過日参加させて頂いた東京のセミナーでは、サービス付き高齢者向け住宅の整備において、そこには「自治体ごとの解釈の相違」があるとのご発表がありました。そして、そのことによって、事業者としての整備に支障が生じ、事業者にとってもクライエントにとってもマイナスになるものが多くあるとのご指摘でした。
さて、地域福祉を実践する者として少し整理をさせて頂きたいと思います。結論を問えば、ローカルルールは果たして悪か?と言うことになりますが、私自身はローカルルールなるものは、自治体が責任を持ってやる限りは、積極的に定めればよいと考えております。これだけ地域性が異なる状況下で、画一的なルールで物事を進めること自体に問題があると唱えます。
ただし、自治体が主体的・自律的に結果にまで責任を持つことがその根底にあります。たまに(?)見受けられるものとして、担当者の不勉強・無知によって、その独り善がりなルールが振りかざされることがありますが、これなどは真の意味におけるローカルルールとは言えますまい。
介護保険事業者と異なり、サービス付き高齢者向け住宅の設置者の殆どは営利法人であると聞きます。その際に留意しなければならないのは、地域共同体や、まちづくりをしっかりと担保した実践をして頂きたいことにあります。私の存じ上げる大手の営利法人はその点をしっかりとご理解されていらっしゃるのですが、それはまだまだ主流のお考えとは言えないようです。
新自由主義や経済至上主義によって、地域コミュニティは破綻した側面があると自身は認識しております。次の件を添えて、警鐘を鳴らしておきたいと思います。
「際限なく拡大するグローバル企業にとってもっとも邪魔なのは、歴史や伝統に根ざした地域共同体であるという。独自の規制をもち、結束が固いからだ」※。
地域共同体や地域コミュニティを逆に強化するサービス付き高齢者向け住宅の運営を切に要望していきたいと思います。
※田中 優子氏「風速計」『週刊金曜日』P.9 2012年5月11日号(894号)。
今日は東京(品川)でセミナーに参加させて頂きました。以前から尊敬の念を抱いております経営者がご登壇されると耳にし、自身の勉強のためにお話をお伺いするのが主な目的です。
サービス付き高齢者向け住宅と介護保険サービスの組み合わせについてのシンポジウムでしたが、内容が具体的で、実務的、かつ現実的なお話しばかりで大変勉強になりました。中でも、曖昧模糊としていた以下の点が、自身の中でも整理された点については有意義なことでした。
小規模多機能型居宅介護(以下、「小規模」)や、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(以下、「24HH」)といった定額報酬制を取っているサービス形態と、その他出来高報酬制のサービス形態とでは、そのサービスの中身に違いが生じるという自明の理について、その背景やそのことが制度に与える影響について掘り下げて考えることが出来ました。
予てから、例えば、「小規模」の訪問サービスと訪問介護のサービス内容には、明らかな違いが生じていました。適切なインフォーマルや社会資源を発掘・創出しない限り、独居高齢者の利用者の場合、電球の交換や、庭の草取り、ペットの食事提供等の訪問介護では認められていないサービスを「小規模」の職員が提供する場合が見受けられました。それに対して、行政側は、対応しなくても良いとも言わず、対応しなければならないと指導することもありませんでした。つまり、定額制という報酬設定の中において、最低限のサービスの定義は行うが、それ以上のサービスについては際限の無い状況があり、そのことが等閑に付され続けていたことになります。このことから、定額制のサービスは、サービスの下限は決められてはいるものの、その上限が非常に曖昧模糊としていると言えます。
さて、本日のお話です。サービス付き高齢者向け住宅の「サービス」は何処まで入居者に対応すべきか。様々な議論がある中、「24HH」でその限界点を支援すればよいとのご意見がございました。ビジネスモデルとしては、利用者本位の素晴らしいご意見であると伺っておりました。一瞬鳥肌が立つほど、流石にと思って聞き入っておりました。
しかし、今まで「小規模」の運営に携わってきた者として、何時かここを整理する時期が来るし、またその必要に迫られるであろうとも思いを巡らせていました。同じ介護保険のサービスであっても、「やっても良いこと」、つまり、サービスの上限が異なることに改めて気が付きました。これは、すなわち、介護保険制度の根底を揺さぶる要素があるのではないかと。
例えば、定額制サービスが行っている生活支援を、出来高制の介護保険サービスでも認めていく方向性になれば、それは現在よりもサービス対象範囲の拡大路線を歩むことになります。また、その逆も然りで、定額制サービスの生活支援の内容に規制がかかることも考えられます。なぜなら、サービス対象範囲を拡げ、それが固定化されてしまえば、それに見合った人員配置の必要性が高まり、介護報酬を上げざるを得ない状況になると認識するからです。
