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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

形骸化する「在宅」定義考

2010/12/29 12:00:00  社会福祉
少し前の広島市内の風景。実はこれ、あまり大きな声では言えませんが、車を運転しながら撮影しました。
 「(前略)国土交通省と連携しながら、高齢者向けの住宅を計画的に整備し、介護サービスや生活支援サービスと連携を図っていくことが必要である。
 具体的には、高齢者住宅について、24時間対応の定期巡回・随時対応サービス、訪問看護、デイサービス等の介護サービスを組み合わせた仕組みを広く普及することで、中重度の要介護者であっても、特養などの施設への入所ではなく、住み慣れた地域で安心して暮らすことを可能とし、居宅介護の限界点を高めていくことが望ましい」※1。

 上記は厚労省が取りまとめた「介護保険制度の見直しに関する意見」から抜粋したものです。厚労省としては、国交省と連携し、高齢者住宅と介護サービスの組み合わせを推進していく意向だそうです。そのことをもって、「居宅介護の限界点を高め」、「特養などの施設への入所」を緩和させるのだと。

 ここで猜疑心を抱いてしまうのは、高齢者住宅と介護サービスを組み合わせてなされるケアと、特養にみられる施設ケアはどう違うのかということに、自身としましては、答えが見出せないからかも知れません。財源や制度の根拠には大きな違いがみられるのですが、利用者の処遇についてはその違いが不明瞭です。そして、高齢者住宅と介護サービスの組み合わせによるケアは、在宅ケアに位置付けられ、介護サービスを利用していない間の利用者の処遇についての質の保証は制度上明示されていないのです。この点は「現状での高専賃では、質を担保しているのは居室の広さや整備、構造であり、運営には関与していない。今回の(介護保険制度)改正では、入居者保護やケアの内容に焦点を当てた質の担保が必要である」※2と白澤政和氏も述べられています。このようなケアの在り方を手放しに推し進めていくと、利用者の権利侵害等の問題が急増していく可能性も否定出来ません。

 また、白澤氏は続けて述べられます。「(高専賃では)ヘルパーは、実質ケアワーカー的な同時に何人かを看ざるをえない側面が大きい。このような仕組みを、より健全で効率的な仕組みに変えていく必要がある」※2。これでは、利用者の処遇は施設ケアと何ら変化無いばかりか、施設ケアでは入所中の生活全般の質が保証されているわけですから、それよりもより劣悪な生活環境に陥る危険性も有していると言わざるを得ません。

 そして、こうなってくるとそもそも「在宅」とは何か?といったことを考えてしまうわけです。国語辞典等から引用しても、在宅介護は従来自宅での介護のことを指していました。そこから「自宅でない在宅」の概念が生じ、その後は「居宅」という言い回しが増えているように見受けられます。

 今一度、この「在宅」や「居宅」の定義を厳密になすべきではないでしょうか。その答えは、実は、冒頭の文章にも見られます。「住み慣れた地域で安心して暮らすことを可能」にするために実施するのだと厚労省も言っているのです。

 つまりこれからの「在宅」と「居宅」の定義上必要不可欠な概念は、「住み慣れた地域」の中にあることだと言えそうです。「住み慣れた地域」の中で成されないサービスは、在宅サービスでも居宅サービスでも無いと。独居高齢者と高齢者のみの夫婦世帯が急増している昨今、「住み慣れた自宅」から高齢者住宅に移り住むことは避けては通れぬ現実なのかも知れません。しかし、「住み慣れた自宅」での生活は諦めたとしても、「住み慣れた地域」における生活は継続していく、これこそが「在宅」及び「居宅」における定義の最後の生命線となるのではないでしょうか。

 私たちがそこを大切にしなければ、旧来の施設ケアのしかも負の部分ばかりを引き摺った形でのケアが蔓延してしまうかも知れません。利用者の住み慣れた地域性を度外視し、他の都道府県や市町村より高齢者住宅に移り住み、そこで介護サービスが提供されることが極力無い様注視する必要がありそうです。

 斯くの如く、介護保険制度改正における議論は利用者中心主義の視点では成されていないようです。利用者の生活は二の次であり、飽く迄財源論が主流となっているのではないでしょうか。利用者を中心とした制度設計をしない限り、我が国の介護保険制度は、世界に名立たるものとは決してなり得ないでしょう。

 兎にも角にも、高齢者住宅における利用者の処遇に対しては、その質の保証をしっかりと担保していくことが、地域包括ケアにおける最低条件となりそうです。

 「高齢者の住まいについては、老人福祉法と高齢者の居住の安定確保に関する法律(以下「高齢者住まい法」という。)という2本の法律が存在している状況であるが、利用者にとって分かりやすい体系とすることが望ましい。一定の基準を満たした有料老人ホームと高齢者専用賃貸住宅を、サービス付高齢者住宅として高齢者住まい法に位置付け、これらの住宅について、サービス内容の情報開示や入居一時金の保全強化等を図っていく必要がある」※1。



※1社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」2010年11月30日P.12-13
※2白澤 政和氏『シルバー産業新聞』「ケアマネジメント 白澤教授の快刀乱麻」2010年12月10日



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中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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