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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

通所サービス事業所として地域社会と連携する・地域に貢献するということ

2013/04/15 00:45:17  地域密着型サービス
1.介護保険事業における地域包括ケア考
 制度としても4月から謳われ始めた地域包括ケア。その言葉には随分耳慣れしてきた昨今ではないでしょうか。厚労省における定義やその他研究者及び実践者による定義も含めて考えると、言葉自体は普及しつつあっても、その内実、具体的なあり方までは共通理解が成されていないように思われます。そもそも、多様な地域性が存在する津々浦々で、画一的な発想で行うべきではないのかも知れませんし、また今はまだその時期ではなく、多くの新しい可能性に挑戦し続ける時期にあるのではないでしょうか。地域包括ケアはこうあるべきだと凝り固まった実践を行うには、時期尚早であるということです。

 そのことを前提に、私になりには、3つの視点が欠かせないと考えております。一つは、利用者の支援において、介護保険サービスに限定したフォーマルな社会資源のみならず、その他フォーマル・インフォーマルな社会資源を積極的に活用していく視点にあります。その際の社会資源に対するアプローチは、その把握のみならず、発掘・開発・創出という積極性のある関わりが不可欠であるとも認識します。更なる視点は、医療・保健・福祉の連携のみならず、その他司法・教育・環境等あらゆる分野における連携の幅広さが求められているという点です。総人口における認知症高齢者数が更に増加するであろう20年・30年先を見据えたまちづくりを念頭に幅広い連携が求められています。また、医療と福祉の連携は未だ不十分であると言われています。ケアマネジャーが主治医との連携を不得手としていることは、あらゆる研究データーや資料としても登場してくる有名なお話です。地域包括ケアを推進するに当たって、実はまず手を付けなければならない点は、今更ながら医療と福祉の連携にあるように思っております。最後の視点は、未来志向の地域包括ケアにおいて欠かせないものです。いわゆる対象者を限定しないケア。つまり、介護が必要な高齢者だけを対象にした実践ではなく、同じ地域住民のうち、あらゆる生活課題を抱えていらっしゃる人々を対象にケアを展開していく共生ケアの視点がこれに当たると認識しています。対象者を限定しない共生ケアの必要性は謳われているものの、それが中々普及しない理由を検証し、今後再構成する中で、新しい形の普及を目指すべきだと考えます。

 地域包括ケアは、定義や概念等の形から入らずとも、目の前の利用者の生活支援を真摯に考えることからもその必要性が理解されるものではないでしょうか。生活支援における「生活」は、質的に非常に幅が広く、時間的にも24時間365日の連続性のあるものです。それを果たして、「介護」だけで支えることが出来るのか。また、社会学者の上野千鶴子氏も採用・同意されている次のケアの定義から類推してもそれはよく分かるのではないでしょうか。即ちケアとは、「依存的な存在である成人または子どもの身体的かつ情緒的な要求を、それが担われ、遂行される規範的・経済的・社会的枠組みのもとにおいて、満たすことに関わる行為と関係」※1と定義されています。直接介助や支援をする「行為」ばかりではなく、その「関係」に言及している点が注視に値します。この「関係」は狭義で言えば、ケアをする側とされる側の関係を指すのではないかと思われます。つまり、良質なケアとは、ケアされる側もする側も幸福でなければならず、であればこそ、ケアする側の幸福を担保するために介護者も誰かに支えられる必要があると言えるでしょう。要介護者のみならず、その方を支援している介護者の双方の支援を鑑みた際、果たして福祉・介護専門職だけでその支援を成し遂げることが出来るでしょうか。また、本定義によれば、介護やケアは、「社会的枠組みのもとにおいて」行われるわけですから、如上の様にケアをする側とされる側の関係を超えた幅広い相互支援を構築していかなければその実現は成されないものと理解されます。つまり、福祉・介護のみでは、利用者の生活を守ることが出来ない。この自明の理の下、あらゆる社会資源との連携を図り、そのことをもって利用者の生活支援に期する視点を我々福祉・介護専門職は持つべきであると強く申し上げておきたいと思います。

