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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

二度目の韓国訪問��

2012/01/10 12:00:00  社会福祉
見学に伺ったソウル市内にある特別養護老人ホームの外観。

 翌9月7日は同じくソウル市内の特別養護老人ホームを視察させて頂きました。閑静な高級住宅街の一角にある施設です。

 まず前日と同様、施設相談員から個室にて施設概要の説明を受けました。パワーポイントを用いての、プレゼンテーション風の説明です。施設概要の説明要旨は以下の通りです(※以下は、中島の解釈)。


対象利用者像
・最低年齢51歳(女性)
⇒40代で脳卒中のため倒れ、老人性の疾患で入所。法定では65歳以上しか入所できない。
・最高年齢102歳。
・全ての方は、家族の認識が出来るが、職員は認識できていない。食事は認識できる。
・男性21名・女性50名。
※中等度〜軽度の認知症の方が殆どであると推察できる。

ボランティア
・ボランティアが多い。
・ボランティアに出来てくれる団体が30団体もある。1団体で3〜15名の構成員。
・活動頻度は団体による。1ヶ月に1回の団体、1週間に1回の団体がある。
・毎週末学生が来ている。高校生以上から受け入れを行っている。中学生の受け入れは拒否している。
⇒理由としては、重症の方が多いので中学生にはケアが出来ないから。
※共生ケアの概念が無いようだ。支えられる側も立場や環境が変われば支える側に回ることがある。中学生にも実は、専門職にはない“ケア力”がある。そこを引き出し、繋いでいくのが社会福祉専門職であることが理解されていないと思われた。

職員
・28名の介護士が務めている。⇒多くが療養保護士1級の資格を持っている。

目的・目標
・「高齢者には愛を 家族には感動を」を中心的な価値とし、「実際の家族ではないまた一つの家族」「元気で楽しい療養院」「差別化されたオーダーサービス」というコンセプトを掲げている。

養護士
・心を読める細かい最高の支援を実践する。
※介護職に一番必要な資質は、察する力であると認識しているので、大いに共感できた。
・クライエントがオーダーしてそのプログラムを注文する。そのことを重要視する。
・個人の嗜好品とその状態に合う栄養食を準備します。

施設の歴史
時系列にまとめたスライドをもとに丁寧に説明される。
・2008年7月10日開院 老人長期療養保険制度(以下「介護保険制度」)が成立した時期に合わせて開院。
・2009年度 在宅支援・長期療養機関に指定。利用者を昼夜間支援できる体制が整う。
・2009年10月8日  長期療養機関として評価を受けた。
・2009年12月10日 優秀機関A等級に判定された。
・2010年2月1日  ソウルのデイケアに認定された。補助金を自治体から頂く。

ソウルデイケアのテーマ
○自治区別にデイケアセンターを10カ所
○自宅からデイケアセンターまでは10分の距離で
○ナイトケアを22時まで実施
ナイトケアの運営費はソウル市から龍山(ヨンサン)区を通じて頂いている。
等級やサービス提供時間数によって補助金の額は異なる。
・2010年11月1日  運営主体が、大韓聖公会に変更。聖公会は本部がイギリスにある。運営主体が変わっても、職員も院長も同じ方が引き継いでいる。大韓聖公会は福祉に力を入れている。病院の併設であり以前は、医療中心であったが、運営主体が変遷し福祉中心の運営に変わっている。今は病院とは関係が無くなっている。

