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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

イギリス語と音声言語

2013/04/19 02:41:28  社会福祉
4月に開設させていただいた地域福祉センター幸崎(さいざき)です。格子のグリーンは法人のイメージカラーです。
 またまたfacebookのお「友達」より大変有益な情報を仕入れることが出来ました。「鳥取県の平井伸治知事は11日の記者会見で、手話が言語であると明確に位置付け、日常生活の中でより使いやすい環境を整備する『手話言語条例』の制定を目指す考えを示した」ということであり、本条例の制定が実現すれば、「全国初」の出来事となるとの事です※1。

 世界的視座で見た際、手話は明確な言語であると認識されていることは周知の事実です。そこには、音声言語以上に優れた多様性があることも強く確認されてもいます。しかし、この常識が、どうも我が国においては非常識とされているようですね。わざわざ条例化しなければならぬほど、非常識化している訳ですから。

 音声言語も手話言語も等しく言語であると認識した「場合」、例えば生まれながらにして重度の聴覚障害者は手話言語を選択した方がその習得に苦労の少ないことが予想されます。しかし、多くの専門職やその家族は音声言語の習得を勧めている傾向があるようです。一体なぜでしょうか。

 同様のことは、イギリス語と日本語の関係においても見ることが出来ます。双方の言語を話すことの出来ない国民や民族が、今から新たに習得する言語を二者択一する場合どちらの言語を選択するのかは今や世界の常識ではありませんか。当然に、「世界共通語」となりつつあるイギリス語を選択する方が圧倒的に多いことに帰結します。イギリス語も日本語も等しい言語であるにも拘らずです。

 回りくどくダラダラ書くのを止めるとして、何を申し上げたいのかと言えば、ここには明確な言語間の差別構造が見て取れるということです。手話言語よりも音声言語を用いることが出来る人間が、日本語よりもイギリス語を話すことの出来る人間が優位に立ち振る舞える社会構造があると言えます。ですので、音声言語よりも手話言語を選択した方がその習得時間や労力の軽減が図れるにも拘らず、聴覚障害者の多くは音声言語を習得せざるを得ない現状があるのでしょう。イギリス語圏に生まれた国民と民族は生まれながらにして「世界共通語」を話すことが出来るのですが、我が国の様にそうではない民族と国民は新たな時間と労力を払ってその習得をしなければ「世界共通語」を用いることが出来ないのですからこれほど、不公平なことはありますまい。

 限られた人生の中で、単にコミュニケーションのために「世界共通語」としてのイギリス語を長い歳月を要して習得しなければならない日本の現実と、同様に音声言語の習得を強いられている聴覚障害者の現状からは共通する課題が見えるのではないでしょうか。

 言語学の様に言語やその背景にある文化を学ぶためにであれば話は別でしょうが、単にコミュニケーションを図るために、本来の社会生活において習得の必要の無い言語を学ぶということはそれは人生における有意義な時間の使い方であるとは思えません。なぜなら、最も大切なことは、伝える方法ではなく、伝える中身にあるのですから。仮に、明確なコミュニケーションの方法を有していたとして、伝えるべき内容が論理的浅薄であれば、全く以って意味がありません。この場合重要なのは、コミュニケーションツールとしての言語ではなく、伝えるべき内容であり、それは伝え手の中にある人格・情動・理論・思考によるものと思われます。であるならば、イギリス語や音声言語を習得する時間を、伝える中身を高めるために費やすことこそが、限られた人生における最も有効な時間の使い方なのかも知れません。

 「音声言語も手話言語も等しく言語であると認識した『場合』」と書きましたが、本来は言語間に格差などあってはならないはずです。しかしながら、そうはなっておらず、そこには格差や差別構造が蔓延っているのが現状であり、であればこそ皮肉を込めて「場合」と表記をしました。これを明確な差別構造であると捉えることの出来る人権感覚を培いたいものです。また、これは本来の愛国心・愛民族心の観点においても重要な視点となります。

 斯様な視座に立てば、小学校からのイギリス語教育の導入や、聴覚障害者に対する支援の在り方の本質が見えてくるのではないでしょうか。まさに、ミクロとマクロの双方の視点を有して成されるのがソーシャルワークであり、社会構造の捉え方を誤れば、それが誤った対人援助活動に繋がることの所以でもあります。



※1 『中国新聞』2013年4月11日


Date 2013/04/19
中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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