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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

福祉・介護人材育成考��

2012/04/10 23:53:01  社会福祉

外部連携と人材育成
 今まで4回に渡って職員管理・育成についての持論を吐露させて頂きました。今回がまとめの最終章となります。前回の育成方法の検討では、育成全般に対する考え方と、経営者や管理職でも容易に取り組める実践例をお示しさせて頂きました。今回はその続編として、外部との連携を活用した育成の方法に触れてみたいと思います。

 外部との連携と言えば、専門的技術としてのコーディネーションやネットワーキングがあります。双方とも、「連携」「協働」「繋がり」を意図した技術です。その中でも、コーディネーションの有効性として例えば社会福祉士養成テキストでは次の様に書かれています。「クライエントからみた有効性」として、「❶多様なニーズの実現性、❷密室化によって生じる支配的援助関係の緩和、❸援助利用過程の煩雑さの緩和」、そして、「援助者からみた有効性」においては、「❶各援助者の役割の明確化、❷新しい役割・思考の発見、❸援助者間の相互援助の獲得」が挙げられるとのことです※1。

 障害の定義に生活モデルが導入され、以来、福祉・介護専門職には生活支援の視点が強く求められています。しかしながら、生活とは質的・時間的にも非常に幅が広く一人の専門職や一機関のみで支えることが出来ないのが現実です。であればこそ、法人内部のみならず外部連携の必要性が生まれてきます。そして、その連携は利用者のためのみならず、職員に対しても有効性が認められると如上のテキストでは記されているのです。異なる環境で培われた専門性や組織性に触れることで、新しい考え方や気づきを獲得することが出来ますし、異なる視点で相互助言を行うことも可能となるでしょう。また、法人内部であれば上司と部下の関係が大なり小なり顕在し、組織内に良好な人間関係が構築されていなければ、法人内において誰にも相談することが出来ない状況下で、孤立してしまっている職員も少なからずとも存在するはずです。法人内部では本音で相談ができないことも、外部連携を通して、同じ立場や同じ悩みを抱えている職員同士が、悩みや情報の共有を行うことができ、延いては、そのストレスマネジメントにまで発展することはよく知られている事実です。地域の絆では、外部連携は人材育成の契機に繋がることを強く認識し、積極的に外部連携を奨励しています。


外部連携による利点
 人材育成に当たっては、組織の規模や情勢に応じて、そのやり方は多様であることは言うまでもありません。ただし、大規模法人であれば、人材マネジメント部門を別途設けた上で、人事部等の担当者が人材育成を計画的に実施することが出来ますが、小規模法人になるとそのような対応は非常に困難であり、人材育成はシャドーワーク化し、十分に機能していない所も多くあるように思われます。では、小規模法人においては人材育成が出来ないのかと言えばそうではありません。外部のネットワークに参画し、共に研修を企画・運営することや、相互に見学・実習依頼を行うなどの育成を実践する方法があります。マンパワーと財政の充実していない小規模法人でも、積極的に外部との連携を図ることで、人材育成を充足させることが出来るのです。逆説的に言えば、小規模法人は、外部連携なくして、十分な人材育成を行うことが困難な状況にあると言えるかも知れません。


 小規模法人による外部連携の利点は大きいのですが、大規模法人にも実は多くの利点を見て取ることが出来ます。�〇拉枦�援助関係の改善、�∧亳�した関係性・組織性の修正、�B召遼/佑凌Π�に対する敬意の醸成、�ぅ�ライエントの支援に役立つことで、職員負担の軽減、と言った4点がその顕著な例ではないでしょうか。

 �,了拉枦�援助関係とは、本来対等であるべき職員と利用者の関係が支配関係に陥りやすい状況を指しています。職員から何らかの支援を必要とする利用者は、職員に比べて判断能力や身体機能が低下傾向にあります。端的に言えば、判断能力があって体力のある職員と、そうではない利用者の両者にはパワーバランスの欠如が存在するのです。私たち専門職には、しっかりとその事実を受け止めた実践が求められています。職員側が意図して、一歩も二歩も下がって受容的態度で臨まなければ、そこに対等な関係は構築できないでしょう。前回お話した地域の絆の「接遇の3つのルール」は、それを意識化してもらうために設けたものです。