施設の概要
・地下1階〜地上5階建て(土地2,096平米 延べ床面積2,966平米)
・地下1階 監視室(トイレや居室等に監視カメラがある)。
・1階   玄関・デイケア
・2-4階  男性と女性の病室がある。男性専用の病室が各フロア1室ずつと3階に2室ある。各フロアには個室がある。個室利用の際は別途費用が必要である。個室は主に富裕層が入所している。今後個室を増やすかどうかは検討中である。
○利用者の負担金は入所の場合、80%が保険負担。20%が自己負担。
○食費をプラスして、月額約60万ウォン。個室の場合は+90万ウォン(個室費)なので、月額150万ウォン(約10万5千円)となる。
※当時1円=約15.05ウォン。1ウォン=約0.07円
○デイケアの人は、15%が自己負担。
○入所待機者が100人近くいる。
○当施設は、終末期まで生活が出来る施設。だが、重症で意識不明の場合は病院へ送致する。
⇒こちらで亡くなられる方はあまりいない。
⇒在宅で葬式をするところが少ないので、葬儀場が病院にある。そこで葬儀を行うことが多い。
⇒サムスン病院の葬儀場では、食事代が100名参加して、300万円〜500万円かかる。

職員の配置
職員総数45名
入所部門:施設長1・事務長1・SW2・NS4・介護士23・栄養士とセラピスト9
デイケア部門:総数9名(施設長1【兼務】・SW1・NS1・介護士4・セラピスト2)

利用者数
入所部門:総数92名
内訳:1等級(“寝たきり”)31名・2等級(“車いす”)42名・3等級(“一部介助”)19名
デイケア部門:登録総数71名
内訳:1等級0名・2等級39名・3等級1名・ナイトケア21名

質疑応答
・入所者の心情はどのようなことがあるか?
⇒2等級・3等級の方々は家庭で自分の家にいても淋しいので施設にいることが嬉しい。話し相手がいるので楽しい。入所されてから1日2日間は沈み込むが、3日目ぐらいからは明るくなる。沈み込んだ期間は、長くしても1ヶ月以内である。殆どは一週間で慣れる。
・入所を否定的に考えている入居者に対して、療養保護士はどの様にかかわるのか?
⇒初めは、子どもがいるのに何でこんなところに入れられるのか?と考えるが、入所したら喜ばれる。
家族が見舞いで来るし、友達もたくさん来るので問題ない。
・近隣の利用者を意図的に選んでいるのか?
⇒近くに住んでいる利用者が多い。知人・家族等がいつでも面会が出来る。近くの入居者を意図して受け入れている。遠い方で車で20分ぐらいの距離。
・人材育成について
⇒若者の教育プロジェクトとして、表情管理を行っている。
⇒園長や、外部講師が指導を行いイメージメーキングについて学ぶ。
⇒専門職の先生を招待して、サービス提供の方法を指導している。
・施設生活の楽しみ方について
⇒幼稚園や保育園の子どもたちが来所し、世代間交流を図っている。季節ごとの遊びとして、太鼓・凧揚げ等を実施している。
・介護職の労働時間と給与体系について
⇒介護職は週40時間労働。1ヶ月の給与が12万〜13万円。
・給与が少ないと思いませんか?
⇒ボランティアの精神で、社会に何かのお役にたちたいとの思いで働いている。お金の金額より、誇りで働いている。
・療養保護士の倫理教育
⇒評価基準に定められている。毎月1回に2時間かけて実施している。
⇒内部及び外部研修で行っている。
⇒認知症予防方法、感染症予防、セクハラ、高齢者虐待防止、個人情報の保護等の内容を実施。
・社会福祉士の資格はどのようになっているか?
⇒1級〜3級の等級がある。社会福祉士の試験合格率は20%以下。
試験が出来る前は、大学4年間の大学卒業生の資格証でよかったが今は別途資格が出来ている。修士や、学士も卒業だけでは2級。試験をパスすれば1級の取得ができる。
⇒療養施設の社会福祉士配置に法的義務付けがある。利用者100人に対して、社会福祉士は1名。
⇒長期療養によって、医療的ニーズが高まっている。その中で、社会福祉士は曖昧な立場になっている。福祉現場ではプログラム策定等でやるべきことが多かったが、医療的要求が高くなって、立場が曖昧になっている。長期療養は、お金を出したら良いサービスを受けることが出来る。そのことで更に立場が曖昧となっている。
・地域サービス(ボランティアの受け入れ)
⇒ボランティアコーディネーターの社会福祉士が専属で配置されている。
⇒ボランティアの内容として、患者のマッサージ3時間ぐらい施行したり、散髪・美容を3時間程度実施すること等がある。身体介護は職員がやり、ボランティアは主に遊びの部分を支援する。
・待機者の生活はどのようになっているのか?
⇒在宅にいらっしゃる方や、他の療養院及び病院に入所・入院中の方が殆どである。

