4月に実施される介護報酬の改定案の全容が明らかになりました。予想はしていたのですが、しかし、これ程ひどい改悪となるとは「想定の範囲外」でありました。
介護報酬改定率は1.2%のプラス改定とされていますが、ほんの少し目を凝らせば、そこには、従来から介護報酬外に存在する「介護職員処遇改善加算の創設」が含まれてのことですので、実質としては大きなマイナス改定となっています。しかも、「介護職員処遇改善加算」は職員の給与等にしかその用途が認められないため、本改定に反映されるマイナス部分は事業所経営に打撃を与えるものとなるでしょう。事業所が打撃を受ければ、中小法人の割合の多い本業界です、各事業所は体力を消耗し、やがてそれは、職員の処遇であったり、利用者の生活にもマイナスの影響を与えることが予測されます。私は、社会福祉事業を経営している者の多くは、他分野の経営者よりも、より社会性の高い視点で経営をされている方が多いと認識していますが、体力を失ってしまっては、その理念も半ばで途絶えることになるでしょう。
例えば、通所系サービスの単価。「所要時間6時間以上8時間未満の場合」をとっている事業所が専らなのですが、その事業所が取る選択肢は次の2つとなります。� 崕衢彁�間5時間以上7時間未満の場合」、�◆崕衢彁�間7時間以上9時間未満の場合」。�,鯀�択すれば減算になりますので、多くは�△鯀�択することになるでしょう。しかし、約1時間近くサービス提供時間を延ばしたところで、1時間分の報酬単価が加算されるわけではありません。これは単純に電卓を叩いてみれば容易に理解できると思います。少しでも事業所から安価に労力を抽出しようと言う魂胆が丸見えです。これであれば、1時間単位の単価設定にしてもらった方が、事業者サイドとしても蟠り少なく仕事が出来るのではないでしょうか。
「そもそも民主党は(マニフェストにおいて)『4万円の賃金アップ』を掲げており、責任を持って、安心して(介護職が)働ける環境を整えねばならない」※( )内は中島、にも拘わらず、この度の改定もまたもや政策的ビジョン無くして終わりを迎えそうです。今の政府からは、社会保障に対する政策論が見えてきません。見えてくるのは、今までの経済成長路線をただ単に継承した惰性的理論でしょうか。いや、高齢化が進捗し、これだけ普遍的に社会保障費が必要不可欠となっている昨今、マイナス改定を行うことは、高齢者の切り捨てを豪語しているに等しい行為であると断言できます。
そもそも、「措置から契約へ」と謳われてスタートした介護保険制度です。いや、介護保険制度に拘わらず現在実施されている民間の社会福祉サービスは、もともとは行政が主体的に行っていたものです。それは、行財政の負担軽減を目論んだ実践でした。なぜ民間委託を測れば行政負担が減るのか。それは、公務員の給与体系では財政負担が大きいことが第一義としてあったからです。民間であれば、給与体系や雇用形態(非常勤や非正規雇用等)において、公務員の様な負担を考えなくても良いため安く上がるとの考えが根底にあったはずです。以前スウェーデンのソレンチューナ(Sollentuna)市で介護福祉局長に質問したことがありますが、スウェーデンでは、民間委託しても行政には財政上のメリットが無いと話されていました。なぜか。委託した民間法人に対しても行政事業と同等の委託費を支給しているからだとか。よって、民間事業者が増えても、市(コミューン)の負担は減らないと仰られていたのを今でも鮮明に記憶しています。日本の場合は、福祉サービス等の社会保障費の抑制のために民間委託が行われてきたのは明白です。しかし、一方では、憲法25条や13条には社会福祉や権利擁護にかかる国の責務が謳われています。いっそのこと、その原点に立ち返って、民間委託ではなく、政府や行政主体の事業として位置づけ直してはどうでしょうか。
※ 愛媛新聞「社説 介護報酬改定 抑制ありきでない在宅推進を」2012年01月30日