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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

スウェーデン(ストックフォルム ソレンチューナ)��

2010/03/02 12:00:00  社会福祉
介護福祉局の入っている建物の玄関。扉を開けて下さっているのは、西鉄観光の田中様。
 今日は午前中に、ソレンチューナ市介護福祉局を訪問し、午後からは、同じソレンチューナ市にある「介護付き高齢者住宅」【26床】を視察訪問することになっています。その中のささやかな気づきについて以下叙述してみたいと思います。
 ソレンチューナ市介護福祉局では、局長及び所管担当者からお話を頂きました。ソレンチューナ市の人口は、総人口63,000人、高齢者人口9,500人(高齢化率15.1%)。参加者からこの質問が上がった際、局長は高齢化率について答えられませんでした。すぐに計算できるのになぜか?局長にとって、恐らく高齢化率はあまり意味をなさない数字なのかも知れません。高齢化率よりも、高齢者人口を重要な数字と捉えているように推察されました。
 1時間半に及ぶお話の中で、国から市に対する助成金、国会での決定、法律での定め、といった言葉が数多聞かれました。このことを通して、彼らは行政職員として、政府の方針に対する強い信頼と誇りの様なものを強く持っているように感じました。中でも印象的だったのは、――経済危機が訪れた場合、高齢者福祉も影響を受けると思われるか――、といった主旨の質問に対して、――法律では、高齢者に良質な生活を保障することは定められており、国の財政・市の収入が減少しても、高齢者に対しては現在と同レベルのサービスを提供していく――と局長が断言したことでした。日本の行政担当者がこの様な事を言いきることはまず想像できません。それは、政策の方針がどのように、ブレるのかが不明瞭だからです。また、政府の方針が必ずしも、社会的弱者に手厚い真に国民目線ではないことも、社会福祉施策の方針が混沌とする要因でもあります。今より更に不景気になれば、政府は社会福祉制度を保護するのか、切り捨てるのか、どっちの方向を向いて舵を切るのか推測ができないのです。今までの経緯を考えると、後者を選択する可能性が高いのではないでしょうか。無論、そうあって欲しくはありませんが。彼らの話からは、そのことに対する不安や迷いを感じることは一切なく、むしろ明確に理解しているように窺い知ることができました。またこれは、後に訪問した施設の責任者や現場の職員さんのお話を伺った際も一貫して感じられた印象でした。国会での決定が最上位である旨の発言が聞かれた時、それを選択している国民の民度の高さまでもが、若輩浅学であっても想像できた次第です。
 つづいて、「介護付き高齢者住宅」【26床】において、副所長さんよりお話を伺いました。気づきとしては、職員配置は全職員で、31名が勤務。正看護師6名。その他25名が准看護師・看護助手。そのうち准看護師は85%(21.25名)であること。つまり、全職員の約7割が准看護師であるということでした。スウェーデンには施設という発想はありませんから、そこは住宅です。であればこそ、利用者が死を迎えるのは住宅となります。高齢者住宅では、日本でいうところのターミナルケアの実践が不可欠となり、そこでは医療行為が日常的に発生し、だからこそ、准看護師が主な担い手となっているのではないかと私なりに理解して話を聞きました。日本でも、厚労省は施設でのターミナルケアを奨励しています。であるならば、そこでなされる医療行為に対する方針を早急に打ち出すことが望まれるのではないでしょうか。介護福祉士は医療行為ができず、看護職員の配置が手薄い日本の施設の現状では、ターミナルケアの実践は非常に困難を極めているからです。
 後の気づきとしては、利用者に対する選択の自由度が日本よりも高いことと、全居室には固定式・廊下には移動式のリフトの設置が見られたことでした。
 利用者の居室は、同じ間取りであっても目を疑うほど中の様子が様々です。好きな小物・家具の搬入から、配置までが利用者の自由であることはもちろん、壁紙までも自身の好みの物を選んでおられるのです。日本の施設も間取りは一緒ですが、利用者の部屋一室一室における様子の相違は然程ありませんネ。
 リフトについてですが、スウェーデンでは職員さんはこの仕事に誇りを持って、しかも長く働かれていると聞いています。それは、如上の通り高齢者に手厚い政策の方針が定まっており、多くの市民がそれに同意している社会状況と、職員に対する手厚い福利厚生にあると思われます。給与に対しては然程日本と相違ない様に見受けられましたが、決定的に異なるのは、職員が余裕を持って働けていることでした。制度上多様な休暇が用意され、手厚い人員配置がなされていること。また、子どもの教育費も大学までほぼ無償であることを考えると貯金の必要もなく、介護職の給与でも暮らしていける状況が伺えました。
 各居室には固定式のリフトがあり、ベッドと車いすの移動は全てこのリフトで行います。また、廊下で利用者が転倒した際は、移動式のリフトで体を起します。この様な設備がきちんと整っているのもスウェーデンの特徴だと教わりました。これだけの設備を日本で整えることは、介護報酬や補助金の額から考えてまず無可能でしょう。そこにお金を投資するスウェーデンのお国柄がここにあります。
 無論、日本には優れた介護技術があるので、リフトなど使わずとも介護職員は腰を痛めない介護法を学んでいるという声や、リフトでの介護はまさに機械的であるといった発想に対して、私は否定するつもりはありません。問題なのは、制度や政策がどっちを向いているのか?ということではないでしょうか。そこに投資が必要であると考える政府のもと、職員は実に生き生きと働いていました。