 その後、施設見学をさせて頂きました。その要旨についても以下のようにご報告しておきます。こちらは全て中島の解釈に依るものとなります。

施設見学
・1階の玄関前に、障害者の作業所が運営するカフェがある。日本でも良く見かける風景だ。
・職員に制服があるのは日本と変わりないが、利用者が同じエプロンを纏っていることに違和感を覚えた。
・一般病院よりも広い広さで、二人部屋が基本である。
・全ての人に同じ時間の同じ治療は必要ないという価値観を大切にしている。生活習慣はもとより、性格、趣味も異なるのだから、それを一番大切にしていますと職員さんはおっしゃられる。
・ベッド柵は二本だが、柵が長いため、日本のそれと比較すれば実質4本のベッド柵と同等の設えとなっている。日本では明らかに身体拘束に位置付けられる設えだ。
・居室のドアが開いているケースが多く、また居室の扉の一部が透明になっておりドアが閉まった状態であっても中が透けて見える設えになっていた。職員が管理しやすいことに重きが置かれ、利用者のプライバシー保持の視点が日本より希薄化しているように受け止められた。
・非常階段や普通の階段等にも施錠が徹底されている。監視カメラも設置されている。
・それでありながら、入居者の表札はカバーで覆い隠されていた。
・フロア内に目安箱が置かれている。日本でも良く見られる光景である。
・施設の廊下幅は日本と同様に非常に幅広く取られている。所々に腰が掛けられるようソファーが設置されていたり、車いす置き場と化している。車いすやストレッチャーの往来時を想定した廊下幅200センチは優にある設えが、利用者にとって本当に過ごしやすい設えであるのかは今一度検証の必要性を感じている。

 その後のホテルへ帰りのバスの車中、有能なバスガイドさんから韓国の文化について説明を受けました。

 韓国人の食事のとり方については、メインディッシュは小分けで出すのですが、その他のおかずは一皿に盛って配膳し、個々で取り合って召し上がるのだそうです。また、外食の際は、割り勘はしないのだそうです。杯を交わすことや、一皿のおかずを分け合うこと等を好んでされるとか。そこには、心も混ぜるという意味があるのだそうです。ただし、最近はそのような風習も少なくなっているようです。グローバル化が促進される中、各民族の伝統文化の画一化が顕著な昨今、そのような近代化が韓国独自の文化や風習を希釈化しているのかも知れません。また、食べきれない量を出すのが風習なので、食べ残しても失礼ではないそうです。中国でも同様の説明を受けたことがあります。
儒教については、韓国ではその教えが約600年続いているのだそうです。一つの宗教がこれだけ長く続いたのは韓国だけだとガイドは仰います。そのためか、歳をとっても親の前ではタバコを吸わない。などの礼儀作法が今でも重要視されているそうです。あと、旧正月と旧盆が韓国では主流であると説明を頂きました。

