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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

「悩む力」を培える仕事

2011/01/19 12:00:00  社会福祉
多くの方の来場で賑わいを見せた仁伍町内会主催 とんど火祭り 
 2008年にベストセラーとなった 『悩む力』(姜尚中氏)を今再読しています。いつまでも記憶に残っている優れた著書は、最低でも2度は読むことにしています。優れた著書は、自身の成長及び置かれている状況によって、読み取れる内容が大きく異なると考えているからです。

 「強制収容所に入れられた体験を持つことでも知られる精神医学者V・E・フランクルは、『Homo patiens(苦悩する人間)の、価値の序列は、Homo faber(道具人)のそれより高い』『苦悩する人間は、役に立つ人間よりも高いところにいる』と述べています」※1。

 「いまでは『まじめ』という言葉はあまりいい意味で使われませんし、『まじめだね』と言われるとからかわれているような気分になります。でも、私はこの言葉が好きですし、とても漱石らしいと思います。すべてが表面的に浮動するような現代社会に楔を打ちこむような潔さがあると思います。
 まじめに悩み、まじめに他者と向いあう。そこに何らかの突破口があるのではないでしょうか。とにかく自我の悩みの底を『まじめ』に掘って、掘って、掘り進んでいけば、その先にある、他者と出会える場所までたどり着けると思うのです」※2。

 なぜ私が今この部分に引っかかるのかと言いますと、これは私たちの仕事と深く関係のある箇所だと思うからです。私たちの仕事は、目に見える「結果」や「成果」が日々得られるとは言い難い仕事かも知れません。目の前の認知症高齢者に懸命にアプローチを試みても、その「成果」が目に見えて分かりづらい仕事です。そもそもどのような「成果」を私たちは求めて利用者に関わっているのか。そのことすら問われる仕事です。利用者ご本人が求めていらっしゃる「成果」と私たち専門職が求めている「成果」が異なってはいないか。迷い・悩みながら行う仕事です。

 私たちは、利用者の生活に関わる仕事、利用者の人生に携わる仕事をしています。他者の生活や人生に携わることで、恐れや不安を抱くこともあるはずです。そして、他者のそれだからこそ「正解」は何処にもありません。あくまで、その時その時の「答え」を察して導き出し、これで良いのか不安を抱えながら、実践するしかないのです。それが私たちの仕事です。

 しかしながら、不安や恐れ、迷いを抱かずしてこの仕事は行うべきものではありません。他者の人生に対する畏敬の念を抱きながら、ある意味恐る恐る携わるべき仕事なのだと思います。一見良い「成果」が見られたとしても、これで本当に良かったのか?一抹の不安を常に抱きながら実践するべきものでしょう。であるからこそ、「間違い」にもいち早く気づくことができ、「修正する」ことが可能になるのです。

 予てから、私はこの仕事は悩まない人には向いていないと思っていました。他者の生活を、人生を、簡潔に決めつけてしまうような人には向いていないと。しかし、その実践は暗中模索の状況に陥りやすいことも事実です。如上の通り、不安と迷いからの脱却が困難であり、「成果」が見られないことから達成感が得られ難い傾向があるからです。私は、この辺りの支持体制を、組織や制度の中で支えていく仕組み作りが不可欠であると認識しています。このことは今後の課題としてあるわけです。

 それでも敢えて、私たちの仕事は悩むことにこそ意義があると考えます。そして、そこから逃げ出すことなく、「まじめ」に向き合うことで、専門職として、一人の人間として成長できる気がしています。表層的・皮相的なものが蔓延る市井の中で、「まじめ」に悩むことは人類にとって今非常に大切なことだと認識しています。そんな中で、私たちの仕事は、その実践を通して、その大切な「悩む力」を培うことのできる素晴らしい仕事であると言えるのではないでしょうか。

 悩むことを通じはじめて、自分と向き合い、そして他者と向き合うことが出来ると本書は教えてくれているのです。

※1 姜尚中氏『悩む力』集英社新書P.10 2008年7月
※2 姜尚中氏『悩む力』集英社新書P.42 2008年7月



先人の叡智としてのとんど火祭り

2011/01/16 12:00:00  地域密着型サービス
 今朝の福山は氷点下5度。日中になっても然程気温が上がらぬ冷え込みでした。そんな中、朝8時前から仁伍町内会主催の「とんど火祭り及び新年互礼会」に参加させて頂きました。

