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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

状況に応じたモデルの取捨選択

2011/08/16 12:00:00  社会全般
天安門広場の前をタクシーで通過しました。共産党結党90周年にて多くの観光客で賑わっていました。
 「ロンドン北部のトットナムで6日夜、警官が市民を射殺したことに抗議するデモが一部暴徒化し、車や建物などが放火されたほか、銀行や商店、自治体の建物などが襲われた」※1事態に世界中が注目を寄せています。主な理由としては、「キャメロン政権発足後、財政赤字削減に向けた緊縮財政と増税が進められているが、失業率が非常に高いトットナムでは、住民の不満が増大している」※1と言ったものが取り沙汰されているようです。ロンドンオリンピックを1年後に控えたイギリスにとっては、早期に終息を図りたい所の様で、「キャメロン首相は10日に開いた緊急の治安対策会議で『われわれは反撃しなければならない』と述べ、暴動の参加者に厳しく対処する方針を改めて打ち出」※2す始末。 但し、「この暴動で、これまでロンドンで805人が逮捕されるなど、英国全土の逮捕者は1000人以上に上って」※2いるそうです。

 遠く離れた日本としては、「他者の“失敗”から学ぶ」視点でこのことを鑑みる必要性を感じています。日本の若者はある程度、従順に制御されている感がありますので同様の事態が起こることは想定しづらいまでも、同じ事態に陥ってしまう素地があるように考えるからです。

 この暴動の発端は、国民のストレスフルな感情にあるようですが、そのストレスの背景は大きく次のようなことがあるようです。�々發ぜ禺圓亮唆販─↓�格差の拡大、�B膤悗粒愴颪旅眛�等。赤字財政を立て直すため緊縮政策を打ち出した結果であると報じられていますが、これらは社会を不安定にさせるには十分な要素として機能することでしょう。

 �ー禺圓�働けない理由は、社会構造に起因していることが殆どではないでしょか。少なくとも個人的な要因ではないところで、就職が決まっていないのは自明の理でしょう。そこを是正する社会変革及び政策誘導が不可欠であると認識しています。

 サッカーの南アフリカ大会を思い出しますが、治安の悪さから日本人は夜の外出が禁じられていました。中国でもスリが多いと聞きました。貧富の格差は治安の悪化を招きます。これは至極単純で分かりやすいことだと思います。一生懸命働いていても、同様に働いている別の人間の方が裕福な生活を送っているとしたら、平然としていられる人間の方が少ないのは想像に難しくないことでしょう。先進諸国は、その発展過程において格差が治安の悪化を招き発展を妨げるとして、セフティネットの整備としての社会保障の充足を図りました。格差の拡大は、必ずや全国民を不幸に導きます。

 ��1998年までイギリスの大学は公費で運営されており、授業料は無料であったと聞きます。それが、日本に近いまでの授業料の徴収を行う法案が通っているそうです。日本のように端から、高額な費用を負担しなければ高等教育を受けることができない国家体制とは異なり、高等教育を受ける条件に貧富の差が反映されない様配慮された理想的な政策が、一転して、日本型に陥った理由は若輩には分かりませんが、これは若者にとっては暴動に値する出来事だったのかも知れません。

 赤字財政を立て直すことは確かに重要ですが、そのための手法は分野に応じて講じる必要性を感じています。かつては、学校の会社化を進めた著名な経営者がいると耳にしたことがありますが、学校は会社では断じてありません。教育はもちろん、福祉や医療、環境、芸術、文化などもビジネスモデルで語られるべきものではないと私は考えています。もちろん、効率と効果の観点からそのモデルの一部を的確に導入することは否定するものではありませんが、全てをビジネスモデルで考えるものでは全くありません。つまり、人の生命や人生を左右させる人権の根幹をなす分野においては、近視眼的な効率と効果を指標に持つビジネスモデルでは対応できないのだと若輩は理解しています。

 近頃保育の分野でも、ビジネスモデルの導入が図られているようですが、専門性をはき違えたものも多く散見します。砂場を塩素消毒し、動物を飼育しない、怪我を極力させないよう安全な活動に焦点化したものが多く目につきます。それに代わって、楽器の演奏や、イギリス語会話の教室を導入している所もあるようですね。

 ビジネスモデルの主要な活動は、顧客を獲得することにあります。そのために、顧客満足度の高いサービスを提供するわけですが、この場合の顧客満足は、社会福祉で言うところのニーズの充足ではないと自身は解釈しています。つまり、福祉サービス利用者のニーズではなく、市場サービス消費者の欲求に対応するのがビジネスモデルの実践であるとの認識です。社会福祉分野で言うところの、demandやfelt needsに近いものが該当すると考えます。

 また、社会福祉サービスにおいて最も重要視されるべき点は、クライエント中心主義の視点です。クライエントの問題はクライエントにしか解決できない自明の理に基づいて、クライエントの自己決定を尊重し、時にはクライエントの思いを代弁し、社会環境を調整していくことが求められているのです。しかしながら、ビジネスモデルにおいては、顧客を獲得することが第一義となってしまいますので、顧客になることを決定する権利を持っている方(家族や親族、養護者等)の意向を優先させて、顧客当事者の意向を軽視する活動も顕著となってしまいます。

 事実、如上の保育サービスの実践はまさにこの陥穽に嵌っていると言わざるを得ません。クライエントである子どものニーズを中心に置いた活動としては不適切と言わざるを得ないからです。おそらくこれは、「危ないことはさせないでもらいたい」「他者に胸を張れる保育をしてもらいたい」といった顧客になる決定権を有している両親のニーズを中心に据えたものではないでしょうか。「危ない」のは誰にとってのそれなのか、少し考えれば容易に理解できるものです。近視眼的な“危険”を避けて育てることが、その子の長い将来において大きな“危険”を背負わすことに繋がることなど想像に難しくはありません。如上の例で言えば、両親にとって「危ない」ことを避けることが、子どもにとっては将来のリスクをさらに高めることに繋がるのです。無菌室でしか育たない、自然の摂理を教えない、人の限界や痛みを学ばない保育をさせて、果たしてそれがクライエント中心主義のサービスと言えるのでしょうか。

 財政赤字を是正するためとは言え、近視眼的な効率と効果で推し測って進めるビジネスモデルで全てを進めることは非常に危険だと自身は認識しております。対象分野や状況、時勢に応じて、使うモデルは本来変えるべきものでしょう。特に、人が生きていく上で重要なもの、医療・福祉・教育・環境・文化・芸術等は、ビジネスモデルの適応外の分野と言えそうです。社会的コスト上赤字になるからと言って、病院や介護施設はもちろん、警察や消防署を無くしても良いという人間はまずいないでしょう。

 この度のイギリスにおける暴動。暴動という行為そのものは愚劣だと言えますが、その行為の背景をみるのも私たち福祉専門職の面目躍如たるものがあるはずです。その“問題”行動の背景には、必ずや複数の要因が絡んでいるからです。このイギリス暴動の背景をみることにこそ、私たち日本人がこれからの社会構築に当たって進むべき里程標が見えてくるのかも知れません。



※1 『朝日新聞』2011年8月8日
※2 『朝日新聞』2011年8月11日



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中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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