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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

末節的問題としての「相部屋」「個室」論争

2010/09/05 12:00:00  社会福祉
広島県呉市の音戸大橋の麓より。向こうに見えるのは、現在建設中の第二音戸大橋。
 表題のことはひどく昔から議論のあることで、個室化議論が始まった折は、「寄り添うケア」が基本の認知症の方に、強制的に個室に入っていただくことは良いことではないと言った議論がありました。また昨今では、個室は利用者の負担額が多く低所得者が利用できない側面や、現下の職員配置においては職員が小間切れとなって対応するだけで、職員の負担が増加していることが指摘されています。

 ユニット型と「相部屋」(定員4人以下)を併設した特養について、「厚労省は併設した施設についてユニット型の部分を相部屋として報酬請求するように通知」※していたところ、「埼玉県などは『低所得者対策として、個室より費用負担が軽い相部屋を併設した特養が必要だ』とし、国に報酬請求の解釈変更を要求。国の通知は技術的な助言で、報酬を定める根拠として弱いとする指摘もあり、厚労省は判断を変えた」※とあります。その上で「厚労省は近く社会保障審議会の分科会で提案するが、相部屋の併設を容認したとの印象を与えるだけに、個室化推進を求める関係者の反発を招きそうだ」※と紙面上では解釈されていました。

 さて、ここには全く質の異なる2つの問題が存在します。まずは、そのことを峻別して議論を行うべきではなかろうかと考えます。一つは、利用者にとってはどちらが良いのかという議論、もう一つは、低所得者が個室を希望しても入居ができないことに対する議論。

 一点目は、然程難しい問題ではないでしょう。利用者にお伺いすれば良いのです。判断能力の低下された方に対しては、どの様に判断するのか?これこそが、福祉専門職の拠って立つ権利擁護の視点が不可欠となる場面です。つまり、言語以外のコミュニケーションを用いたり、過去の生活歴の中での行動・考え・嗜好をヒントに、本人がどちらを選択するのかを、周囲の家族も交えて考える。「正解」は出ないものの、迷いながら、日々修正をかけながら当面の「答え」を出していく作業。この様な営みを持って対応するしかありません。であれば、個室・相部屋という二つの選択肢をサービス提供者側は用意しておく必要があります。その際の要諦は、それを選ぶのは利用者であるという大前提です。

 二点目の議論は、低所得者用に相部屋が必要だという発想ですが。この発想は、権利擁護の実践と真逆の視座に立脚しています。つまり、利用者の意向を度外視して、個室料の支払いが出来るか否かで判断をするという思想に立っているのです。個室を希望し、また、個室が相応しい利用者の方が、個室料の支払いが出来ないがために、相部屋での処遇を強いられるこのことに対して、違和感を持たない発想なのかも知れません。これに対しては、本当にユニットケアや個室が利用者にとって有益なものとなるのであれば、そこに一定の財政投入(低所得者支援や手厚い職員配置に見合った報酬設定)を行えばそれで済む話ではないでしょうか。それをせずして、欺瞞的な形で、ユニットケアや個室を導入してもそれを現場で定着させることは非常に困難です。また、「相部屋」か「個室」かを利用者に選択していただく余地はありません。

 個人的には、やはり個室が良いと考えています。たとえグループホームであっても、入居(入所)サービスは集団生活の中にあります。限られた空間の中、他者との接点を否が応でも受け入れざるを得ない状況です。そのような生活においては、やはり一人になって、ホッとする空間が必要ではないでしょうか。入居(入所)生活において、一人になれる空間は殆ど用意されていない現状を鑑みると、やはり自分の居室は個室であって欲しいと私なら思うところです。無論これには、個々人の嗜好がありますので、それを強要するべきものではないでしょう。

 昨今、福祉国家としてのスウェーデンや、デンマークの国々がマスコミに取り上げられています。高福祉の礎には、国民の政治に対する高い信頼度があることを上げた報道も見受けられました。無論全てに目を通したわけではありませんが、残念ながらその多くは皮相的な取材に終始しているように認識しております。スウェーデンやデンマークでは低所得者にどれほど手厚い支援が成されているのか。現場の職員配置は如何なるものか。政策を含め、社会保障や福祉の観点から取材をするのであれば、利用者や家族、地域住民、福祉現場に携わる職員に焦点化した取材が求められるはずです。トップダウンではなく、ボトムアップから取材を開始することがジャーナリズムの鉄則ではないかと素人は考えるのですが…。取材力とはおそらく、その場に何日滞在したのかではなく、どの様な問題意識を持って取材に当たったのか。所詮は、その如何によるのでしょう。

※2010年9月4日『中国新聞』「『過払い』疑い返還求めず 厚労省方針 特養の個室・相部屋併設」

Date 2010/09/05
中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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