ソレンチューナ市介護福祉局長及び所管担当者様からの
説明及び質疑応答

非常に立派な会場でお話を伺うことができました。ありがとうございます。

ソレンチューナ市のサービスハウスでは、
利用者と地域住民がともにランチを

ここはレストランで、利用者と地域住民が同じテーブルで食事をとっている。まさに、コミュニティケア。

介護付き高齢者住宅の談話室
おしゃれが、高齢者の五感に刺激を与える!

とにかく、おしゃれですね。ハイセンスです。

不完全遮断の仕切り

見えそうで見えない。見えなさそうで見える。利用者も安心して暮らせるし、職員は管理もできる。

固定式リフト(各居室及び浴室に設置)

徹底した設置振りでした。

スウェーデン(ストックフォルム ソレンチューナ)��

2010/03/01 12:00:00  社会福祉
スウェーデンには初めて訪れます。問題意識をしっかりと持って過ごしたいと思っています。
 日本時間の2月28日深夜、摂氏1度のストックフォルムに到着しました。現地の添乗員によればこれでも、ここ数週間で最も暖かい気候だそうです。社団法人福岡県介護福祉士会の主催するスウェーデン視察研修に参加させていただき、これから現地で二日間の視察をさせていただきます。
 今のところ私が持っている問題意識は以下の6点かと思ワレます。まだ、あまり整理をしきれていませんので。
�(〇禮餡肇好ΕА璽妊鸚�策の帰結としての総体的な現場の状況
�▲ぅ鵐侫�ーマル(親族・地域住民等)ケアをどのように取り入れているのか及びそのことに対する考え方
��ケア専門職の医療行為に対する行政方針と、現場の実践状況
�ぅ螢魯咼蠅藩�用者の自立(自律)の関係について
�ッ楼茱吋△紡个垢觜佑�方
�ν�用者やケア専門職は、生き生きと暮らしているのか
 日本の社会福祉の状況は、施設・事業所における専門性及び効率と効果の向上、地域の課題を地域住民が主体的に解決していく力(地域力)としての互助・共助を高めること等が当面の課題であると認識していますが、その先に考えなければならないことは、公助をどのように捉えていくべきかにあるような気がします。端的に申し上げると、現状レベルの介護報酬と人員配置で、利用者のニーズを十分に満たし得る良質なケアが担保できるのか。といった問題です。これは、大きな政策の方向性を考えなければ答えの出ない問題かも知れません。しかし、利用者の視点に立ち政策に働きかけるべきソーシャルワーカーとしましては、長期的に考えていかなければならない課題であると認識しています。�,任蓮△修良�分のヒントになり得る一片でも感じ取ることができればと思っており、本研修における最大の問題意識となっています。
 �△任蓮▲好ΕА璽妊鵑浪搬押�親族ケアは希薄であると認識していましたが、様々な文献をあたると実はそうではないと書かれています。親との同居こそしないが、子どもたちは親の住む家の近隣に住居を構え、定期的な訪問を行っていると聞きます。日本のような遠距離介護はむしろ少ないと聞いています。その辺りを把握できればと思います。
 ��は、日本でも問題になっている課題ですね。スウェーデンの状況を知りたいと思っています。�ぅ好ΕА璽妊鵑魯螢魯咼螢董璽轡腑鵑�盛んであると聞いております。それが、利用者の生活とどのような相互作用をもたらしているのかをお聞きしたい。�ァ�地域の絆がケアの実践を行う際、第一義としていること。スウェーデンではどのように考えられているのでしょうか。�ν�用者や職員は幸せでしょうか。今の暮らしに満足していますか。今の仕事に満足していますか。そして誇りを持っていますか。
 是非とも、ご教示いただきたいと思います。

