世界的経済が縮小傾向にある中、金銭的価値によって職員のモチベーションを高める方法は大時代であると認識しております。もちろん、経済成長一辺倒の時代においては、「もっと頑張りなさい!頑張ったら給与を2倍にしてあげるから・・・」と叱咤し、職員のモチベーションを高めていた時期もありました。しかし、その時代、頑張れば確かに給与は2倍になったものです。現実性があるからこそ、金銭的価値によるモチベーションの向上はそれなりに意味を成しました。
しかし、今の時代頑張れば給与を2倍にすることを約束できる企業・法人は如何ほどあるでしょうか?ましてや、限られた介護報酬の中で事業運営を行う介護保険事業者が、それを成すには大きな困難を要します。「キャリアパス」を示して、それを給与と連動させ、職員のモチベーションを高めるには所詮無理があるのです。無論、職員給与を上げるためにも、その礎となる介護報酬の向上を訴えていくことは福祉専門職としては避けて通れぬ実践となります。
今回はそれとは少し別の視点で見てみます。つまり、人は金銭的価値のためにのみ働くのか?といった問題意識からです。働くことには大きく二つの意味があるのでないでしょうか?�\験茲亮舛魄飮�・向上するため、�⊆�身の自己実現のため。�,任蓮∪験茲防�要不可欠な金銭的価値が大きく作用するかもしれませんが、�△砲�いては、仕事に対する楽しさや、遣り甲斐、達成感、社会に対する所属意識や、承認欲求、社会的使命の自覚等がモチベーションを高めることに寄与します。そして、私たち社会福祉専門職の仕事の最も優れた点は、�△鮹�成することにおいては、他の仕事よりも、非常に有利であるということです。多くの仕事が、社会に与える影響には、正の側面と負の側面が双方ある場合が殆どではないでしょうか?環境に優しく高性能な車を販売しても、自動車事故は無くなりません。電磁波の問題や、界面活性剤入りの合成洗剤と健康の問題など、正の側面もありますが、負の側面を完全に除去することは困難なようです。しかし、私たち福祉専門職の仕事はどうでしょう?専門的価値・知識・技術に則って、利用者支援を行う限りにおいて、その実践を通して誰かを不幸にしたり、社会的に負の側面を算出することなど皆無ではないでしょうか?私たちの仕事は、誰も不幸な人を生み出さない。非常に社会的価値の高い仕事なのです。この点だけは、福祉専門職の方には是非とも誇りを持っていただきたいと私は思います。
職員のモチベーションを高めるもう一つの方法であり、これからの主流は、いま目の前の仕事の社会的な意味をしっかりと実感していただくということです。社会的な使命や責任と、今の仕事がどう結びついているのかを明確に伝えるということです。それこそが、職員のモチベーション維持につながり、延いては、職員の人材育成に帰結すると認識しています。
再放送でしたが、たまたま見た番組で、東京大学教授の福島智氏(障害学)が、実践に対する意味付けの重要性についてお話されていました。
「私は、何が幸福か不幸かっていうのは、もちろん人によっていろいろあるだろうけれども、すごいしんどい経験をした時にね、つらさ、苦悩というのも何か意味があるんじゃないかなと思うことにしようと。実は同じようなことを言っている人はたくさんいることが分かって。ナチスドイツの収容所に入れられた経験のある人で、ヴィクトール・フランクルという人がいるんですが。彼の本を読んでいて、すごい公式に出会ったんです。
その公式は、絶望=苦悩−意味って言うんですね。
左辺に絶望があって、絶望=苦悩−意味。これは何を意味するかというと、“−意味”を移行したら、絶望+意味=苦悩ということです。意味がない苦悩が絶望である。
(中略)苦悩があるから、しんどいから不幸だって簡単に考えるのではなくて、意味をそこに見いださせれば、それは絶望ではない。新しい豊かな人生が見つかるかも分からないっていうふうに思っています」※
この仕事が社会的にどのような価値や意味があるのか、それを感じることなく仕事に対するモチベーションを高めることは今の時代難しい。組織のトップは、ビジョンを明確に示すこと。今特に、このことが強く求められているのです。
※NHK総合 (2009年6月9日放送分)『爆笑問題のニッポンの教養』FILE074:「わたしは ここに いる」福島智氏。