 熟達された大工さんが多くいらっしゃる仁伍町内のとんどは、煌びやかな佇まいで市内でも著名な存在です。しかし私は、煌びやかであることのみが仁伍とんど火祭りの誇りではないことをこの度の参加で再認識しました。

 活動の中で、参加者ひとり一人に対して多様な居場所と役割が見られました。とんど火祭りという行事の中で、小さな集団がそれぞれの役割を担っているのです。とんどの準備をしている方、餅つきの準備をしている方、善哉・おつまみ・飲み物の準備をしている方、椅子やテーブルの設置をされている方、 備品を借りに出ている方等、それぞれが思い思いに各小グループ活動に参加できる状況にあり、その小グループ活動がとんど火祭り全体を織りなしている様でした。高齢者には高齢者の、子どもには子どもの、女性には女性のそれぞれの役割があるのです。仁伍とんど火祭りは、全住民参加型のイベントであると言えます。

 つまり、イベントの運営がまちづくりに繋がるという発想、イベントの運営そのものが目的ではなくその営みを通じて地域住民同士が交流促進を図るという実践がここには見られます。イベントの運営を経て、住民がそれぞれの役割を担い居場所を確保しているのです。日本の歴史の中で、行事がまちづくりの一翼を担っていたことは周知の事実です。それに整合する実践であると言えそうですね。

 注視すべきは、これらの実践を意図的には行っていないことにあります。無論、一部のリーダー的存在の住民はそうではないかも知れませんが、大きく戦略的に意図してなされている実践ではないと認識しております。むしろ、ごく自然に、当たり前のように実践されているのです。これは、長らく続いた歴史・伝統・文化の中から育まれた姿勢ではないでしょうか。行事を開始した先人たちは、どの様な思いでこの活動を始めたのでしょうか。地域のリーダーの話によれば、古い資料の中には、とんど火祭りの目的として「地域住民の交流促進」が一つ挙げられているそうです。それなりに意図され始動したことが伺えます。しかしそれは何処まで緻密に戦略を持って、実践が始まったのかは定かではありません。これは私の勝手極まりない推測ですが、おそらく、そこまで強い意図や戦略を持って始められたのではないものと認識しております。住民が一致団結してとんどを運営すれば、住民同士が仲良くなるだろうと。その様な思いだったのではないでしょうか。だからこそ、今至極自然に、住民に引き継がれた実践となっているのではないかと思うのです。その帰結として、リーダーが変遷しても久しく続いているのかも知れません。

 斯くの如く、地域には奥行き深い財産と誇りがあります。おそらく皆様方の地域にも、誇り得るものがきっとあるはずです。そのことをしっかりと認識し、明日への実践に繋いで頂ける事を切に願います。



数人がかりで設置するテーブル��


 これは本当に優れた叡智だと認識しております。既製品の長机ですと、これは一人で運んで一人で設置が可能です。この場合、個人作業になってしまうのですが、仁伍町内会の机は違います。写真の通り、協働作業で机の設置がなされるのです。

 物がなくても、いや、物がないからこそ交流の促進が図れるのではないでしょうか?
 見事としか言いようがありません。

数人がかりで設置するテーブル��

善哉・おつまみ・飲み物の準備をされる方々

 主に子ども会の方々と、元女性会の方々が活動されています。

子どもと高齢者は焚火の準備をされています。

備品の設営をされている方々

子どもたちは車に乗って、とんど火祭りのアナウンス��

 立派に呼びかけをしていました。住民に伺うと、読み文のたたき台は町内会で作成したが、実際の文章は子どもたちに考えてもらったとのこと。

 子どもたちにも立派な役割があるのです。

子どもたちは車に乗って、とんど火祭りのアナウンス��

餅つきの準備をされる方々

 それぞれに多様な役割があり、思い思いの場所で“仕事”をされていました。

短冊に願い事を…。

 地域の小学生が書いた短冊。毎年恒例の実践ですが、「お母さんの病気がよくなりますように…」の短冊に、ひとりの住民が「あの子のお母さん体調悪いんだなぁ」と思わず反応されていました。

 地域交流の営みがここにもあります。

地域住民と職員の交流��

 職員も朝早くから参加し、地域住民との談笑が絶えませんでした。

地域住民と職員の交流��

 イノシシのお肉を切っているのが、地域福祉センター仁伍の管理者・名越さんです。

子どもの役割が豊富です��

 とんどの点火に合わせた太鼓を子どもたちが演奏。

子どもの役割が豊富です��

 とんどの感想を子どもたちが披歴しました。堂々としていて、内容も立派なコメントでした。

とんどの点火です。来年も皆様にご多幸あれ!