宿泊先のホテル

革靴で移動しているため、雪で滑って何度も転びそうになりました。

ホテルの窓からの風景

あくまで私の肉眼における感覚ですが、ローカル電車の速度が速いように見受けられます。

新たな出逢いに感謝 〜重層的なネットワークの構築を〜

2010/02/21 12:00:00  地域密着型サービス
横浜の素晴らしい行政マン(ウーマン)にご案内していただいた水餃子の美味しい山東 (サントン)というお店の前にて。本当に勉強になりました。これからもよろしくお願い致します。
 去る2月19日横浜市内で行われた「09年度小規模多機能型居宅介護事業 勉強会」に参加させていただきました。「人材マネジメント」というテーマでお話しさせていただきましたが、準備不足も相まってあまり良いお話しができなかったものと反省しております。その中で非常に僭越な発言になるかも知れませんが、私自身は、非常に多くの気づきと刺激を頂くことができました。
 367万都市横浜で、小規模多機能を運営していらっしゃる管理者・職員の皆様方の苦悩を具体的に直にお聞きする機会が得られ何点か思うところがありました。以下要旨を列挙しますと―――
�〜反イ箸靴討領弋 ̄�変性及び専門性の高い人材が小規模多機能には求められること。
�∨/裕�模・種別や、運営形態(高齢者専用賃貸住宅との併設等)、経営者像(経営者の経歴や理念)の相違によって、悩みの内容が多様化していること。
��その中で、苦悩の丈を共有する仲間(ヨコのつながり)が必要であること。
�い修譴任癲�頑張っていらっしゃるのは職員の皆様ひとり一人に熱い情熱があるからこそ。
といったところでしょうか。
 小規模多機能の運営において、地域性や、利用者・家族の個別性に応じた形で、臨機応変な対応を実践することがその生命線であることは言うまでもありません。であるからこそ、そこに求められる人材としては、多様なニーズに対応し得る有能な職員が求められることになります。また、経営者及び管理者にとっては、細部にわたっての方針を決定し、明確なビジョンを打ち出し、情報経路の確保を図っていくことが他の事業よりもより強く求められます。小規模多機能では、厚生労働省令・解釈通知に示されていない部分が非常に多く、事業所と利用者との個別の取り決めによってサービスを提供する部分が非常に多くあるからです。それが、小規模多機能の生命線を担保しているとはいえ、それはそっくり職員さんの負担へと化してしまうのです(無論、職員さんの意識によっては遣り甲斐と化すことも)。そのような状況下において、小規模事業所が人材育成を実践するのは非常に難しい。
 小規模多機能の少なくとも人材育成に対して、何らかの公的支援が不可欠であると再認識した次第です。その中で、横浜市の行政職員及び市民セクター職員の皆様の使命感・実践に触れることができ、その姿勢に深く感銘を受けました。年に3回、半日かけた勉強会を中心的に実施し、外部からの講師を広く呼び寄せ、少しでも市内の小規模多機能型居宅介護の職員さんのバックアップに努めようとされるその姿勢に共感致しました。
 あと、もう一点学ばせていただいたことがあります。地域密着型サービスは市町村単位で、事業の指定・指導が行われます。よって、市町村単位でその運営の在り方が随分異なっていると思われます。地域主権の考え方からすれば、これは非常に良い傾向であると私は捉えています。しかしその反面、市町村という限られた文化・風土の中での実践だけでは、卓越した新しい視点を生み出すことは難しくなるのではないかとも考えます。その意味においても、各市町村圏域内の日常的なネットワークの構築は第一義としても、時には、市町村外・県外・国外の情報に広く敏感に反応し、市町村内・都道府県内・全国区といった重層的なネットワークの構築が、特に小規模多機能には求められているように思われます。
 そして、まちづくりのプロフェッショナルである行政(市民セクター)と、同じく福祉の視点でのまちづくりを志す福祉専門職は、協働するべき関係であることを再認識させていただきました。全国のどこの地域にも、まちづくりを真摯に考え、汗を流していらっしゃる行政マン(ウーマン)がいらっしゃることを確認することができたのが、明日への活力に繋がる一番の出来事でした。