 斯くの如く、利用者の個別支援といったミクロから端を発しても、また制度等のマクロからの視座であっても、双方の視点において地域包括ケアの様な実践が今強く求められているようです。冒頭申し上げたように、しかしながら、これは未だ創設期にあり、開発途中のものであると認識すべきです。これから全国各地域における多様な実践の中から改めて帰納的に定義づけられていくものと考えております。ですので、もっと自由闊達に議論されていいのではないかと思うのです。


2.地域に開けた通所サービスになるためのアクションプラン
 上記の考えを踏まえた当法人(以下「地域の絆」という)が考える11のアクションプランをここではご紹介しておきたいと思います※2。「地域の絆」では、認知症対応型通所介護をはじめ、小規模多機能型居宅介護や認知症対応型共同生活介護の運営を行っておりますが、これら地域密着型サービスの運営の中で、まちづくりの拠点化を図る具体的な実践を行っております。

 ❶地域住民との協働運営の視点。
「地域の絆」の運営する各事業所に対して、「開設一年目からの凄く地域と連携が取れていますね」とよくご評価を頂けることがあります。しかしながら、私たちは開設一年前から地域住民に対する関わりを始めているのが常です。建物の設計図面が青写真の段階で、地域住民に対する説明を開始するのです。多くは、公民館やコミュニティセンター等の公共施設をお借りして、場合によっては何度も住民説明会を開催させて頂きます。毎回の説明会の要旨としては、�)/様�念、�∋楡澣’宗↓C楼荵抉隋↓し�設工事、それぞれの項目について説明を行っています。実は特に大事にしていることは、�,鉢�にあります。法人が如何に地域のために事業を始めようとしているのか。法人の地域に対する思いと姿勢を伝えることに焦点化して説明を行います。�△呂茲い里�と意外に思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、こちらの利己性が見られる�△砲弔い討蓮�敢えて熱心に説明しないのが私たちのやり方です。そして、ここでは必ず質疑応答の時間を設け、意見交換の時間を取ります。また、その場では意見の述べにくい方もいらっしゃいますので、必ずアンケート用紙を配布し、ご意見の把握に努めるようにしています。実は、「地域の絆」の各事業所の名称は、地域住民が説明会やアンケートを通して命名して下さったものです。

 また、一部地域密着型サービスにおいては、災害時の避難訓練等は地域住民と協働で行うように努める必要が省令で謳われています。私たちも避難訓練は極力地域住民の参加の下実施をしております※3。地域住民が避難訓練に参加することで、私たちの勤務体制や人員配置、利用者の生活等のご理解を頂くことにも繋がっています。ある地域住民は、職員数の少なさに驚かれる方もいらっしゃいますし、車椅子の押し方が分からないので、協力できないとおっしゃられるなど色々と感じ考えるところがあるように見受けられます。
 
 その他、開設時に職員が集まらない時は、地域住民が職員の斡旋を次から次へとして下さったことや、協力医療機関が中々見つからなかった際には住民が地元の医療機関と話を付けて下さることもありました。

 地域包括ケアが促進されると、利用者は概ね30分の移動圏域内でサービスの利用をすることになります。であれば、自らが住んでいる地の一番身近にある事業所を今そして将来利用することになるはずです。要するに、今は介護が必要ない住民も、将来は目の前にある事業所にお世話になる可能性が高い。だからこそ、将来の自身の生活に備えて、今のうちに事業所の支援を行っておく必要があるのではないでしょうか。傍にある事業所のサービスの評判が万が一不評であれば、今のうちに何とかするよう行政に指導を要請する必要もあるかも知れません。地域包括ケアは、この様な住民自治の視点にも繋がるものです。また、それをコーディネートする専門職は、その様な視点をもって地域住民に理解と協力を求めては如何でしょうか。