緻密な計算に基づいて作られた竹酒の筒。

 地域のリーダーにこれは知っといてもらいたいとお話をお伺いしました。

 酒を注いだ際、ポンポンときれいな音が出るよう、竹の切り方と、穴の大きさを何度も試行錯誤し、現在の形に辿り着いたそうです。

 その試行錯誤の際にも、住民同士が顔を合わせ、意見を出し合ったのでしょう。

 これこそが、まさに日本の伝統文化としての行事の醍醐味なのです。


熊本の食文化

2011/01/11 12:00:00  食べ歩き

「駕町 どら家」(熊本市下通)
からしレンコン

 からしレンコンの発祥の地が熊本であることを知りませんでした。また、からしレンコンを食べたのも実は今回が初めてかもしれません。食欲をそそるウコンの入ったカリカリの黄色い衣に、からしの効いた味噌の風味とレンコンの歯ごたえの調和がバランスよく絶品でした。

「駕町 どら家」(熊本市下通)
馬肉のヒレ

 馬肉に対する印象も全く変わりました。牛肉よりも臭みがなく、甘みがあって非常に美味しいのです。馬刺しも、生レバーも甘みとうま味しか感じぬ代物です。
 素材のみならず、調味料の配合等の調理方法が良いのでしょう。このお店に伺うためだけに、思わず熊本まで足を運んでしまいそうです。
 店主の腕前に感謝!!

「桃源 銀杏通店」(熊本市花畑町)
太平燕

 確か、タイビーエンと読むのだと思います。熊本は四川料理のお店が多く、そこで賄い食として作られ始めたのがこの太平燕。熊本の方は、この太平燕は全国にあるものだと信じている方が多いくらい熊本では著名な料理だとか。
 残り野菜に春雨を入れて賄いで食べていたものが、庶民の料理となっているのです。

 地域によって食文化が異なります。グローバル化し画一化した社会の中でも、この様な多様性が残っていることを心より嬉しく思います。


「桃源 銀杏通店」(熊本市花畑町)
皿うどん

 私たちが連想するのは、パリパリの揚げ麺に餡かけがあるものですが、熊本の皿うどんは全く違っていました。
 甘辛い味で、お箸がどんどん進みます。

 他の文化は画一化が進んでいるのに、食文化の多様性は残っています。それは美味しいものを食したいという人類の願望がそうさせているのかも知れません。


熊本市への訪問

2011/01/10 12:00:00  社会全般
 限られた時間の中で、熊本市内を昼夜散策させてもらっての些細な気づきを書き留めておきます。

 熊本市の人口は725,466人(2010年12月1日現在)ですが、その割にお店や、道路・アーケードの幅が広く取られており、人口以上の賑わいを感じました。地元の方に伺えば、多くの方は車で30分〜40分圏内の市外に住んでいて、週に3回も4回も市内に出られるそうです。だから、人口の割に店舗数が多くても賑わいを見せているのかも知れません。

 熊本城は圧巻でした。市街地のすぐ隣に広大な敷地を有しています。市民がこの城を大切にされていることを痛感しました。他の都市では、市街地活性化を優先し、城内の敷地を開発しているところも多く見受けられます。長期の視点に立てば、どちらが住民のため、まちのためになるのか、熊本市民の取った行動は正しかったと言えそうです。

 広島市内と同様に、熊本でも路面電車が走っていました。タクシーの運転手さんは、「路面電車のおかげで、走りにくい」と言われる方もいらっしゃいましたが、まちづくりにはとっても最適な交通手段であると認識しております。地下鉄と比べると、上下移動が無いことから高齢者にも優しい乗り物と言えます。

 滞在中のホテルでは、水道水を飲んで過ごしました。熊本県内は、水道水の殆どが地下水であり、ミネラルウォーターとして美味しく飲む事が出来るとのことでした。その土地土地に行ってみなければ、その土地の財産は認識できないものです。熊本県民にとっては当たり前のことであっても、よそ者から見れば、そこに重大な財産があることが分かります。これこそが、地域の持つ力なのでしょう。