個性を貫くには、偏見に負けない理論と「人格」を! 〜「福祉施設の制服」考〜

2010/02/16 12:00:00  社会福祉
【鞆の浦の常夜灯】 本日は鞆の浦のさくらホームさんを見学させていただきました。地域の声に耳を傾け、地域のニーズに応じた取り組みを真摯にされている姿に感銘を受けました。本当にありがとうございます。
 地域の絆には、制服がありません。利用者と職員の関係は、「お世話をされる側」と「お世話をする側」の関係が固定化されているのではなく、利用者も「お世話をする側」に回ることがあり、そのような自己有用感や、役割意識、達成感を利用者自身に持っていただくことが重要であると考え、「される側」と「する側」の固定概念を取っ払うことを主目的としております。また、小規模で「家庭的」な環境を鑑みると、職員全員が同じ服装をしている状況は少し異常な感を受けてしまいます。
 また、職員のファッション(服装や髪型等)に対しても特に決め事は設けておりません。「利用者の安全が確保された服装や髪型であれば良い」としているのみです。金髪・茶髪でもOKなのです。ただし、もう一つ条件がありまして、利用者・家族から「あの格好はだらしない」と指摘を受けた場合は、強制的に服装・髪型を改めてもらうことにしています。
 茶髪=「だらしない」という感覚は、偏見以外の何ものでもありません。しかし、社会全体にその偏見が蔓延しているのであれば、それでも敢えて茶髪を貫くのであれば、偏見に負けない理論と「人格」を備えるしかありません。
 私がこんなことを考えるようになったのは、今から8年前あるイタリア料理店で食事をしたのがきっかけです。そのお店の店員さんは、非常に個性的なファッション(金髪の髪型やピアス等)の方が多く、お店に入った途端少し圧倒されてしまいました。しかし、その感覚はその後数分で無くなりました。とっても素敵な笑顔と、タイミング良く配慮された丁寧な接客に対して、私の偏見はどこかに消え去ったのです。その後、非常に心地よい時間を過ごすことが出来たのを今でも鮮明に記憶しています。
 如上の経験から、偏見に打ち勝つだけの理論と「人格」を備えておれば、茶髪であっても問題ないと考えるようになりました。それこそが「自己責任」であると。自分の個性を貫くファッションをしたければ、社会の偏見に打ち勝つ理論と「人格」を持っておれば良いのです。そうすることで、「だらしない」「品格がない」といったレッテルを張られなくてすむのではないでしょうか。
 また、自身の個性やファッションを尊重できない職員が、利用者のそれを重んじることは難しいのではないかとも考えており、職員のファッションは原則「自己責任」としているのです。職員の「個」の確立なくして、利用者の「個」の確立支援は困難であると認識しています。
 ところで、バンクーバー五輪で問題となっている国母和宏選手のファッションの問題は、どのように考えるべきでしょうか。「国母選手はバンクーバー入りした際、ネクタイを緩めてシャツのすそを出し、ズボンをずり下げ、鼻にはピアスをつけて空港に現れた。10日の記者会見では『反省してまーす』と語尾を伸ばして発言、JOCに苦情電話や批判のメールが集まった」(京都新聞2010年2月14日)。
 スノーボードとストリート系のファッションには、相関性があると言われていますので、上記のファッションはそれにあたるように見受けられます。よって、そのことに対する一方的な「代表の品格がない」といった非難は、偏見以外の何ものでもないと荼毘に付すことも可能です。しかし、10日の記者会見での対応を見る限りにおいては、社会の偏見に打ち勝つだけの理論と、「人格」を備えていないことが露呈したようです。この点だけが、惜しまれてなりません。
 欧米のように個人主義が発達していない我が国においては、個性を貫くこと自体が容易ではないようです。そこには、決してぶれることなく隙の無い理論の確立と、強固な人格の形成が不可欠なのです。