❷共生ケアの視点。
「地域の絆」では、地域包括ケアを対象者を限定しないケアと捉えて実践を重ねています。地域福祉の実践において重要な視点は、「支える側」と「支えられる側」は固定化された関係ではなく、役割や環境が変わればその立場は逆転・変化することがあるということです。また、地域住民との信頼関係を構築するために必要な視点は、高齢者のケアと相談にはのるが、児童や障がい分野のことについては対応しないという姿勢ではなく、あらゆる生活課題を抱えていらっしゃる地域住民に対して、出来ることはさせて頂く姿勢が無ければいけないと考えています。❶で述べたような地域住民に協力を要請するのみならず、事業所としても地域に対して何が出来るのかを考えなければならないのだと認識しております。

 「地域の絆」の各事業所では、毎日の様に、要保護児童や障がい者がボランティア活動に参加されています。ボランティア活動は個別に様々な意味合いがありますが、共通する目的としては、居場所づくりと自己有用感の醸成であり、この点において一定の効果があるものと認識しています。また、認知症高齢者が児童に対して食器の洗い方や調理の仕方、平素の服装においてまで適切に指導され、それを児童も素直に受け入れている不思議な光景を目にすることは珍しくありません。事業所内においては、そこには専ら「ケアをする側」と「ケアをされる側」の二つの関係が存在します。児童や障がい者、そして、地域住民が事業所内を出入りすることによって、例えば、児童に何かを教え、教わる関係も派生します。つまり、多様な関係性は、事業の中では中々生まれづらく、やはり、地域にある多様な立場の人々が事業所に関わりを持つことによって、利用者の生活はより豊かになるとも言えます。

 「地域の絆」の共生ケアの特徴は、あらゆる対象者を受け入れない点にあります。もちろん、主たる対象者である高齢者はどの様な方でも対応させて頂くことは言うまでもありません。申し上げているのは、それ以外の児童や障がい者のことを指します。私たちは、福祉分野における介護の専門職です。そこに対しては一定以上の責任ある仕事が出来ますが、それ以外のスペシフィックな分野に対応するには限界があると認識しています。私たちは、自身の「出来ること」と「出来ないこと」を自覚している者のことを専門職と呼んでいます。であれば、自らが対応できないことを無理に引き受けるべきではなく、しかし、度外視するでもなく、そこに対応ができるその分野のスペシャリストに繋いでいくことが大切であると考えます。認知症ケアや介護のスペシャリストを育成すること自体が多大な時間と労力を要する中、児童や障がい分野の勉強にまでは手が回らないのが現状です。それほど、介護は甘くはありません。ですので、私たちは、福祉専門職としての共通基盤(ジェネリック)の部分で対応を行い、それ以上に特別な専門性を要する場合は、特別(スペシフィック)な対応が出来る専門職との連携の下に、共生ケアの展開を図っています。そうです。専門職として、責任の持てる「共生ケア」を志していると言って過言ではありません※4。

❸基本的コミュニケーションの実践。
 有事に連携するためには、平時における日常的なコミュニケーションが欠かせません。出退勤時、送迎時、利用者の外出支援時等における地域住民との日常生活会話や挨拶を非常に大切にしています。地域住民との日常生活会話も大切な仕事であると位置づけています。意識すれば直ぐに出来ること、当たり前のことを組織だって実践する必要があるのではないでしょうか。

❹情報の開示性。❺空間の提供。
地域との連携における調査等で、専ら上がってくる課題が個人情報保護法による障壁だとか。「地域の絆」の各事業所では、常に地域住民の出入りがあります。これはある種、個人情報が“垂れ流し”の状況にあるのかも知れません。しかし私たちは、利用者の個人情報は利用者の生活の質を高めるために用いると考えております。個人情報は積極的に保護するのみならず、利用者の生活の質を高めるために必要であれば、利用者の同意を得た上で積極的に開示するべきものでもあるはずです。地域的閉鎖は却って利用者の生活の質を低下させる事実に目を目向けた対応が求められていると思っています。「地域の絆」のある事業所では、「徘徊」されて一人で外出される可能性のある利用者の個人情報を、本人・家族の同意の上、自治会の総会の場や回覧板を用いて積極的に情報の開示を行っています。そのことで、「徘徊」時に地域住民が連絡を下さることや、事業所までお連れ下さる関係を構築するに至っています。