 食事や街並みを取っても、福岡や佐賀とは異なった独自の文化があることを認識し、感化されながら福山に帰ってきたところです。



開発中の熊本駅。高層マンションが建設中でした。福山と同じですね。

高齢者にも優しい路面電車が走る熊本市内。

賑わうアーケード。

店舗数はかなり多いと感じました。

相互関係にあるケアとまちづくり 〜ライフサポートワークを通して学ぶ〜

2011/01/09 12:00:00  地域密着型サービス
少しの時間を利用して熊本城に訪れました。どっしりと構えた趣きがあり、近寄りがたいほどの力強さを感じました。

 幼年期私の記憶が定かでない折、伺ったことがあるようですが、私としましては生まれて初めて熊本に来ている感覚です。九州は暖かいという印象で来たのですが、駅に降り立った瞬間からその印象は覆されました。昨日は朝方氷点下2度まで下がったようです。地元の方によると、盆地であって、京都と気候が似ているとのこと。風邪をひかないよう戦々恐々としているところです。

 全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会が主催するライフサポートワークの研修に参加させて頂くのが目的で熊本までやって来ました。現在殆ど行っていない大学院の修士論文で、小規模多機能型居宅介護のケアマネジメントを取り上げる予定ですので、このライフサポートワークの考え方及び実践方法の理解は避けて通れぬものと認識しておりますし、地域の絆における実践についても検討しなければならない課題であると考えてのことです。

 二日間における講義の中で、最も重要なご指摘だと認識したことは、旧来の日本型ケアマネジメントではなく、ソーシャルワークに基づいたケアマネジメントを想定して、ライフサポートワークがつくられていることにあります。ケアワークとソーシャルワークを繋いだ言葉として、敢えてケアマネジメントという言葉を用いずにライフサポートワークという呼び方をしていると。

 様々な定義がありますがソーシャルワークは、利用者の主体性を引き出しながら、その代弁機能を果たし、利用者のその時々の「ニーズ」に対応する社会資源の発掘・創出・開発を行うことにあると認識しております。つまり、社会的弱者や少数派と言われる方々の立場に立って、社会と対峙し、時に変革を行うことがソーシャルワークそのものであると考えます。

 元々ケアマネジメントはソーシャルワークの一部であると認識しておりますので、ソーシャルワークに基づいたケアマネジメントを実践することは「本来」自明の理であるはずです。「本来」と書くのは、そのような認識がなされないまま、今までのケアマネジメントが実践されていることを敢えて皮肉に表現しているわけです。つまり、従来のケアマネジメントは、社会資源の把握程度の実践しか行っておらず、その発掘や創出、開発、延いては利用者の代弁機能の有効化が殆ど見られないのが現状であるとの認識です。利用者の「ニーズ」の充足化を第一義に考えているのではなく、今あるサービスの範囲内で如何にそれに対応していくのか、また今あるサービスで応えられない「ニーズ」に対しては「送致」してしまう、と言った発想でなされているのが現状ではないでしょうか。

 ソーシャルワークの視点で行うケアマネジメントでは、利用者「ニーズ」に応えることを第一義と捉え、今ある社会資源では対応できないのであれば、利用者の立場に立って、社会資源の発掘・創出・開発を行い対応を図ることになるはずです。また、家族や地域住民の「ニーズ」と利用者の「ニーズ」に対立関係や乖離が見られる際は、あくまでも利用者「ニーズ」への対応を第一義としながら、その実践を行うために家族や地域住民が協力出来ることを共に探っていく必要があります。このような利用者中心主義の視点で、関係者の思いを調整していくことが本来の調整機能なのでしょう。二日間の研修ではおおよそこのような認識を得ることが出来ました。大先輩でいらっしゃる講師の先生方及び同じ受講生の皆様方に深く感謝申し上げます。

 利用者の生活支援をケアと捉えるのならば、ケアの行き着く先は、社会資源の発掘・開発及び利用者の代弁機能にあります。利用者の「ニーズ」を最優先に考えれば、そこには如上の取り組みが不可欠となるからです。つまり、ケアの実践を突き詰めて考えれば、それはまちづくりへの実践に繋がることが理解されます。そして、福祉専門職が行うまちづくりの実践は、利用者の「ニーズ」に応えることに繋がるはずです。まちづくりから、もしくはケアから、別々の入り口から入ろうとも、その道程は何処かで必ずぶつかるはずです。



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中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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