「この国は人にはお金をかけない」。
2000年前後大阪の釜ヶ崎でボランティア活動をしていた当時、現地の児童福祉施設の施設長が私に話した言葉です。当時2008年夏季オリンピックの誘致に大阪は大きく揺れ動いていた時期でした。そこに莫大な誘致費用を予算化するその姿勢に対して、目の前の子どもたちに全く必要な費用を計上しないその姿勢を目がけて彼女が私に語ったものです。心あるその言葉は、今でも私の脳裏に焼き付いています。そんなことを過日訪れたスウェーデンの彼の地で思い起こしていました。
スウェーデンの介護では、介護職が利用者を直接抱えることはありません。全居室には固定式のリフトが設置されており、談話室や廊下等の共有の空間には移動式のリフトが設置されています。また移乗介護の必要な方のご自宅にもリフトや電動車椅子が当たり前のように設置されているのです。そして、それらの費用はその殆どがクライエント負担ではなく、公的負担に基づいてなされているのがこの国の在り方の様です。
それはクライエントに優しい支援であると同時に、そこで働く介護職にも優しい設えを考えてのことだと聞きます。
日本の場合は、その様な公的支援の無い中、自立支援という名の下に、介護職の卓越した介護技術が発達してきました。恐らく、その技術は皮肉にも世界に冠たる立ち位置に君臨しているのではないでしょうか。我が国の介護職の中には、機械で人を持ち上げるのは非人間的な介護の在り方だとおっしゃる方もいらっしゃるようですが、その背景には根本的な考え方の相違があるのです。
スウェーデンのボルボミュージアムに訪れました。今はスウェーデン国籍企業ではないものの、その起業精神に触れ、その考え方の違いに触れることが出来ました。例えば、トラックの車内構造を見て下さい。専ら運送業務に用いられるそのトラックのシートの座り心地の如何に良い事か。また長距離運転に備えた、後部座席にあるベッドの設えはそこで働き、仮眠をとる人々の疲れを癒すに値するに十分な設えとなっています。我が国の運送業に従事する地域住民から以前話を聞いたことがありました。昨今のトラックは、労働者のことなど考えてはいない。後部座席の仮眠用ベッドは年々小さいものになってきている。製造する側も、それを購入する側もそこにコストをかけることに興味を示さないと。遠いスウェーデンの地で、その車を眺めながらそのような会話を思い出していました。
スウェーデンは、法人事業税が日本に比べて安いと聞きます。しかし、従業員の社会保険料の負担額は日本の企業に比べて非常に多くの負担を負っているとも聞きます。「社会保険料は、雇用主がほとんどの部分を負担する。スウェーデン全体で被雇用者が払うのは、平均で社会保険全体の7%ぐらいである」※。社会保険料を算入した上で、法人事業税を国別に比較検討すれば、我が国の企業の負担率は然程多くは無いことは以前から言われ続けてきたことです。
高度な技術を保持し、そして、職業意識の高い我が国の人々に私は強い誇りを抱いています。他方、そのひとり一人に人間としての尊厳を保障するスウェーデン社会に強い憧憬を抱きます。
これから数回に渡り、二度目に訪問したスウェーデンについて再び叙述します。
※ 藤原瑠美氏『ニルスの国の高齢者ケア』P114ドメス出版 2009年12月
作業車両の運転席
試に座ったわけではありませんが、座り心地の良さが伝わってきます。
トラックの運転席
試に座りました。座り心地は抜群に良かったです。
トラックの後部座席
いつか泊まったホテルのベッドよりも寝心地が良さそうでした。
トラックの後部座席
冷蔵庫や照明等にも配慮が成されています。
トラックの座席
エアクッションが施されています。本当に座り心地が良いですね。これでは長距離運転も苦にならないでしょう。
施設に設置されている移動用リフト
日本円で約200,000円前後するそうです。
電動車椅子と移動用リフト
介護が必要な人の家庭に支給されています。
この写真の方は、優れた車を開発する技術を持っている国が、優れた車椅子を開発しないことについて、大変不思議がられていました。
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