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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

理念なき実践の結末

2012/04/17 00:33:16  社会全般
昨今はこの高速艇に大変お世話になっております。今ではすっかりと乗り慣れました。
 昨今の政治・経済を端から見ていると、全てにおいて理念や目的の欠如が伺えます。

 社会保障費を目的に消費税を増税する。否、今は景気が低迷しているので時期尚早だ。そうだ、これでは選挙に勝つことができない…。政界においては、税と社会保障についての議論が御盛んですが、そこに崇高な理念を感じることが全くありません。ではなぜ、社会保障費が必要なのか、と言った目的についての議論がなされている様には見えませんし、その場限りの場当たり的な議論に終始しているようです。飽く迄も、素人見解ですが、社会化された人々の生活に課題が発生した際、それを社会的責任の下、支え合う仕組みが社会保障であり、それは確実に格差の是正に繋がる営みであると認識しております。社会保障の一つの役割は格差是正にあると若輩は認識しております。問題なのは、格差是正の仕組みとしての社会保障を目的として、格差の増大を促進するであろう消費税の増税を行う論理的破綻に多くの人々が異議申し立てをなさない点にあります。税の基本は累進課税です。多くの収益を上げている人は、社会の中で一定の恩恵を受けているからこそその収益を上げることができます。また収益が上がるか上がらないかは、多分に社会の情勢・時勢にその影響を受けているものです。ですので、その分それは社会に還元すべきであり、多く“儲けた人”は、その分多くを“収める”ことでその“儲け”を社会的に承認されることが許されるのだと認識しています。アメリカのハーバード大学では、サンデル教授が大人気だそうですね。この点をもって、時代の変遷に気づいたところです。消費税はその真逆の発想を持つ税であり、こちらは逆進性の課題をもっていると言われています。これは累進課税ではなく、金持ちも貧乏人にも均等に課せられる税なのです。単純に言えば、年収700万円以下の人々は、消費税を増税されれば生活が苦しくなり、年収700万円以上の人は所得税を増税されると懐が痛む構造となっています。つまり、消費税の増税は確実に格差を増大させることが明確に理解されます。そしてその格差を抑制する社会保障費の確保を目的に、格差を増長する消費税の増税を図るというのです。

 外交にしても然りです。北方領土問題にしても、沖縄米軍基地問題にせよ、全て場当たり的で理念が全く見えません。人口減少社会に突入し、経済大国から一歩後退しつつあり、しかも資源を持たない我が国にとって、将来武器となるのは、軍事力や経済力ではなく、技術・知識・思考力等の目に見えないものに価値を求めそれを高めることではないでしょうか。特に他国に負けない優れた理念を持ち、それを貫徹する実行力を見せつけることが、外交には欠かせないと認識しております。残念ながらそれが感じられないのです。

 目的や理念を決めることには膨大な時間と労力が不可欠でしょう。今社会全体が、実はそれを非常に惜しんでいる様に見受けられます。すぐに答えが出なければ不安になるのか、即座に結果や、見返りを求めたがる社会になっている様な気がしています。即効性の無いものや、短期的に生産性の低いものを軽んじたり、馬鹿にしたりする風土が醸成されているのではないでしょうか。事実、大学では、人文学や社会科学系を志す学生が減少傾向にあると聞きます。就職に不利な結果が出ているからだとか。しかし、今最も大事な視点は、社会を捉え、自らの人生をじっくりと腰を据えて考え抜く力であると認識しております。私は、科学の発展と人文学の発展は、反比例の関係にあると予てから考えておりますが、人文学が停滞・衰退した今こそ、その重要性に着眼すべきではないでしょうか。

 「技術はどんなに高まろうと、目的の下にある」※。大学時代にこの詞集を拝読して以来、いつも記憶に残っている成句です。目的即ち理念なき技術は、その意味を成さないばかりか、時には害悪になり得るものであることは歴史が証明している事実です。原子力技術は、今どのように生かされていますか?かつての本ブログで、科学者がその技術を革新させるには、そこに理念や目的が無ければならないと書きました。その技術が社会にどのような影響を与え、そして使われるのか、そのことにまで責任を負わなければそれは知識人としては失格だと。理念なきテクノロジーは暴走する。これも私の恩師の口癖ですが、全くその通りですね。

 私たちは、時間と労力を惜しむことなく、理念について議論を交わす必要があります。場当たり的、近視眼的な実践では、これ以上社会は持たないように認識しています。私も今一度考えてみたいと思います。私は、何のために生まれ生き、そして何のために働いているのか?


※むのたけじ氏『詞集 たいまつ』評論社 1997年6月 P.13.



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中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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