国や地方自治体(行政)である』というものがあります。参加に名を借りた権力への取り込みだと。これに応える理論化が必要です。(中略)社会の仕組みとしての政治システム・経済システム・社会システムという三つのシステム構造のなかで、我々は社会システムのところを、より成熟させ、豊かにするための実践とその理論化を担っている。近代化を急いだ我が国は、社会のシステムも価値観も政治と経済に引きずられていたのを社会システムのなかで再構築していくのが地域福祉の一つの役割ではないかと思っています」※4。
地域福祉実践家としてこれからも、利用者を中心に据えたまちづくり、利用者の権利擁護の観点におけるまちづくり実践に今まで以上の情熱を注ぎ、『自助』『互助』『共助』機能向上の実践に取り組んで参る所存です。それこそが、利用者が安心して暮らせる地域社会構築へと繋がり、延いては、誰もが安心して暮らせる地域社会構築として福祉の領域を凌駕したまちづくりや社会構築へと繋がるものと信じています。そのためには、住民の主体性・自発性の形成が不可欠でしょう。そこに働きかけを行うのも私たちの仕事です。
しかしながら、『公助』の機能をしっかりと掴んで放さないことも、私たち社会福祉実践家の仕事であることを忘れてはなりません。
※1 地域包括ケア研究会「地域包括ケア研究会 報告書 〜今後の検討のための論点整理〜」三菱UFJリサーチ&コンサルティング P.7 平成20年度老人保健健康増進等事業 2009年5月22日公表
※2 地域包括ケア研究会「地域包括ケア研究会報告書」三菱UFJリサーチ&コンサルティング P.3 平成21年度老人保健健康増進等事業 2010年3月
※3 白澤政和氏『シルバー産業新聞』「白澤教授の ケアマネジメント 快刀乱麻 第18回」第167号 2010年9月10日
※4 右田紀久恵氏『地域福祉の源流と創造』中央法規 P.95 2003年6月
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