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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

責任追及社会の顛末

2014/10/28 12:19:20  社会福祉


 少し長いのですが、2014年10月26日付けの東京新聞から以下の行りを引用します。

 「高齢化を受け国が整備を進める『サービス付き高齢者向け住宅』(サ高住)など老後の住まいで、運営事業者が不必要な介護保険サービスを提供したり、自社の介護利用を入居の条件にしたりといった事態が横行し、監督する自治体の50%強が問題視していることが二十五日、厚生労働省の初の全国調査で分かった。
 これらの手法は『介護漬け』や『囲い込み』と呼ばれ、関連法令に触れる行為に当たる。介護サービスの種類や量は本来、利用者が自由に選べるが、運営事業者による利益優先が背景にある。
 厚労省は改善命令などを積極的に出すよう自治体に促しており、サ高住を共に所管する国土交通省も九月に検討会を設置し、悪質事業者の是正に乗り出す構え。介護保険の財源を無駄に使っているとして、財務省が介護報酬の引き下げ圧力を強める可能性もありそうだ」※

 かつて、我が国の高齢者介護は、施設ケアと在宅ケアの二分化が顕著でした。そこから、北欧をはじめ欧米を模倣し、施設とも在宅とも言えない高齢者住宅におけるケアを取り込んだ帰結として今のサ高住が存在します。つまり、施設ケアにおける居住サービスを介護保険サービスから分離させることがその目的であり、そのことで施設サービスと在宅サービスの利用者負担の公平性を担保し、施設サービス利用を制限することに連ねることがその本質であったと理解しています。

 施設ケアにおける居住費を介護保険の対象外とすることは、我が国においては、施設サービスにおける居住費の自己負担化、つまり、公的負担の削減化を意味するものでした。この点、「お手本」にしたはずの欧米の多くの国々では、住宅保障という別枠での公費負担がなされているのに対して、我が国にでは、そのような住宅保障の手当てが成されぬまま、単に介護保険の対象外へと居住費の移行がなされたのです。

 このような事を書きながら、いつも彷彿されることですが、我が国の制度・政策では、しばしば、欧米のそれをそのまま模倣することがあるようです。しかし特に注視すべきは、その殆どが、全体性を捉えることなく、ごく一部だけを切り取って導入するという遣り口が顕著であるということです。因みに、病院ではなく高齢者住宅での看取りが圧倒的に多いと言われている北欧を例に挙げ、我が国でも、施設や在宅での看取りが推奨されています。根底には、医療費の削減がある訳ですが、この場合でも、北欧の極端に一部の側面だけを切り取って、それを政府が意図的に取り入れている傾向が見られます。なぜなら、例えば、スウェーデンの高齢者住宅の従事者のうち約90%は看護師で占められているからです(准看護師が約85%で正看護師が約5%でしょうか)。日本の施設ケアや高齢者住宅における従事者割合では、看護師は精々5%〜15%の範囲ではないでしょうか。つまり、医療従事者の割合が、日本とスウェーデンでは真逆の比率で構成されているのです。その中にあって、スウェーデンにおける高齢者住宅や在宅での看取りの多さだけを取り上げ、我が国は、まさにそこだけを模倣しようとしているのです。

 話をもとに戻しますが、全体性を鑑みた上で、サ高住の置かれた状況を捉えてみれば、つまり、人々の住宅保障がとても貧困であることを基盤とした我が国の高齢者住宅施策を捕捉すれば、サ高住の賃料や共益費、サービス費などは、入居者負担をかなり押さえた価格帯の設定を行わなければ、平均月額5万円強の国民年金や平均月額15万円弱の厚生年金(男性17万円強・女性10万円強)では、サ高住の入居と、それに加えた形での医療・介護サービス費の自己負担が不可能であることが理解できます。

 であるならば、サ高住の運営事業者の多くは、サ高住の価格帯を極力下げることがまず求められており、その帰結として、サ高住単体での収支は相償か赤字であるものも少なくはないと認識しています。その結果、運営事業者の多くは、併設する介護保険事業の収益でその赤字を補填する傾向が強いように思うのです。なぜならば、介護保険事業は利用者の負担額が、今は一割となっていますので、その方が、否、そうでなければ、利用者の負担を極力抑えた形でサ高住を利用してもらうことが難しいからではないでしょうか。

 以上の様な制度・政策上の瑕疵を棚に上げ、事業者側に責任の転嫁を図り、悪質事業者を探して叩くという論法には大いに違和感を抱くところです。たしかに、悪質な事業者は存在すると思われますし、その様な事態を放置するわけにはいきません。しかし、そもそもその本質的要因は何処にあるのかにも留意が必要であり、事業者の全体傾向として冒頭の指摘の通りとなっているというのであれば、それは個別具体的な事業者の正否問題ではなく、その背景にある制度・政策問題であると捉えるべきです。

 私たちは、社会構造と環境の全体性を冷静に捉え、“犯人捜し”たる責任の追及を促進するのではなく、むしろ、その行動の背景にある原因の究明にこそ力を注ぐべきではないでしょうか。この視点のもとでこそ、真に人々の権利を守り、暮らしの質を高めるうる社会を構築することができるのです。



※「介護漬け横行 高齢者住宅 自治体の半数問題視」『東京新聞』2014年10月26日 朝刊



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中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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