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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

来たるべき秋を迎えて

2013/07/28 23:40:01  社会福祉
東北新幹線は当世風なデザインが多いですね。デザイナーさんが他と異なるのでしょうか?素朴な疑問です。
 先の参議院選後、いみじくも「政府の社会保障国民会議(会長=清家篤・慶応義塾長)がまとめる報告書の素案の概要がわかった」※1。具体的には、「財政が特に厳しい介護・医療が中心。介護分野では、介護の必要度が低い「要支援」(約140万人)向けのサービスを介護保険から切り離し、市町村の独自事業に移すことや、高所得の利用者の自己負担を今の1割から引き上げることを提案している。(中略)医療では、患者が紹介状を持たずに大病院を受診する場合、初診・再診料として定額の負担を求める▽保険料の上限引き上げ▽高額の医療費がかかった場合の患者負担の上限見直し――などを検討項目に盛り込んだ。安倍政権が検討している70〜74歳の医療費窓口負担の引き上げ(1割→2割)も、早期実施を求めている」※1とのこと。

 なるほど。これに対しては、驚くべきことは一つもありますまい。現政権は、方針通りにその仕事を着実に熟しているに過ぎません。それすら出来ずにいた前政権の体たらくよりもある意味“成果”を上げていると言えそうです。参議院選より前から政府は、経済財政運営の基本方針「骨太の方針」にて、社会保障費を「聖域とはせず見直す」と明記していたわけですから、これは当然の帰結であると言えます。

 併せて、この方針の定向進化の果ては容易に察しが付くものと思われます。それは、福祉・医療サービスの利用者の負担増加であり、介護報酬や診療報酬の現状維持及び減退の流れを築くことでしょう。国民年金の1ヵ月当たりの年金額は月額約66,000円であり、厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)で月額約230,000円と言われています。介護保険施設等の入所・入居費の月額平均は100,000円〜130,000円もしくはそれ以上であることを鑑みれば、これ以上利用者負担が増加すれば、いや既に、サービスを十分に受けることができない人々が溢流することになりそうです。因みに政府は、施設ではない「自宅」としてのサービス付高齢者向け住宅の設置を推奨していますが、その入居費の月額平均は約140,000円(介護保険サービスを含まず《広島県内調べ》)ですので、こちらも利用困難を更に極めて行くことでしょう。その様な状況下で、クライエントがサービスを選択する際の重要な要素は、サービスの質ではなく、利用料その金額が第一義となる傾向が既にあります。サービスの質が保障されているからでは断じてなく、そこをある意味諦めて、自身の支払い能力に応じたサービスを探すことに必然性が生じているのです。多くのクライエントにサービスの質を選択する余裕はなく、支払い可能なより安価なサービスを求めている傾向があるのではないでしょうか。それが、今後益々顕著となることでしょう。さすれば、施設・事業所側の取るべき道は一つしかありません。クライエントのニーズに応えるべく、廉売競争を始めることになるのではないでしょうか。もちろん、富裕層を対象としながらもサービスの質にこだわった実践も見られることでしょうが、これは飽く迄も主流の話にはなりますまい。

 言わずもがな、廉売競争に勝ち残れる法人とは如何なるタイプの法人か。説明するまでも無いでしょう。産業界に等しく、全国展開を図る大手法人に有利な状況となることは当然の帰結と言えます。地方に展開される小規模法人は、その大手法人の“下請け化”の中で生き延びるしかその方法は無くなることでしょう。政府は、地域包括ケアの推進を前面に謳っている訳ですが、全国展開を誇る大手企業による各地域での展開が広まれば、地域性を度外視した画一的ケアにそれが繋がるものと危惧されます。これは、今後政府が本気で地域包括ケアを促進しようと考えているのかどうかの重要な試金石になり得る視点であると認識します。

 社会保障制度の持続可能性を担保するための改革であると政府は説明しているようですが、そもそも、現在の制度を今の形のまま持続させる必要があるのでしょうか。例えば、介護保険制度はこのまま社会保険方式で今後何十年も継続していくつもりなのか。高齢者福祉は社会保険方式を取り、障害者福祉はそうではない根拠は一体何処にあるのだろうか。斯様な意味において、今一度社会保障制度の理念や本質を持続させるために、制度の在り方そのものを変革することこそが今求められているのかも知れません。本質や理念は容易に変えるべきではありませんが、それを維持するための制度の在り方は時代の状況に応じて変革すべきであると認識しております。

 社会保障の本質は、何と言っても全国民の生活を守ることにあるのでしょう。現下の社会に社会化されて暮らしていく以上、私益と公益は相互作用の関係にあり、誰かが排他・排斥される社会は自らをも排除する社会であることは自明の理ではないでしょうか。一部の“不幸”な人々のために本制度があるのではなく、全ての国民のためにこそあることを改めて強く認識する必要があるのでしょう。また、そこが理解しづらい制度の在り方についても是非とも見直しをお願いしたいと思います。

 またまたいみじくも、参議院選の翌日、福島第一原発の高濃度汚染水流出の報道がなされました※2。原発の問題に顕著な様に、環境問題などは、その被害の対象領域はそこに住むあらゆる人々であり、一部の“不幸”な人々の問題とは捉えられないでしょう。大学生時に目を通した『奪われし未来』(1997年・翔泳社)においても、アメリカで発生した環境ホルモンが日本にまで到達する危険性を謳っていますし、現に中国における大気汚染が我が国の国民の健康被害を生じさせている現状を見れば、如何に私益と公益が重なり合っているのかを窺い知ることが出来るのではないでしょうか。以前東北の被災地支援に伺った際、ある集落の内一世帯だけが津波の難を逃れたその世帯住民と話をしたことがありました。自分だけが被害に遭わない辛さを強く訴えられていましたが、環境問題はそこに住む人々に等しく降りかかる問題として捉えることができるものなのかも知れません。無論、それでも経済的に裕福な住民とそうではない住民との間で、多少の格差は見られるものの。当法人では、環境理念を掲げておりますが、環境問題こそが、私益と公益の相互作用の可視化を図り、地域の絆を紡ぐ分かりやすい「教材」となる可能性を秘めていると言えそうです。

 私は、大手法人と中小法人の対立構造を生み出す視点で如上の指摘をしているものではありません。逆に、同業者として、また同じ専門職として、大局観で共通の理念を思い描くことは容易に出来るものと思われます。その大局観をもって、社会福祉事業を展開する法人及びそこで勤める専門職、延いてはクライエントとその家族における大同団結こそが今求められているのだと思われます。介護専門職は今後10年かけて倍増します。労働者人口の倍増は、選挙権の倍増を意味します。今こんな時代だからこそ、小異を乗越え、大局観をもって、多くの人々が連携を図り、社会を揺るがすことこそが求められているのではないでしょうか。


※1 『朝日新聞』2013年7月26日
※2 『朝日新聞』2013年7月23日
「東京電力福島第一原発の海近くの観測井戸から高濃度の放射性物質が検出されている問題で、東電は22日、汚染された地下水が海に流出しているとみられると発表した。さらに東電は坑道にたまった汚染水が今も地中に漏れ続けている可能性があるとみている。 今回の問題で、海への流出を東電が認めたのは初めて。東電は、原発の港湾外の海水に放射性物質の濃度の変動がほぼないことから、汚染は港湾内にとどまるとの見方を示している。しかし、東電が地元漁協などへの理解を得た上で、原発に流れ込む前に地下水をくみ上げて海に放出する計画は実現がさらに難しくなりそうだ」。



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中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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