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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

二度目の韓国訪問��

2011/12/31 12:00:00  社会福祉
教育に力を入れている韓国の小学校。先生が明るく元気な声で生徒に声をかけています。礼儀正しい子どもたちを多く見かけました。


 9月6日は、ソウル市の最北西部に位置する恩平区(ウンピョン区)のリハビリテーション病院の視察に伺いました。韓国国外でも著名な、社会福祉法人恩平天使園の系列の病院です。私達がここ数日間でお伺いした法人は、国内外ともに著名な施設であり、見学者が非常に多く、その受け入れ態勢や仕組みの様なものが確立しているように見受けられました。

 まずは、責任者や担当者の方から施設概要の説明を受けます。流石は、IT大国。どの法人でも恐らく専用のパワーポイントを用いて説明をされていました。1時間程お時間を頂けた中で、私が留意した点は以下の5点です。

�)/佑陵�念や、ビジョン、ミッションのお話が冒頭にあって、しかも丁寧に時間をかけて説明がなされていること。
��家族による利用者支援の重要性を認識し、専門職としても家族支援を念頭に置いた実践を行っている点。
��在宅支援に焦点化した実践が多い点。
�ぅ哀蝓璽鵐螢魯咼螢董璽轡腑鵝平憧超�リハビリ)という概念と親穏感というコンセプト。
�ド賊‘發如�多職種間連携が意図されていること。

 当然のことかも知れませんが、法人理念についての説明が非常に長かったと記憶しております。「当然のこと」と言いながら、なぜに留意したのか。それは日本の福祉施設に見学の際、これほど長時間にわたって懇切丁寧な説明を受けたことが無いと記憶しているからです。どちらかと言えば、どのような方法で何をしているのか、利用者の利用負担金額は幾らか、どのような設備があるのか、と言った方法論の説明が専らですし、見学者の関心にもそれと整合性があるようです。それでも敢えて、「当然のこと」と書いたのは、本来はやはり、そこを理解せずしてその施設の実践は理解できないだろうと再認識したためです。伝える側も、そして見学側もその法人・施設の理念や方針をしっかりと理解することがまずは求められるのでしょう。そのことが出来ていない現状を自戒の念をもって振り返ることが出来ました。

 日本と文化圏が近いこともあって、家族による利用者支援の視点はやはり強く認識されていました。障がい児のデイホスピタルでは、25名の子どもが通院していました。毎日6時間治療を行い、その他は自宅で日常生活を送っています。その際も、「母親の愛」を子どもの支援に活用することが謳われていました。子どもの支援にとって、「母親の愛」が最善の支援でると担当者も説明されています。であれるからこそ、家族支援も我々専門職の大事な仕事であると。

 捻くれ者の私は、母親がいない子どものことはどの様に考えるのかと、質問したい思いを押さえながら説明を聞いていました。

 この度ご一緒させて頂いた日本の医師によれば、韓国はリハビリテーション病院の床数が、日本に比べて極端に少ないそうです。そのような社会環境と、如上の家族による支援を重要視する文化が相まって、在宅重視の支援体制が取られているようです。

 親環境リハビリでは、デザインによる治療を意図しているとのこと。家庭環境を髣髴させる物理的環境の中でのリハビリテーションを重要視していると説明がありました。それに合わせて、運営コンセプトとして、親穏感を標榜していると説明されます。親穏感とは、コンクリートや鉄筋の剥き出しになった設えではなく、木目をふんだんに使った親環境のハードを作ることによって成されると教えて下さいました。後の見学で気が付いたのですが、火災通報装置や熱帯魚の入った水槽の台、エレベーター、自動販売機の全てに木目のシートが貼付されていました。日本でもこだわりを持った施設は存在しますが、その徹底ぶりには驚くばかりでした。また、空間が狭い中で長らく生活するとストレスを感じるので、それを緩和するために建物を広く、より広く作っているのだそうです。この点は、日本の認知症ケアとは真逆の発想であると認識しました。感情等の感覚に敏感でいらっしゃることが多い認知症の方が、だだっ広い空間よりは寧ろより仕切りが多く空間的に狭く感じられる場所を好まれることは日本では定説となっています。また昨今の日本の施設の場合、朝から晩まで365日施設内で過ごすことが前提ではなくなってきています。当たり前のように日常的な外出があり、外部との交流が推奨されているわけですから、ストレスを意図して施設内を広く設える必要が無くなっているのも事実でしょう。

