2011/06/04 12:00:00
地域密着型サービス『小規模多機能ケアに求められる人材マネジメント�◆�
小規模多機能型居宅介護(以下「小規模」)経営の要諦は人材マネジメントであり、その中核を成すのが人材育成である旨前回ではお伝えしました。今回は「地域の絆」における人材育成の取り組みについて叙述してみたいと思います。
当法人では、内部研修を定期・不定期に開催しています。事業所ごとに週1回30分の開催と法人で不定期に研修会を開催します。現在は不定期開催の法人研修ですが、12月からは法人本部に職員研修室を設けましたので、来年度から年間20回以上の研修を計画的に実施する予定です。事例検討や、職員個々のスキルに応じた個別具体的な学習は事業所ごとの研修に委ね、法人職員として専門職として必要不可欠な一般的スキルの向上を法人研修の目的としています。開催時間については、事業所ごとの研修は平日のお昼に時間を取っており、なるべく多くの職員が勤務時間内に参加ができるよう配慮しています。その間利用者への対応が手薄になることは否めませんが、利用者に対する良質なケアを実践するために必要な時間であるとの認識で取り組んでおります。利用者に対するレクリエーションやアクティビティ同様に大切な時間であると私どもは認識しているのです。週に1回30分はそのような時間を頂いております。一方法人研修では、平日の夜間行うことが多く勤務の時間内における参加が難しいのが現状です。今後はDVDによる聴講や、日中時間における開催等の調整を検討しているところです。
研修内容は、組織性と専門性の双方の指標を持って検討します。組織性とは、組織人として社会人として必要なスキルを指し、専門性とは、福祉専門職として介護職として介護支援専門員として不可欠なスキルを指します。組織性では、社会人としてのマナーやルール(ホウレンソウ・挨拶・メモ・電話・名刺交換等)の履行から、組織内における業務改善の実施や、経営者の立場に立った判断や処理に至るスキルが具体的には求められます。専門性においては、利用者の尊厳保持の理解から、基本的な介護技術の習得や、BPSDへの対応方法、地域における専門職教育の担い手に至るスキルを求めています。従来の専門職教育においては、専らこの専門性だけが注目を集めてきましたが、チームケアや家族支援の視点が重視されている昨今では、組織性の向上も欠かせません。「地域の絆」では双方の研修をバランスよく実施することを心がけています。ただし、専門性の方がどうやっても手間と時間を要しますので、専門性8に対して組織性2の割合でバランスを取っているところです。
また、私たちは人材育成の有効性を発揮させるため次の3つの視点を大切にしています。❶採用が育成の肝要であること、❷モチベーションを高めるのはビジョンであること、❸評価は、育成のためのものであり、処遇のためのものではないこと。
❶については、理念に共感し、意欲があり、思いやりのある方の採用に時間を要しています。面接時間を1時間と筆記試験(一般常識と事例問題、心理テスト、理念の黙読)を30分、計1時間30分から2時間程度のお時間を頂き、時間をかけて選考させて頂きます。またその場での即答は避け、最短でも3日後に採否の通知を出すようにしています。これは、理念に共感を示さず、意欲や思いやりもない人材を当法人では育て上げることが出来ないとの判断に拠った実践でもあります。しかし、考えてみてください、皆様方の職場でそのような人材を育成される自信がおありでしょうか?介護の職場は人手不足です。ですから、率先して採用したいと思えない人材を採用せざるを得ない状況があるわけです。そこで、選球眼を凝らして、ぐっと我慢して選別できるかが、後の人材育成における成否を分けることに繋がるのではないでしょうか。私は、法人の理念に共感することも、意欲も、思いやりもなさそうな人材を採用することは致しません。それは、私自身のみならず、誇りを持って懸命に働いている職員に対して失礼な行為にあたると思っているからです。
採否の通知についても、選考期間を敢えて設ける理由は、�〜�ばれて法人職員になったという矜持の醸成、��入職応募者に逃げ道を用意することにあります。採否の判断を即答されると、嬉しくないわけではありませんが、誰でも良かったのかな?と思われないでしょうか。そうではなく、一定の選考期間が設けられそこで喧々諤々の議論がなされた結果選考された方が、モチベーション高く入職をすることが出来るのではないでしょうか。また、ハローワークや求人票に明示されている法人情報は極僅かです。実際の採用面接場面で改めて理解することが殆どでしょう。その中で、人によっては考えが甘かったので辞退したいと思う人もいるのではないでしょうか。そのような方には、辞退を考える期間を設けて差し上げることも大切であると考えています。入職時のミスマッチを防ぐことが、後の人材育成の効率化に繋がるのではないでしょうか。
❷と❸は、介護報酬と介護職の給与体系の問題から派生している観点です。一般企業においても、バブル期と異なり、賃金を倍増させて職員のモチベーションを高めることが不可能になっています。ましてや、報酬の決まった介護職の場合、一部の職員に対する賃金の飛躍的上昇は可能であっても、全ての職員の報酬を飛躍的に高めることは不可能でしょう。そこでは、賃金以外にモチベーションを高める何かが不可欠となるのです。それが福祉専門職としてのビジョンであると認識しております。如何にこの仕事が、社会的使命や責任に則り、社会性の高い仕事であるのか。目の前の高齢者のケアをすることにどの様な社会的意義があるのか、如何に家族や地域住民が喜んでくださっているのか、その様なビジョンを明確に示すことが職員のモチベーション向上に繋がるものと認識しております。
キャリアパスが声高に叫ばれているのですが、賃金のための評価や育成ではあまり機能しないのではないかと自身は考えております。介護職は賃金のためだけに勉強し、評価を受けているのでしょうか。無論、そのようなケースも皆無だとは言いません。しかし、それが前面に押し出されることによって却ってモチベーションを下げる結果を招くのではなかろうかと危惧しているところです。
先ほど申し上げた通り、賃金の向上は全面的には望めない業界です。であるからこそ、法人独自に効率的な経営を図り、それを職員に還元していく視点は欠かせません。しかし、マクロ的には限界があるのも事実です。その時、賃金以外の評価軸を用いて如何に職員のモチベーションを高めていくのかが各法人に求められているのではないでしょうか。
等級制を用いたとしても一等級上がったところで精々5,000円〜10,000円程度の昇給ではないでしょうか。金額だけを基準に鑑みれば、それに見合った仕組みを作ることは不可能でしょう。つまり、等級を一つ上げるためにこれだけ頑張らなければならないのに、賃金はたったこれだけしか昇給しないという関係性が生じてしまうのです。であれば、評価は処遇のためにあるのではなく、専門職としての人材育成のための評価であると位置づけられるべきでしょう。法人としては、あくまで個々人の人材育成を後方支援するための評価でしかないと捉えるべきではないでしょうか。職員ひとり一人の自己実現のために育成や評価はあるのです。