効率化を図ることでより“粗悪”になる日本のケアとフィンランドのケア

2010/02/07 12:00:00  社会福祉
HPプロフィールの写真と同日に撮った写真。最近は、自分の写真を撮ることがないですね。思わず写真を撮ってもらいたくなるような、新たな状況や、場面に遭遇することがないのでしょうか。それとも、自身の内に”新しさ”や”ときめき”が欠落しているのかも知れません。いけませんね。
 1月末日にかけて、『朝日新聞』では「欧州の安心」と題した3連載の記事が載っています。欧州における高齢者ケアの現状と課題に触れたものです。その中で、1月27日はフィンランドにおける地方ケアの状況が紹介されています。読み始めには、違和感を抱きながら拝読したのですが・・・。
「『いつまでも在宅で』は理想だが、家が点在し、介護職員の確保が難しい地方の町は、都市部とは異なった課題も多い。
 高齢者向けのサービスセンターや施設などを一ヵ所に集中させることで、介護サービスの効率化と質の向上を目指す、フィンランドの地方自治体の取り組みを見た。(中略)」
 在宅支援などの拠点となるサービスセンターに、介護が必要な老人ホーム(入所者36人)を併設。その周りに、認知症向けのサービスハウス(同12人)や介護度が低めの高齢者向けサービスハウス(同16人)、元気な人も入れる高齢者住宅(同61人)が配置されている。(中略)
 (認知症向けのサービスハウス)は、12人の入居者に対して、7人の職員がいる。ゆったりとした雰囲気のなか、職員に見守られて、落ちついて暮らしている。
 (ロッピ町)高齢者ケア課のシスコ・ハーペネン課長「高齢者のみなさんに『ここに来れば、必要なサービスがある』と思ってもらえることが大切」と、一極化の狙いを語る。(中略)
 一方で、高齢者福祉で国が担うのは、国民年金などの所得保障政策だ。
 高齢者が施設に入所した場合、利用料の個人負担は原則、所得の85%と定めている。収入に応じた額を納めながら、自由に使えるお金も手元に残す考えがある」(松浦祐子氏『朝日新聞』「欧州の安心 中」2010年1月27日)。
 本ブログを読んでいただいている方には、「違和感」の意味がお分かりかと存じます。地域性における事情があるにせよ、高齢者だけを「一極化」して“集めて”なされるケアが、利用者の権利擁護の実践に繋がるのか、といった問題意識がここにあります。もともと地域社会には、老若男女多様な人間関係があり、その中にも、ひとり一人の住民にとっての関係性が存在します。その「関係性」こそが、その人の人生であり、生活の一部であることが認識されつつある昨今だからこそ、地域ケアが声高に叫ばれているのです。地域の中で培ってきた利用者ひとり一人の関係性を大切に、ケアの実践がなされることの重要性が認識されつつあります。中でも、日本においては共生型ケアの実践が顕著ですので、高齢者の「一極化」されたケアに対しては、私と同様に違和感を抱かれる方も多いのではないでしょうか。
 しかし、本報告では、もう一つの側面を窺い知ることが出来ます。ケアの効率化の先に、「手厚い」ケアや、政策の存在が顕在化しているのです。効率化を図るために、高齢者に対する「一極化」ケアを実践し、その分高齢者に対して「手厚い」人員配置でケアにあたる姿勢や、政策において高齢者の所得保障を充実させている姿勢は、日本それとは雲泥の差ではないでしょうか。
 日本においても、高齢者専用賃貸住宅と、小規模多機能型居宅介護・通所介護・訪問介護等の在宅サービスとの組み合わせにより、従来の在宅ケアよりも効率化にシフトした取り組みがなされていますが、効率化の帰結として、手厚い人員配置が行われている事例は全てではないにせよあまりお見受けできません。更に、従来の日本の社会福祉施策を鑑みると、効率化が図れるのであれば、介護報酬を下げるといった方策が打ち出される懸念も存在します。日本の社会福祉のあり方は、効率化を図って、法人レベルではそれを「計上利益」に繋げ、政策レベルでは公的負担の軽減を図ることに流れていくのであって、本報告に見るように、効率化の帰結としての、手厚いケアや、手厚い政策といった発想では断じてないことが理解されます。
 実は、本報告は、そのようなことを示唆してくれているように「読む」ことができるのです。
 高齢者ケアの「一極化」を図っているフィンランドですが、地域ケアの視点を担保するために以下のような取り組みがなされていることも、本報告では取り上げられています。
「ヘルシンキ近郊のベッドタウン、アスコラ町(人口約4700人)。ここも町役場近くに、老人ホームやサービスハウス、高齢者住宅などを集中させている。
 正午近くになると、サービスセンター1階のレストランには、併設する施設に暮らす高齢者のほか、一般の市民がランチを食べにやってくる。高齢者に疎外感を感じさせないように、地域の人との交流の場をつくる、フィンランドではよく見かける工夫だ。
 町高齢者ケア課のハンヌ・レイノ課長は言う。
 『生まれ育った地域で、最期まで人間らしい生活ができるよう支援する。私たちはそれを大切にしています』」。

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中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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