 しかしながら、内部の指導・教育では限界があると筆者は考えます。介護・福祉事業所では、閉ざされた空間の中、支援をする側とされる側の二つの立場が24時間365日“同居”しているのが現状です。そんな中、知らず知らずの間に、利用者をモノ扱いしてしまうことが陋習化してしまう現状が見受けられます。職員が自身の意識化を幾ら試みたところで、また経営者・管理職がその働きかけを継続したところで、やはり環境要因に起因する限界が生じてくるものと認識しております。その環境要因を除去してくれるのが外部連携であると考えるのです。

 研修や見学、実習を通して、外部の職員と接する機会を持つことにこそ、無意識の中で固定化されつつある支配的援助関係に気が付く契機を得ることが出来ます。スウェーデン・デンマーク・フィンランド等の福祉国家における施設では、その食堂で日中、地域住民と利用者が同じ席についてランチを食すのだそうです。これはもちろん利用者の生活支援の継続性を担保した実践ではありますが、外部の人材を積極的に施設内に受け入れることで、支配的援助関係を改善することも視野に入れられていると聞いています。そのような視点を私たちも持つべきではないかと思います。

 �△蓮⊃Π�間の関係性及び組織体質の問題です。介護・福祉業界においては、要援助者という立場や状況の限定された利用者のみを対象に、限られた専門分野の専門職との連携のみで事業の運営が出来る状況にあります。しかし、そのことで、分野特有の凝り固まった考え方に縛られ、新しい視点や考えが組織内に芽生えにくい体質が醸成されているのではないでしょうか。専門職としての価値や法人理念を見据えながらも、外部の新しい視点を積極的に取り入れることで、内部の意識改革を適宜行う必要があります。

 �△亡慙△垢觧訶世箸靴騰�があります。密室化に陥りやすい私たちの分野では、自身の評価は組織内部で受けることが専らで、外部の目で評価を受けることが非常に少ない状況にあります。また、他法人等の外部職員の仕事ぶりや姿勢を目にすることが非常に少なく、自身の実践の客観的評価指標が見えにくい現状も否めません。法人内部の評価指標が絶対的に“正しい”指標であることを祈りますが、閉ざされた業態が多い中、そこに若干の齟齬が生まれることは避けられないものと認識しています。つまり、唯我独尊的に陥ったり、独り善がりの実践を生じさせてしまう素地があるのです。そこで、外部連携を図ることで、大変な思いをして頑張っているのは自法人の職員のみならず、他法人の職員も同様であることや、熱心に自己研鑽しているのは自法人のみならず、他法人でも同様に、またそれ以上に研鑽されていることを認識することが出来ます。それらの営みを通して、他法人職員に対する尊敬の念を醸成することが出来るものと信じています。
 
 ��ができれば、�い寮�果を享受することが出来るようになります。外部と連携が取りやすくなり、利用者の紹介や情報の共有が気軽に出来るようになります。自法人のみでは十分な対応が出来ない利用者であっても、他法人との連携を図ることでそれが可能になり、延いては、職員負担の軽減につながります。また、各サービスの制度上の知識のみでは、利用者の紹介は出来ません。その法人や事業所の方針や、担当者の考え方の理解なくして、具体的な連携を図ることは困難です。例えば、医療依存度がどの程度の方であれば受け入れが可能なのか?BPSDの状況によって受け入れが可能か否か?など詳細点まで理解しなければ、適切な利用者の紹介がなされず、結果、利用者はたらい回しにされ、職員も疲労感のみが高まる結果が予想されます。そこには、サービス・制度の理解のみならず、専門職同士の顔と顔の見える関係が必要なのでしょう。その意味において、職員同士の顔と顔の見える関係を促進する外部連携は、職員の相互支援の機能を担っているとも言えます。

 以上如上の� 銑い魎佞澆譴弌⊂�規模法人のみならず大規模法人の人材育成においても、コーディネーションやネットワーキングと言った外部連携が不可欠であることが理解されるのではないでしょうか。


事例の紹介
 地域の絆では、大きくA市・B市・C市の3市内にあるネットワークに参画させて頂いております。それぞれの特徴は表に示す通りですが、これを見て頂ければ多様な連携の方法があることがご理解いただけると思います。