同じ介護保険サービスでありながら、その報酬体制の在り方によって、サービスの内容が大きく変わりつつあります。いずれ、どこかの時期にその整理が迫られることになりそうです。また、それこそが、制度の限界点であり、制度としての社会福祉の課題でもあります。しかし、制度としての社会福祉は、実践としての社会福祉との相互作用によって、より時勢に見合った形に変えていくことで継続可能なものになるのでしょう。その意味において、本セミナーは非常に有意義なものであったと認識しております。むしろ、社会福祉士やソーシャルワーカー等のソーシャルアクションを行うべき専門職のセミナーの方が、如上の政策提言など殆ど見られていないことを寂しく実感した次第です。
兎にも角にも、制度は万能ではありません。恐らく、介護保険制度で全ての生活支援サービスを提供するには無理があるのでしょう。であればこそ、それを補填するもう一つの柔軟なシステムを構築する時期に差し掛かっているのではないでしょうか。過日訪れたスウェーデンでも、社会サービス法に基づく訪問介護では一定の硬直化・画一化が見られましたが、実は、それを補うLSS法に基づく、パーソナルアシスタント制度によって、柔軟な対応を行う仕組みが存在しました。スウェーデンの場合は、制度を補うシステムと言うよりは、制度を二重構造化し、制度を新たな別の制度で補っているようにも見受けられましたが…。
「小規模」や「24HH」といった定額報酬制サービスは、いま、制度の在り方を根底から問いかけ、そして、新たな仕組みづくりを呼びかけています。
そのことに気づけた意において、この度は東京に来て本当に良かったと思っております。
「この国は人にはお金をかけない」。
2000年前後大阪の釜ヶ崎でボランティア活動をしていた当時、現地の児童福祉施設の施設長が私に話した言葉です。当時2008年夏季オリンピックの誘致に大阪は大きく揺れ動いていた時期でした。そこに莫大な誘致費用を予算化するその姿勢に対して、目の前の子どもたちに全く必要な費用を計上しないその姿勢を目がけて彼女が私に語ったものです。心あるその言葉は、今でも私の脳裏に焼き付いています。そんなことを過日訪れたスウェーデンの彼の地で思い起こしていました。
スウェーデンの介護では、介護職が利用者を直接抱えることはありません。全居室には固定式のリフトが設置されており、談話室や廊下等の共有の空間には移動式のリフトが設置されています。また移乗介護の必要な方のご自宅にもリフトや電動車椅子が当たり前のように設置されているのです。そして、それらの費用はその殆どがクライエント負担ではなく、公的負担に基づいてなされているのがこの国の在り方の様です。
それはクライエントに優しい支援であると同時に、そこで働く介護職にも優しい設えを考えてのことだと聞きます。
日本の場合は、その様な公的支援の無い中、自立支援という名の下に、介護職の卓越した介護技術が発達してきました。恐らく、その技術は皮肉にも世界に冠たる立ち位置に君臨しているのではないでしょうか。我が国の介護職の中には、機械で人を持ち上げるのは非人間的な介護の在り方だとおっしゃる方もいらっしゃるようですが、その背景には根本的な考え方の相違があるのです。
スウェーデンのボルボミュージアムに訪れました。今はスウェーデン国籍企業ではないものの、その起業精神に触れ、その考え方の違いに触れることが出来ました。例えば、トラックの車内構造を見て下さい。専ら運送業務に用いられるそのトラックのシートの座り心地の如何に良い事か。また長距離運転に備えた、後部座席にあるベッドの設えはそこで働き、仮眠をとる人々の疲れを癒すに値するに十分な設えとなっています。我が国の運送業に従事する地域住民から以前話を聞いたことがありました。昨今のトラックは、労働者のことなど考えてはいない。後部座席の仮眠用ベッドは年々小さいものになってきている。製造する側も、それを購入する側もそこにコストをかけることに興味を示さないと。遠いスウェーデンの地で、その車を眺めながらそのような会話を思い出していました。
スウェーデンは、法人事業税が日本に比べて安いと聞きます。しかし、従業員の社会保険料の負担額は日本の企業に比べて非常に多くの負担を負っているとも聞きます。「社会保険料は、雇用主がほとんどの部分を負担する。スウェーデン全体で被雇用者が払うのは、平均で社会保険全体の7%ぐらいである」※。社会保険料を算入した上で、法人事業税を国別に比較検討すれば、我が国の企業の負担率は然程多くは無いことは以前から言われ続けてきたことです。
高度な技術を保持し、そして、職業意識の高い我が国の人々に私は強い誇りを抱いています。他方、そのひとり一人に人間としての尊厳を保障するスウェーデン社会に強い憧憬を抱きます。
これから数回に渡り、二度目に訪問したスウェーデンについて再び叙述します。
※ 藤原瑠美氏『ニルスの国の高齢者ケア』P114ドメス出版 2009年12月
作業車両の運転席
試に座ったわけではありませんが、座り心地の良さが伝わってきます。
トラックの運転席
試に座りました。座り心地は抜群に良かったです。
トラックの後部座席
いつか泊まったホテルのベッドよりも寝心地が良さそうでした。
トラックの後部座席
冷蔵庫や照明等にも配慮が成されています。
トラックの座席
エアクッションが施されています。本当に座り心地が良いですね。これでは長距離運転も苦にならないでしょう。
施設に設置されている移動用リフト
日本円で約200,000円前後するそうです。
電動車椅子と移動用リフト
介護が必要な人の家庭に支給されています。
この写真の方は、優れた車を開発する技術を持っている国が、優れた車椅子を開発しないことについて、大変不思議がられていました。