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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

柔軟性と曖昧性のあるソーシャルアクションを!

2012/08/21 01:18:18  社会福祉

 昨日まで2日間、東京都内でブランド・マネージャーの研修を受けてきました。平素より福祉経営に携わる中、産業界の経営の在り方に昨今興味を持っての参加でした。福祉経営のフィールドは、市場ではなく準市場であると言われています。よって、市場の荒波に揉まれることの少ない守られた市場であるとの見方が可能です。一方で、どれだけ質の高いサービスを提供してもその報酬に上限設定がある事や、十分な収入額が担保されていない中で、職員の育成や定着を図る事及びサービスの質を高めることは容易ではなく、高い理念をもって当たれば当たるほど、福祉経営と言うのは場合によっては市場の原理下にある産業界のそれよりも高い知識と技術を要するものと言えるのかも知れません。そんな中にあって、少しでも優れた経営が出来ればと、昨今では産業界のセミナー等にも時間が許す限り顔を出している訳です。

 福祉経営において、当法人が最も大事にしているのは、経営理念の内外に渡る浸透にあります。言わずもがなではありますが、経営理念は法人の存在意義そのものであり、どうあるべきか、何を目指すのか、何が正しいと考えるのか、といった価値判断(道徳的判断)を示すものです。つまり、私たち法人の職員はどうあるべきか、またどうありたいのか、それを如実に物語っているのです。

 一方、産業界で言うところのブランド戦略におけるブランドとは、「消費者が特定の商品やサービスを識別できているとき、その商品やサービス」※のことを言うのだそうです。また、ここで言う「識別」とは差別化の要素が含まれているようです。つまり、ブランド戦略やブランド・マネージメントは、「消費者」に法人やその提供するサービスが、どう思われたいのか、どう見られたいのか、それをマネジメントしていくことがその仕事であるようです。

 当法人の実践に拘わらず、福祉経営の中においては、如上の利用者にどう思われたいか、見られたいか、などはあまり重要視されてこなかったのではないかと認識しております。もちろん、利用者のニーズに個別性をもってしっかりと対応していくことは永らく求められてきたことですし、利用者や地域におけるニーズ調査も一定程度は成されてきたはずです。であっても、利用者や家族にどのように思われたいのか、見られたいのかまでは関心の領域ではなかったのではないでしょうか。そもそも、社会福祉とは、社会からの要請に対して、専門的価値に則って貢献していくことがその仕事であるとされてきました。即ち、どのように見られたいか、思われたいのかはむしろどうでも良くって、自らが社会のために何ができるのかが最優先されてきたのではないかと思われます。

 社会福祉におけるソーシャルアクションのみならず、市民運動等における運動論は、周囲からどう思われるのかなど考えては出来ないものであるとされてきました。周りからどう思われているのかなどと深く考えていては、運動的な行動は出来ないと言うことでしょう。1920年代から70年代にかけて、確かに不当に対する「怒り」は、ソーシャルアクションやあらゆる運動には欠かせない要素であったと理解しております。世の中には確かに不当にも排他・排斥されていた人々が多く存在し、その支援のためには、周囲からどう思われたいのかと言った発想は不毛であったと想像できなくはありません。

 時代は移り変わり、現在の社会情勢において、そこには如何なるソーシャルアクションや運動の在り方が求められているのでしょうか。首相官邸前で毎週行われている原発反対デモの実践の中にその手がかりがあるようです。音楽家等のアーティストや芸能人、特定層ではない市民の参画が見られるこの運動の在り方には、旧来のものと比べそこに柔軟性と曖昧性を感じずにはいられません。

 ソーシャルアクションや運動において今最も求められていることは、たとえ僅かであったとしても変化と言う結果を残すことにあるのではないでしょうか。であれば、多少の違和感は含有しつつも、考え方の異なる人々を緩やかに束ね、常に大局を意識しながら、あるべき方向に導いていく、促進していくことが重要になってくるはずです。「君、地獄への道には善意が敷き詰められている」(サミュエル=ジョンソン)は、有名な言葉ですが、これからのソーシャルアクションには結果を出すことが求められているのだと自身は認識している所です。であれば、周囲からどう思われても良い、自身の信念だけを貫き通せばよいという、運動の在り方は終末期に来ていると認識できます。

 これからのソーシャルアクションは、グレーを貫き通して行うものであると朧げながら理解しております。白か黒かを敢えてはっきりさせることなく、清濁併せ呑んで進んでいくことが重要であると。そして、併せて重要になってくるのが、そうでありながらも自身の立ち位置は白なのか黒なのかをはっきりと信念として持ち合わせておくことです。そのことによって、グレーのまま運動を行うのは良いのですが、どうしても妥協できない領域は認識しながら実践することが可能になります。つまり、自身は白の立場であり、そのことを踏まえてグレーの実践に参画している場合は、限りなく黒に近いグレーには乗れないはずです。その場合は、信念を貫き通して、そのテーブルからは降りるべきでしょう。

 今回のブランド・マネージャーの研修カリキュラムの中には、ご想像の通り、如上のお話は全く入っていません。しかし、2日間の研修を通して、私が最も考えたことはこのことでした。いつも私の周囲にいらっしゃる方と異なる活動や、違ったモノの見方が出来る方と接点を持つことはとっても有意義なことであるとつくづく思う昨今です。

 産業界における経営や、福祉経営と言う分別した書き方を行いましたが、それこそが無用な分別なのかも知れません。ある程度成熟した社会においては、一刀両断に判断できる物事は少なくなっているはずです。その意味においては、歯切れよく敵を攻撃するタイプのリーダー像はそのうち流行らなくなるでしょう。相手には相手の立場がある。そこへ慮りながらも信念を持って対話を重ね、妥協点を見つける作業を繰り返すことで変化いう結果を出すこと。このような実践のできるリーダーを社会は求めているはずですし、その様なソーシャルアクションや運動の在り方が今の社会には相応しいのではないでしょうか。信念を貫く勇気と同時に、柔軟性と曖昧性の持てる自身でありたいと思う昨今です。


※一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会『Brand Manager Basic Course』P.7 2010年



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中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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