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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

『まちづくりとしての小規模多機能ケア』

2011/02/09 12:00:00  地域密着型サービス

『まちづくりに繋がるコミュニティケアの実践�ァ�


 「富山型」に代表される共生ケアや共生介護が謳われて久しい昨今です。これらの取り組みは、宅老所の取り組みに端を発していると言われていますので、小規模多機能型居宅介護(以下「小規模」)が制度化される以前の礎も宅老所の実践であることを鑑みると、「小規模」と同じ系譜をたどる存在としても位置付けることができます。コミュニティケアの一概念として、対象者を限定しないケアという視点があると認識していますが、その意味において共生ケアはコミュニティケアであると言えます。

 今回は、共生ケアとしてのコミュニティケア実践についてご報告します。平野隆之氏によれば共生ケアとは、「�|楼茲里覆�で当たり前に暮らすための小規模な居場所を提供し、�⇒�用の求めに対しては、高齢者、子ども、障害者という対象上の制約を与えることなく、��その場で展開される多様な人間関係を、共に生きるという新たなコミュニティとして形づくる営み」※1とされています。

 共生ケアについての「地域の絆」の取り組みは、全国の先駆的な実践には遠く及ばないものがあります。また、これを共生ケアと言えるのかどうか、微妙な点もあります。その要因は、やはり“度量の狭さ”にあるようです。高齢者ケアを中心に据えながら、どこまで児童や障害者のニーズに対応していくのか、不安を抱えながらの実践なので、思い切りの良さがないのです。しかし、私たちはそのことを一概に忌避してはおりません。高齢者ケアや認知症ケアは、非常に奥行きが深く、実践するにあたり経験の積上げと自己研鑽が不可欠です。その上、児童・障害分野の経験と技能をどこまで積上げるのかを鑑みると、何でもありの対応は困難であると考えました。そこで、主たる対象としての高齢者(認知症)ケアの質の低下を招かない範囲において、また、それらの質を向上させる範囲において、児童・障害分野のニーズにも対応していくという方針にまとめた次第です。ですので、職員はあくまで、高齢者ケアのプロフェッショナルを目指すことに傾注し、事業所に通所する児童・障害者に対しては、福祉専門職としての共通基盤の範囲で対応を行い、それでも対応困難な範囲においては、外部の児童・障害分野の専門職と連携を取って対応するということが基本的な方針となります。であるならば、私たちの共生ケアの実践は、外部の専門機関との連携があってこそ成り立つ実践とも言えます。

 そもそも私たちが行う共生ケアの目的は、地域住民の信頼を勝ち取ることにあります。高齢者のケアや相談にしか対応しない姿勢ではなく、「地域の絆」に相談すれば、あらゆる福祉分野の対応や相談を受けることができるといった関係性を結ぶための実践でもあるわけです。そこで生まれた信頼関係を用いて、利用者が安心して暮らせるまちづくりを実践することが最終的な目的となります。その意味において、共生ケアとしてはあまりインパクトのない実践かも知れませんが、実践例をいくつかご紹介します。

 「地域の絆」の各事業所には、高齢者に限定しない福祉の総合相談窓口を設けています。高齢者分野以外の相談で圧倒的に多いのが、児童の発達障害に関する相談です。小児科医院の医師より、不登校の傾向にある発達障害児のボランティアの受け入れができないか相談を受け、医師からの情報提供と、本人・家族との面接を経て、受け入れを行いました。その後、そのお子さんの友人が活動するようになり、現在では3名のお子さんの受け入れを行っています。また、家庭裁判所と連携し、触法少年・少女のボランティアの受け入れについても同様に実施しています。共通した対応としては、�ヽ萋袷阿防�ず本人・家族・関係者と面接を行い、活動内容に対する同意を得た上で活動を開始すること、�∨萋�、ボランティア日誌を書いて提出してもらうこと、�D蟯�的に本人・家族とモニタリング面接を行うこととしています。�,任蓮∨/佑伴�け入れる事業所の概要を説明し、法人・事業所として出来ることと出来ないことの説明と同意を得ることを要旨とします。また、家族にもボランティアとはいえ、事業所へ大切な子どもを預けても良いか否かの判断をいただきます。本人・家族の不安を払拭することも大切にしている視点です。�△鮃圓Π嫂泙蓮∋�童なりの活動の振り返りを行ってもらうことや、事業所で活動した証を残してもらうことで、やがて事業所が本人の居場所になるのではないかという期待、自分の思いを文章にする練習等がありますが、一番のねらいは、学校の出席日数が足りない際の代替出席として、当事業所のボランティア活動を認定していただくために用意したものでもあります。いずれの児童も、ボランティア活動に来るようになって、学校の出席率が向上したため、そのような活用方法に至ったことはありませんが、そのような思いで日誌を書いてもらいました。��においては、やりっぱなしの活動ではなく、活動経過の確認と、課題の把握及び対応策について協議します。職員の業務負担軽減と本人・家族の緊張緩和に配慮して、面接のためだけの日程調整は行わず、家族が送迎の際事業所に立ち寄った時などに、声をかけて面談を行います。そこで、活動が途絶えてしまいかねない事例のフォローや、事業所の負担が増えている際の調整を行っています。例えば、活動になかなか集中できない児童に対しては、自宅でお手伝いを行っている内容の聞き取りを通して、事業所での活動に取り入れるなどの調整を行うわけです。家でお風呂掃除と食器洗いを行っていると聞けば、それを事業所の活動に取り入れます。受け入れ日時の設定は、本人・家族の意向に沿って行っています。実績としましては、土日祝祭日、春夏冬休みの受け入れが多く、お子さんの状況にもよりますが、一日2名までの受け入れを基本としています。前述の通り、高齢者ケアの質が、低下しないもしくは、向上する範囲においての受け入れを原則としていますので、そこには職員の負担についての考慮も必要となるからです。

 開設以来、課題を抱えた児童数名と関わりを持つ中、そこに共通の課題があることに気が付きました。�ー�分の居場所がないこと、�⊆�己有用感が持てないこと。�,蓮�学校や家庭、地域の中で、腹を割って話をすることができる他者を持っていない子どもが多いこと。�△蓮�他者から褒められた経験が圧倒的に少なく、自分は必要ない人間だと思う傾向が強い子どもが多いことを指します。

 「小規模」の利用者(高齢者)を中心に据えたケアであったとしても、そこに共生ケアの視点を導入することで、地域の様子が見えてきます。その営みが、まちづくりへと繋がっていくのです。


※1 平野隆之氏 編著 『共生ケアの営みと支援 富山型「このゆびとーまれ」調査から』 全国コミュニティライフサポートセンター P.14 2005年10月




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中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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