 今年に入ってお付き合いさせて頂いている同業者の先輩に物理的環境が利用者のケアと、職員の仕事にどのような影響を与えているのかを研究されている方がいらっしゃいます。また、一昨年前訪れたスウェーデンにおいても、施設の内装は非常に瀟洒な作りになっていたのを思い出しました。私の組織運営に対する基本は、ハードよりソフト重視です。どちらかと言えば、ハードはどうでもよい位に思っていました。しかしながら、特にこれからは、サービス付高齢者向け住宅が主流になることが予想されます。住宅であれば、なおのことハードの重要性を認識せざるを得なくなるところです。ソフト重視の路線を変える必要はありませんが、ハードにも一定の効果と効力があることを認識した運営が求められているのかも知れません。

 その他留意したのは、物理療法室と作業療法室が隣同士にあり、自由に往来が出来る設えになっていたことです。これは、患者同士が話し合い支え合うことが大事であると同時に、専門職同士も話し合って自由に意見交換ができるようにしているためだと説明がありました。日本で言うところの多職種間連携が重要視されていることは言うまでもありません。

 その後実際に施設内を案内いただいて感じたことは、如上の説明の通りであろう実践が成されていたことです。疑似家庭環境を作って、そこでリハビリテーションを実施する親環境リハビリテーションや在宅支援を念頭に置いた実践。子どもの支援に「母親の愛」を重要視しており、家族がゆっくりと過ごせる空間を設けている点。小児科病棟では、間接照明や非常に可愛らしいデザインの設えになっていることなどが目に留まりました。

 見学終了後には、質疑応答の時間を30分ほど設けて頂くことができ非常に有意義な訪問でした。質疑応答における要旨は以下の通りです。

�‖仂歇堊�はどの様な方が多いのか?
⇒富裕層ばかりではない。ここは社会福祉病院なので、治療費は安い。低所得者層も治療が出来る。
問題なのは、待機者が多いこと。1年から2年待っている人がいる。デイケアは特に希望者が多いので、2・3年間待たされるのが普通である。リハビリテーションプログラムの基礎を作ったのが当病院であり、それは現在全国の病院で広まっている。言わば、国内でも先駆けの存在で人気も高い。
��入院可能な期間はどのくらいか?
⇒最大が3ヶ月の入院が可能で、それを過ぎれば一般病院へ移行する。
��職員の中でクリスチャンはどの位いるのか?
⇒韓国の総人口は約4800万人で、その国民の5分の2ぐらいがクリスチャン。職員の70%がクリスチャンである。
�ぅ椒薀鵐謄�アの受け入れはどのぐらいあるのか?
⇒ここは病院であるため、短期ボランティアの受入は行っていない。1年ごとの長期ボランティアを受け入れている。現在108人が登録している。また、法人で3つのセクションがあり、リハビリチーム・医療チーム・社会福祉チームそれらが連携の上ボランティアの受入調整を行っている。
�タΠ�の労働時間数について
⇒1日8時間が基本である。8:30〜17:30が基本時間。月曜日から金曜日まで働ける。病院では労働時間が守られており、残業は少ない。毎週木曜日のケースカンファレンスや勉強会等は勤務時間外で行われている。
��人材の確保について
⇒韓国には社会福祉学科がある大学が50校ある。そのうち150人の学生を選抜して、実習してもらってその中から良い人を選抜している。
�Э雄牋蘋�の取り組みについて
⇒全職員がテーマごとに勉強をして、一年に一回発表会がある。その他、開国医療研修(海外の事情を学習)がある。大学在学中採用予定者を2ヶ月間研修。入職後また研修がある。法人の中に教育センターがある。
�┘螢魯咼衂賊,離宗璽轡礇襯錙璽�ーの配置数と業務内容について
⇒MSWは2人だったのだが今は1名。法的にMSWの配置基準は無い。業務内容は、低所得層の方々の経済的な相談。子ども用の教育プログラム等のプランニング。
⇒ボランティアの方々が、教育プログラムの一部を担っている。例えば、料理プログラム。インドカレー等の変わった作業の場合は、そのボランティアに依頼する。多様なボランティアが登録しているので、その特技に応じた活動をお願いしている。ボランティアコーディネーターのような仕事を担っている。
��人権教育について
⇒経営者も管理者、職員も金銭的報酬だけに価値を求めていない。慈善の精神をもってやっている。

 �イ砲弔い討蓮�系列の児童養育施設天使園のことが手元の文献で次のように書かれています。「天使園は小舎制をとっていて、(中略)男女別に10〜16人の子どもたちを二人の生活指導員が担当する体制である。(中略)生活指導員は午前10時から次の日の午前10時までの出勤で、二人で交代するという勤務体制となっている。これはかなりハードな体制だ。ただ、補助金の関係でこういう体制にせざるを得ないという。事務局長は、国の定めた職員数では、労働基準法で規定されている労働時間を守ることさえできないし、サービスの質も当然落ちざるを得ない。国が労働基準法を制定しておきながら、国の定める最低基準では労基法さえも守るのがむずかしい現行施策を批判していた」※1。

