新規事業を展開する当法人では、今が新規採用面接のラッシュです。その際、応募して下さった方々から何度もお聞きした話の要旨に、経験豊富な指導者がおらず十分な指導を受けていない、ここでは自分が成長しない、と思ったので当法人の採用面接に応募したといったものが多く存在しました。
その様にお話しをされた方には透かさずに次の様に質問しています。「そうですか、それは大変でしたね。ところで、ご自身はその間専門書を何冊手に取られて読まれましたか?独自にどのような研修を受けて来られましたか?」。残念ながらそれに対する多くの答えは、自己研鑽の実践が皆無であることが殆どでした。追い打ちをかける様に思わず嘯いてしまいます。「それでは、経験豊富で優秀な指導者の下にいても、その方の指導を十分に受け取ることはできませんよね」。
学ぶことは、教え手の問題であると同時に、学び手の問題でもあります。インストラクショナルデザインの様に、教え手の専門性を高める視点に立てば、学び手が正しいという原則に立って実践することが求められる訳ですが、学び手が自らの動機を高めて強く学びたいと思い行動しなければそこには限界が生じるはずです。
優秀な指導者が、優秀な実践者を生み出すのではなく、優秀な学び手が、優秀な指導者を上手く活用出来た際に、その才能を開花させているようにも思われます。指導者が凄いというのは間違いありませんが、その方について才能を開花させた学び手は更に凄いのだと私は認識しております。先生も凄いのだが、それに応える生徒はもっと凄いのだと。
昨日たまたま見ていたNHKの番組を見ながらその様なことを思い出しました。競泳日本代表ヘッドコーチの平井伯昌氏は、専門外の体験や知識を選手に伝えるのだそうです。マネジメントの本を選手に読ませたり、美術館の絵画鑑賞に連れて出かけたり、大人の集まる会に連れて出る等。平井氏いわく、競泳選手なので競泳のことだけを考えていればそれで良いというわけではなく、様々な経験と競泳を繋ぎ合わせて考えることが出来る選手が強くなる。競泳と関係ないことは一切しないと言った選手は強くなれないのだそうです。
学生から社会人になり、競泳に必要な体力や技術は向上するが、それだけでは結果が出せないと平井氏はおっしゃられていました。それとは違う分野の出来事を自ら分析して、それを競泳のヒントに繋ぐことが出来る、その様な選手が伸びるのだと。著名な北島選手も然りで、競泳以外の様々な分野の人たちと交流しながら、それをただ単にプライベートだと競泳と分けて考えているわけではなく、その経験を競泳に生かして結果を出しているとおっしゃられるのです。その様な応用力が彼にはあると。
つまり、学び手に如上の応用力がなければ、どの様な指導者の下であっても多くを学びとることは出来ないでしょう。
しかし、応用力はどの様に身につけるのか?その第一歩は、目標に向かって信念を持って歩んで行こうとする志の高さにあるような気がしています。今は出来ていない、しかしいつかは到達したい。だからこそ、今を懸命に自己研鑽している志。いつかきっとこうなりたい、だからこそ毎日を投げ出さずコツコツと積み上げている実践。その飽くなき向上心と、志が学び手に応用力を身につけさせるのかも知れません。
優秀な指導者が、優秀な実践家を生み出すのではなく、優秀な指導者のもとには、志の高い実践家が集まるのです。
※『仕事学のすすめ』「『人間力を高めるコーチング」第3回 ほめずに育てるコミュニケーション術」トランスレーター:勝間和代氏 語り手:平井伯昌(ひらいのりまさ)(競泳日本代表ヘッドコーチ)
本放送 11月18日 PM10時25分〜PM10時50分(教育テレビ)