 また、まちづくりを実践するためには、人が集い活動する空間が必要であると言われています。まさに、事業所はそれを有していますので、事業所の空間を積極的に地域住民に提供させて頂いております。子ども会の役員会や、老人クラブの総会、下校時の子ども達の待機場所、子どもたちの遊び場、喫茶や足湯の活用など、地域住民に努めて事業所の空間をご活用いただくようにしているのです※5。地域住民が事業所空間を活用することによる事業所の利点は大きく2つあると認識しています。�〕�用者の継続的な支援と、�∋�業所内における「普遍的な関係性」の維持が可能となる点です。�,蓮�現在介護が必要でない地域住民も10年すれば「地域の絆」のサービスを利用するようになる事も考えられます。現に、喫茶コーナーや足湯をご利用の地域住民には高齢者が多く、既に要支援状態にある方も多くいらっしゃいます。その方々が、本格的に介護が必要になった際に、「通い慣れた」事業所で介護サービスを受けることが出来る様になればそれは、環境変化を極力低減させた形の継続的支援に繋がるものと理解が出来ます。�△砲弔い討蓮∧頂燭気譴振�間内における介護は、支配的援助関係に陥りやすい環境にあると言えます。24時間365日閉ざされた空間内で、介護をする側とされる側のみが存在する環境には、両者の関係性に偏向が生じ、結果、介護する側が恣意的に利用者を管理してしまうといった陥穽にはまる素地があると言えます。そのような偏向した関係を極力「ノーマル」な関係に補正するためにも、そこは地域に開かれた空間であるべきだと認識します。良質なケアを維持するためには、外部の視点や視線を感じながら程よい刺激と緊張感を得ることが不可欠です。地域にはそのような力があるのです。

❻親密度を高めるための多様な仕組みづくり。
地域との関係づくりは、待っていても何も始まらないと考えます。まちづくりの主体者である地域住民が自ら地域に関わり、創っていくための切っ掛けや仕掛けを用意することが大切ではないでしょうか。「地域の絆」では、利用者の支援や、イベントの運営等何かの目的があって地域住民とコミュニケーションをとることもありますが、それ以外に、何の目的もない、いや地域住民との親密度を高めることだけを目的としたコミュニケーションをとらせて頂くことが多々あります。例えば、ペットボトルのキャップやプラスチックトレーを事業所で回収したり、公道に面した土地で利用者と畑を作る事や、喫煙場所を地域住民とコミュニケーションの取りやすい場所に変える等、兎に角忙しい業務の中で、少しでも地域住民とのコミュニケーションの質と量を増やす工夫がなされています※6。

 連携には、「有事」を克服するために行うものと、「平時」から行うものとがあると認識しています。連携には双方の視点が重要であり、人は「有事」(困った時)だけ、連携を図ることが出来ないため、「平時」(日常)の顔と顔の見える関係を数多つくり、それを深めていく地道な実践は避けては通れないと考えています。

❼組織として対象地域像を明確化。
 組織だって地域福祉活動を実践する際の前提条件は、主たる対象「地域」の圏域を設定することと、その共通認識を持つということでは無いでしょうか。※7にある厚労省の報告書を見ても「地域」の圏域は様々です。例えば、ある職員は市内を地域と捉え、別の職員は自治会を地域と捉えて地域福祉活動を行っている場合、その実践の在り方そのものが職員によって違うということになります。これでは、組織(事業所)として地域福祉活動を実践しているとは言い難いと認識しています。ですから、「地域の絆」では、地域福祉活動における主たる対象圏域の設定を次の様に定めています。「高齢者や子どもが、徒歩もしくは自転車で活動できる物理的範囲を考え、自治会及び小学校区の範囲を対象圏域と考える」。基本を自治会と捉え、更にその範囲を広げたとしても小学校区までを対象地域と捉えています。これはもちろん、通所サービスのサービス提供範囲との関係性や、地域性によっても変化するべきものであると理解しています。「地域の絆」の各事業所は今のところ市街地にしか事業所がありませんので、如上の設定としているのです。いずれにせよ、基幹事業の形態と地域性を鑑みながら、対象圏域の設定とその共通理解を確立することは、事業所における地域活動の必要条件であると言えそうです。