 例えば、日本においても小規模多機能型居宅介護の解釈通知には、次の様に基本方針が定められています。「指定小規模多機能型居宅介護は、通いを中心として、利用者の様態や希望に応じて、随時訪問や宿泊を組み合わせてサービスを提供することにより、利用者の居宅における生活の継続を支援するものである」。ここで言う「利用者の様態や希望に応じて」サービスの提供を行うこと自体が、実は、休日出勤や時間外労働を推奨していることになります。その手当を十分に支給できる、それに耐え得る報酬設定になっているかと言えばそうではないところに問題があるのでしょう。4月からの介護保険制度改正の指針の一つとして、「労働法規の遵守の徹底」が掲げられていると聞きます。であれば、遵守できるだけの十分なる人員配置と報酬設定が成されなければならないのは自明の理です。どこの法人も、遵守を図りたいのは山々ではないでしょうか、その中で、利用者のニーズに応えるために何処まですべきか、ギリギリの経営判断を強いられながら運営をしているところが殆どであると認識しております。また、そうであって欲しいと思っています。韓国の実情は知りませんが、日本の場合、いみじくも厚生労働省という一つの部局で、介護保険法と労働基準法が動いている訳ですから、その辺りを是非ともご協議いただきたく思います。机上の空論による整合性ではなく、実務レベルにおける整合性のとれた介護保険制度の在り方を是非ご検討いただきたいものです。

 �Э雄牋蘋�について感じたことですが、人材育成には、OJTや、Off-Jt、SDSなど多様な実践があると思われますが、人材育成=単なる研修と位置付けておられるように自身は受け止めました。つまり、人材育成に関する多様な方法論が確立していないのではないかと類推しながら話を聞きました。

 病院が掲げる「中心となる価値」の中で、「高い専門性」と、「価値の覚醒」として「新しい治療の領域を開発する」というお話がありました。私たち地域の絆が実践の中で大切にしていることの一つとして、「他者が取り組んでいない新しいことに取り組む時、容易に実現し得ない夢や理想に近づく実践時に、人の行動はより尊いものになる」というものがあります。今作成中の新しい法人パンフレットには、「地域の絆 経営ビジョン」として記載される予定です。

 国内津々浦々、何処の法人や施設に行っても、福祉専門職として同様の視点で頑張っている仲間がいると強く思って仕事をしてきましたが、どうやら国外においても、また同様の仲間がいるようです。


※1 金永子氏『韓国の福祉事情』新幹社P.18-19 2008年10月



グリーンリハビリテーション(親環境リハビリ)という概念と親穏感��


 病院なのですが、家庭的な設えがされています。


グリーンリハビリテーション(親環境リハビリ)という概念と親穏感��


 病院内ですが、木目調に対するこだわりがありますね。

グリーンリハビリテーション(親環境リハビリ)という概念と親穏感��


 ここまでこだわるか〜、と思いました。


グリーンリハビリテーション(親環境リハビリ)という概念と親穏感��


 外観ももちろん木材を使用。日本の施設や病院でも見られる光景です。


小児科病棟は可愛らしい設えで…。


 日本の小児病棟でも、同様の設えは見られますが…。

韓国の焼き肉��


 牛肉の焼き肉です。お肉はまあまあですが、たれや味付けが素晴らしい。昼からビールを飲んでましたよね!?懐かしいです。


韓国の焼き肉��

 京都ノートルダム女子大学の三好先生お勧めの焼肉屋さんを訪れました。この焼肉のお肉は、何と、鶏肉なんです。もっとも、韓国では一般的だそうです。

 しかも、とてつもなく美味しいのです。岡本榮一先生ともご一緒させて頂きました。本当にお世話になりました。


紛失防止のためチェーンキーで車いすを固定


 こちらは日本ではお目にかかれない光景。深読みして、利用者が車いすを持ちながら伝い歩きをされる際、車いすが転倒して危険なので、固定しているのかと思って、そうではないかと聞いてみましたが、単なる紛失防止だそうです。

 手すり本来の目的ではない形で使われています。当法人の各センターにも手すりは基本的にはありませんが、このような使い方もあるものだと感慨深く見させていただきました。


日本人間関係学会の皆様


 大変お世話になりました。多くのご示唆と学びの機会に感謝です。


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中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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