 そう言えばかつて日本も旧正月を祝っていた時期がありました。旧正月を祝う風習のあったアジア諸国の中で、なぜ日本だけが、旧正月で祝わないのでしょうか。

 この日一日を通して得た感想は、以下の3点でした。ボランティアの数が多いのですが、これは日本で言うところの地域包括ケアや地域ケアが念頭にあってのことではなく、無論それもあるにはあるが、むしろ、“安上がりの福祉”といった考えが強く含まれているのではないかと推察しながら話をお伺いしました。手元にある文献には次のような件が見られます。「中・高生は卒業するまでにそれぞれ60時間以上ボランティアをしなければならないことになっていて、天使園にも年間数万人ものボランティアが来るが、自ら進んでする人ばかりではなく、ただ時間だけ過ぎれば良いと思っているボランティアも多く、頭を抱えていた。最近では、社員に積極的にボランティアを勧める企業も増え、今後、もっとボランティアが増えるだろうという。しかし、真の意味でのボランティアばかりではなく、卒業単位など別の目的を持った『ボランティア』も多いように見受けられる。政府は人的不足をボランティアでカバーしようとしているのだろうかと、疑ってみたりもしてしまう」※。

 次なる点は、利用者の生活には、サービス提供者側の管理の視点が色濃く反映されていたことです。デイケアの利用者は皆同一のエプロンを纏われていましたし、入所空間においても、ベッド柵による“拘束”や、監視カメラ、プライバシーの確保がなされていない居室の設えなどがそれを感じさせた次第です。社会福祉援助技術では、極力利用者の生活を管理しないことがその基本として挙げられています。そのことは理解されていない状況でした。

 最後に強く引っかかったことは、入所者は皆さん喜んで入所されていると説明があったことです。儒教の話もあるように、中国はもちろん、韓国、そして日本においてもその影響を多分に受けた文化構造があります。その中で、喜んで施設に入所されていらっしゃる方が本当にそれほど多いのか。強い疑問を抱きました。そして、その疑問の正体は、次のカトリック大学訪問時に明らかにされていきます。


※金永子氏『韓国の福祉事情』新幹社 P.37 2008年10月



施設長さまを中心に記念撮影

 当法人の韓国語版のパンフレットも手渡しました。海を越えた交流が促進されると良いですね。


閑静な高級住宅街にある施設

パワーポイントによる施設概要の説明

 見学にお伺いした施設では、何処もパワーポイントを用いて説明して下さいました。見学者への対応慣れと、IT慣れが窺えました。


ドリンクとフルーツが出てきました。

 見学に伺った全ての施設が同様の対応をして下さっています。感謝・感謝。


広い廊下は果たして…。

 利用者の生活に良い影響を与えるのでしょうか?いつも疑問に思っています。車いすやストレッチャーの往来を想定しているようですが、平時真ん中を歩かれる際、支えるものがなくかえって危険が伴うように思われます。

 この広すぎる廊下も、ソファーや車いすの置き場所と化していますね。


長いベッド柵

 この長いベッド柵は2本で、日本のベッド柵4本分の面積が網羅されています。よって、日本ではこれは身体拘束に該当するものと思われます。

 安全で事故のないことが優先化され、大切なものが抜け落ちているように感じました。


透明な“スリット”が入った居室のドア

 ドアを閉めても、外から中の様子が窺えます。このような管理された生活を入居者の方は好んでされているのか?誰がそれを求めているのか?考えながら歩きました。


居室の室名札と表札

 室名だけ書かれているようですね。この部屋は相部屋ですが…。

カバーを上げれば…。

 入居者のお名前が出てきました。ご年齢も表記されています。

 監視カメラや、透明な扉、そして長いベッド柵等。それでいて、利用者のプライバシーを守るために表札は隠しておくこの概念は理解し難い。

 つまり、誰のためにプライバシーを管理しているのか、ということではないかと想像しました。利用者本人ではなく、家族や法人にとって都合が良いように管理している。そう捉えれば辻褄は合うのかも知れません。


美味しい肉まんのお店

 有能なガイドさんにご紹介いただきました。美味しすぎて、肝心の豚まんの写真を撮るのを忘れました。


食卓の引出

 外食先の食卓は全て写真のような設えになっていました。

お馴染みの箸とスプーン

頭の上に荷物が…。

 驚いていたのは、私たち日本人のみ。日本にもこのような文化の残っている地域があったような…。
Date 2012/01/10
中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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