❽地域支援に対する職員の意識化。
 事業所が地域との関係性を構築する為の第一義は職員の意識です。全職員が、地域包括ケアや地域密着といった地域住民との関わりの重要性を理解しておらねば、地域との関係を深めることは出来ません。紙幅に限りがありますので、ここでは「採用」の重要性を申し上げておきたいと思います。同じ方向に向かう“電車”に乗れる職員だけを「採用」することこそが、「採用」の要諦です。「地域の絆」では、地域支援を掲げる法人理念に共感しない方の採用は致しません。採用時に、お一人に約1時間半の時間を費やし、その説明と確認を行います。その丁寧な「採用」を通して、法人理念に一定の共感を持つ方のみを職員として迎え入れるのです。無造作に笊の様に職員を採用しておいて、その後の「育成」で人が育たないと嘆くのは本末転倒ではないでしょうか。実は、「採用」は「育成」の要諦とも言えるのです。

❾関わりのプロセスを大切にする。
 地域との交流を促進するために、イベントの運営や、交流スペースの開放、共生ケア等々の多様な実践を行っておられることと思います。しかし、大事なことは、盛大で煌びやかなイベントを行うことでは無く、その準備から当日の運営を経て反省会等の終結に至るまでの過程において、如何に地域住民との交流が促進できるのかにあります。

 「地域の絆」では、例えば、イベントの運営における人手や備品の確保は、全て地域住民のご協力を得て行っています※8。また、その為の準備期間として、イベント開催日の2ヶ月ほど前から地域住民と協議を始めています。介護業務の合間に準備をしているため、最低2ヶ月の準備期間を要する訳です。この営みを何年も続けることで、公民館や集会所の貸し出し可能な備品(長机・パイプ椅子等)の数や、地域住民の自宅の倉庫にある備品(材木・工道具・杵・臼等々)、地元企業の有する備品等を職員は把握できるようになります。かてて加えて、地域住民と協議を行う際の順序や、地域住民ひとり一人の人柄や、持っている技術までも理解するに至っています。協議を行う際に、キーパーソンとして外してはならない住民を度外視して進めてしまったが故に後にトラブルが発生することもありました。住民の人柄を理解しなければ、交渉の精度も高まりません。また、職員と住民との個人的な相性や関係性も連携時の大切な要素となります。そして、忘れてならないことは、地域が有するストレングスに着眼する視点です。住民はそれぞれが多くの強みを持っていらっしゃいます。大工仕事が得意な住民、音響等の電気関係が得意な住民、菜園についての知識をお持ちの方、餅つきの杵取が出来る方など、それぞれの強みを活かした関わりをしていただくことが地域力を高めることに繋がるものと理解しています。全ては多くの失敗を繰り返しながら理解に至った「地域の絆」の財産であると言えます。

❿ネットワーキングやコーディネーションの視点。
「地域の絆」では、医療・保健・福祉領域との連携のみならず、教育や司法分野、地域住民との連携が一定程度図られています。そのことによって、多様な情報収集と、新たなネットワークの構築が成されていると実感しているところです。
❷でお伝えした共生ケアなどは、医療・教育・司法分野の専門職と連携を図った上で実践が成されています。小児科医との連携のもとに発達障がい児の受け入れを行ったり、家庭裁判所との連携のもとで触法少年や不登校児の受け入れに至っております。この様に多様な分野と繋がることによって、地域ニーズに触れる機会を増やすことが可能となります。
 
