東日本大震災における福島第一原発の事故で情報が錯綜しています。住民の方々の心中をご察しすると、心痛に耐えないところです。人々の権利擁護を業とする専門職としては、住民の安全・安心を最優先した対応が不可欠であると切に思います。
しかしながら、政府や電力会社の対応からは、科学分野における「予防原則」に則った対応が見られません。今最も重要なことは、原子力発電の面子ではなく、住民の安全であるはずです。このようなことを書いてしまわなければならない程の体たらくではないでしょうか。
「三宅島の場合、結局、火山がいつ、どんな規模で爆発するのかわからず、科学的なリスクの予測には限界があるので、とりかえしがつかない被害を受ける前に、とりあえず島外避難する、すなわち『予防原則』が適用された。世界的に話題の遺伝子組み換え食品や携帯電話の電磁波の問題でも、欧州を中心に、この『予防原則』に基づいて、たとえば携帯電話をやめないまでも、賛否両論あるが、イヤホンで聞くなどの対応が始まっている」※。10年以上前の新聞記事からの抜粋ですが、『予防原則』とは安全が証明されていないモノは、危険である、もしくは危険の可能性を認識して行動することだと素人ながらに理解しております。
日本の科学の安全基準では、危険が証明されなければ安全であるとの価値が専らであったと認識しておりますし、現在進行形の福島原発での対応を見る限りその潮流の真っただ中にあると言えます。しかし欧州では既に、安全が証明されていなければそれは危険であるという「予防原則」が主流となっているのです。これは非常に大きな違いで、危険を証明することよりも、安全を証明することの方が非常に困難であることから、欧州の方がより安全基準が厳しいことが自明の如く理解されます。
今こそ「予防原則」に則って、住民の生命及び安全を第一義に、早め早めの対応をお願いしたいと思います。原子力開発には、政・官・財・学の日本の技術力におけるプライドがあるのかも知れません。素人にはよく分かりませんが、とにかく今は、住民の生命・安全を最優先にした行動を政府や電力会社に強く求めます。
福島には知人が数名住んでいます。しっかりと生きていらっしゃることだけは間接的な情報で確認が取れております。被災した方々をこれ以上傷つけないで欲しい。今心中は非常に苛立っています。
※ 黒田 洋一郎氏「科学をよむ」『朝日新聞』2000年9月13日