 まずA市での取り組みですが、地域密着型サービスと地域包括支援センターのネットワークとして創設されました。地域密着型サービスが創設されて約1年後に2名の発起人名にて、市内の全事業所に結成会議への参加を呼びかけたところ80名程の方の参加がありました。その場で事業種毎に2名ずつの世話人を選出してもらい8名の世話人会を結成しました。以後世話人会を中心とした組織運営が始まります。このネットワークの特色は、非常に緩やかな繋がりであるという点です。設立趣意書と役員名簿があるのみで、組織の会則を設けていません。また事業所を対象とせず、そこに勤めている職員個人を対象としていることも特徴です。事業所を対象にしてしまうと、規模が大きく力のある事業所が中心となってしまい兼ねませんし、そうなると個別の事業所同士の関係性に会の運営が左右されることになってしまいます。その様なネットワークには多様性は生まれず、すそ野を広げた幅広い方々の参加が望めなくなります。それを避けるために、事業所単位ではなく個人単位で参加する体系を取っているのです。
 
 よって会議・交流会・研修等の参加については、市内の全対象事業所に案内を発送しています。つまり、会員・非会員の区別もないのです。市内にある全ての対象事業所に呼びかけを行い参加したいと思われた方は、どなたでも参加することが可能です。その様な民主的組織運営を大事にしているのがこの会の特徴と言えるでしょう。
 
 年度によっても異なりますが、平均すると年6回の研修と年2回の交流会の場を設定しています。毎回の参加者数は、研修等のテーマにもよりますが、60名前後の方に参加頂いております。テーマによっては、行政職員や民生委員に参加を呼び掛けることもあります。例えば「運営推進会議の進め方」と題したディスカッションでは、冒頭30分程度で市が望む「運営推進会議のあり方」について市職員よりご講義いただき、その後グループワークでディスカッションを行う際にも、各グループに市の職員に入っていただいたこともございます。この様に会の催しを通して、ネットワークがつくられて行くことを実感しています。この様な企画は、毎回の研修アンケートをもとに世話人会で年度毎に計画を立て運営を行います。 

 B市においては、現時点では小規模多機能型居宅介護事業所のみによるネットワークづくりを行っています。良心的で懐の広い事業所が事務局を担っており、会則を設け、全ての事業所に均等に役職が付くよう配慮した上で運営を行っています。また会員の定めはあるものの、事業所毎に入会し、市内の全ての事業所が入会していることに特色があります。会費は年会費10,000円を徴収し、これを運営費に充てています。ですので、研修毎に参加費の徴収は行っておりません。また、この会では、研修を行うのはA市の取り組みと同様ですが、定期的に事業所管理者が集まる会議を設けています。そこで、管理者同士の悩みや問題の共有と助言が展開され、事業所毎の「空き」情報の共有も行われています。この会を起点に、小規模多機能型居宅介護に限定されない幅広いネットワークの構築もなされています。

 C市における特徴としては、小規模人口の基礎自治体を基盤としていることもあり、事業種別ごとのネットワークでは参加者数が限られていることもあって、介護保険のあらゆる事業体がネットワークを組んでいることが特徴です。それぞれの立場の違いから、多様な視点と意見が積極的に出される為職員教育としては有効に機能しているように感じています。また事業所数も限定的であり、顔と顔の見える関係も一定程度は構築できています。であるからこそ、当ネットワークにおいては、職員の共同求人説明会の企画・運営や、法人間の職員実習・見学の相互受け入れを積極的に行うことが出来るのでしょう。この様な取り組みは、ある程度信頼関係が構築されていなければ出来ない取り組みですが、人口規模が小さいことによって、事業所・職員同士が顔と顔の見える関係になりやすいことが功を奏しているように思われます。


 連携と言う名の育成
 最終回の今回は、ネットワークを活用した育成について考えてみました。法人内部の連携を高めるためには、法人外部との連携を高める必要があると筆者は考えています。両者が相互作用の関係にあることは、ソーシャルキャピタルなどの文献を読めば明らかな事実と言えます。職員の人材育成は、利用者の生活支援と同様に非常に尊いものであると認識しています。一職員や一機関が全てを背負いきれるものではありません。無論、その責任から逃れることを勧めているのではなく、経営者や組織の責任をしっかりと見据えながらも、そこで補いきれない部分は、外部との連携で担保していく視点も持つ必要を感じている訳です。

 今年4月から地域包括ケアの実践が希求されることとなります。利用者に対する良質なケアのためのみならず、職員同士の相互教育・支援のためにも私たちは積極的に外部連携を図る必要があるのです。最後に、これらの実践に必要な専門性として、そこにはソーシャルワークの視点が不可欠であることを、一ソーシャルワーカーとして付言しておきます。


※1 社会福祉士養成講座編集委員会編『新・社会福祉士養成講座 第2版 8相談援助の理論と方法�供拊羆�法規出版P.78 2010年2月



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中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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