 また、活動圏域以外(市外・県外・海外)で活動されている人々との交流を通して、自身の実践を高めていくことも大切な視点です。「地域の絆」においても、活動圏域外の見学者の積極的な受け入れや、講演活動等を通して活動圏域外の人々との交流を意図的に行っているところです。そのことを通じて、活動圏域内の実践が高まることは想像に難しくはないでしょう。

⓫複数の実践を複合的・有機的に展開。
 最後に、上記に列挙させて頂きました実践は、多くの実践のごく一部に過ぎません。大切なことは、1つの実践だけを継続して行うよりは、複数の実践(内容や頻度、時間帯、場所、対象者の異なる実践)を同時に行うことが効果を発揮しやすいということです。つまり、一年に一回夏祭りを行っているだけの関わりでは、恐らく上手くはいかないと思われます。複数の実践を同時に“仕掛けて”行くことで、多様な住民と接点を持つことができ、多様な住民同士を繋ぐことも可能となります。また、複数の実践が共鳴し、それぞれが進展することもあるのです。どの実践にも共通する課題が見えてくることも。

 ひとつ一つの実践を丁寧に重ねていくと同時に、複数の実践を複合的・有機的に機能させることも合わせて重要であるとここでは申し述べておきます。


3.まとめ・今後の課題
 地域包括ケアの考え方から、「地域の絆」における具体的なアクションプランについて叙述させて頂きました。総じて大事なことは、個別支援にも地域支援においても、モニタリング(経過観察)と再アセスメント(事後評価)に力点を置くことにあります。特に、地域支援においてはアセスメント(事前評価)が困難であり、その精度も期待できないことから、一人の地域住民の声から実践を始めることも珍しくはないでしょう。大切なのは、その後の援助活動から地域住民の反応や思いに触れる中で、その思いを察して知ること、そしてそこで知り得た情報を言語化し、組織内で共有することにあります。その共有した暫定的な地域住民のニーズをもとに、次の計画と活動の中身を変化させていく。そして、その活動で知り得た情報をまた組織で共有する…。その繰り返しこそが非常に重要であると考えております。その活動プロセスを図式化したものが※9にあたります。一辺倒に同じやり方を続けるのではなく、地域住民の反応を見ながら、やり方を少しずつ変えていくことが必要です。例えば、�,任蓮�避難訓練時に、地域住民から車椅子の押し方が分からないので協力できないと言われたことをご紹介しました。「地域の絆」の職員は「分かりました」とそこで決して終わらせることなく、その後間髪を容れず地域住民を対象にした車椅子教室を開いたのです。当然にして、多数の参加者を得ることが出来ました。そこから言い得ることとして、一番やってはいけないことは、地域住民のニーズが分からないので何もアプローチをしないことです。しかし、地域住民のニーズなど端から理解している人などいないはずです。※9にあるように、一人の住民の主訴からでもいいのでまずは活動を始めること、行動を起こすことが求められます。

 最後に、認知症ケアの現場でパーソンセンタードケアが叫ばれて久しい昨今ですが、それを成し遂げるためには利用者を取り巻く社会環境の変革が不可欠です。地域包括ケアは、単なる地域住民との交流促進に終始するのではなく、利用者の生活を中心に、地域の社会資源を把握するのみならず、発掘・開発・創出する積極的な地域への働きかけがあって初めて成立するものであるはずです。であればこそ、そこには、ソーシャルワークの視点が無ければ実現が難しいものと思われます。

 地域包括ケアは、地域社会に目を向けたケアではなく、地域社会を変革することで成立するケアであると鑑みれば、それはソーシャルワークの一部であると位置づけることも出来るでしょう。これからのケアは、ソーシャルワークの視点を持たずして、確立できないものであると言って過言ではありません。



※1 上野千鶴子氏『ケアの社会学』太田出版P.39  2011年8月
※7 厚生労働省「これからの地域福祉のあり方に関する研究会報告書」2008年3月31日


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中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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