スウェーデン視察研修は、実質1日半で終わりました。非常に長い移動時間を経て、たった1日半の体験でしたが、想像以上に得るものの多き研修となりました。お声をかけて下さった県立広島大学の山岡 喜美子教授及び社団法人福岡県介護福祉士会の皆様に厚く御礼申し上げます。
残り半日は、ストックフォルムの市街地及び旧市街地の観光に出かけました。観光を通しての、気づきと、二日間の総括をしてみたいと思います。
スウェーデンに対する心象については、大きく3点のことが感じられました。一点目は、訪問する前から分かっていたこととして、税金が高いことです。消費税は25%、所得税は県によって異なるものの約30%以上、一定の年収者には国税が比例制で課税されることとなっています。そのため、夫婦は共働きが主流であり、殆どの子どもは保育所に預けられることとなります。一方で、義務教育から大学までの授業料は完全無料であり、その意味において、教育のための積立貯金は必要ありませんし、自らが介護を必要とする際も、年金受給者の約8割は、介護サービスのみならず、住宅保障まで受けることができると聞きます。そうなると、日本のようにタンス預金をする必要はありませんね。
そして、福祉が雇用を創出していることを鑑みると、これは、循環型社会ではないかと痛感しました。ここには、社会的弱者の人権にも、環境にも配慮した循環型社会があります。
二つ目は、国民の民度の高さです。高齢者や障害者に優しい社会は、自らに優しい社会であることを理解し得る民度です。私益と公益は循環して繋がっているのですが、そのことを理解している国民の意識がここにありました。そして、その民度の高さが、介護サービスの現場を支えているのです。この点が、スウェーデンと日本の大きな違いです。なぜここまで、民度の違いがあるのか。私たちはその検証を求められることでしょう。
最後は、この国は200年間戦争をしていません。だから、古い街並みが至る所にあり、古い家を改修して住み続けることに誇りを抱いている方が多いと聞きました。また、移民の受け入れがスムーズで、移民に対する偏見が弱いように見受けられました。この様に、自国民の人権のみならず、他国民の人権に配慮ができる市民の意識が感じられます。戦争をして、他国の民衆を蹂躙することが、実は自国の民衆を最も蹂躙することに繋がることをスウェーデン国民は知っているような気がします。
無論、私は日本民族の誇りを持っています。この国に生まれて良かったと思いますし、この国に住み続けようと思っています。年金受給後は、海外で生活する何てことは全く考えておりません。ですので、日本の良さも感じ取ることが多々ありました。
勤勉で、仕事に対して直向きで、一生懸命である点。きめ細やかな他者への配慮のある点。これについては、日本に軍配が上がります。
ケアの現場においても、スウェーデンの職員さんは人員配置の多い分、ゆとりがあり過ぎるようにも見受けられました。日本の介護職は、限られた人員配置の中で、毎日創意工夫を繰り返しながら、ケアの効率と効果について弛み無い検証を行っています。無論、日本は余裕がなさ過ぎる人員配置であることは否めませんが、日本の介護職は頑張っていることを痛感しました。そして、この厳しい環境の中で、日本の介護職は技術や知識を高めていることと推察されます。つまり、現場職員の知識や技術レベルは、スウェーデンと比べても遜色ないように感じたのです。直向きさ、一生懸命ぶりは、日本の介護職の方が上かも知れません。
ただし、決定的に異なることは、如上に述べた通り民度の差です。民度の差は、すなわちその国民が持つ政府の差となります。そしてそれはすなわち、その政府が打ち出す政策の差へと変遷していきます。
日本の介護職の知識や技術は徐々に底上げが図られており、このまま定向進化を遂げれば、スウェーデンを凌ぐことが予測されます。しかし、理念や価値の浸透、その徹底ぶりについて、また、介護職が誇りを持ってこの仕事についているのかについては、スウェーデンに遠く及ばないことも窺い知ることができました。日本の福祉の課題は、政策であり、国民の意識であることが分かったのと、介護職ひとり一人の頑張りはスウェーデンを凌いていることを実感できたことは、何よりも得難い収穫でした。それは、スウェーデンに匹敵する理念を日本国民が手にした時、一流福祉国と言われるスウェーデンを上回り、我が国が世界に君臨することを物語っています。
ストックフォルム市街地にあるレストランで1600年代?の建物
ストックフォルム 「女王様通り」