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NPO法人 地域の絆

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中島康晴

地域の絆 代表理事 中島康晴

『まちづくりとしての小規模多機能ケア』

2011/04/07 12:00:00  地域密着型サービス

まちづくりに繋がるコミュニティケアの実践��

 前回まで「地域の絆」における共生ケアの取り組みについて叙述しております。児童や高齢者が事業所・地域の中で社会的役割を担っている活動について紹介しました。共生ケアの視点でその他特筆すべきは、障害者の就労訓練としてのボランティア活動の受け入れと、その営みを通して当法人への入職が決まった事例ではないかと思われます。

 ある事業所においては、近隣の精神・発達障害者の作業所と連携し、就労訓練のためのボランティア活動の受け入れを行ってきました。障害者の就労支援の問題はようやく社会問題として顕在化しているところですが、働きたくても仕事に就けない障害者は依然として多く、働く働けない以前に、働く機会を奪われていることによってどの様な仕事に向いて、どの様な仕事には向いていないのか、その判断が出来ない方も非常に多くいらっしゃいます。そこで、まずは作業所以外の現場で就労訓練を目的としたボランティア活動の実践を行い、1カ月に1回定期的にモニタリング・再アセスメントを実施した上、仕事の適性判断や、介護の仕事に適性がある場合は当法人への就労も視野に入れた実践を近隣作業所と連携し試みました。

 地域福祉の概念として、支えられる側は絶えず支えられる存在ではなく、環境や立場が変われば支える側に回ることがあることをしっかりと認識し、どんな方にも強みや能力があり、その強みと能力を生かして社会に役立てることの支援を私たちは大切にしています。ですから、障害を持たれた方の強みや能力を生かせる活動内容を検討していきました。発達障害を持たれた方の場合、青年期の後半になると症状が落ち着いてこられ且つ多弁になられる方もいらっしゃるそうです。そういった方には、お話し好きな高齢者の話し相手になって頂いたり、鉄道が趣味の方には、元国鉄職員だった高齢者のお話し相手になって頂きました。また、言われたことを一生懸命にされる能力を生かして、掃除をして頂くなど、その方が他者より優れた能力があることを認識し、その能力を出来る限り生かす活動を実践したのです。

 1ヵ月に1度のカンファレンスでは、他分野の福祉専門職との意見交換が行われ、福祉専門職としての共通基盤の内私たちに欠けている部分も見えてきました。利用者が失敗することの大切さや、可能性への挑戦に制限をかけないことの重要性を他分野の実践を伺う中で改めて認識した次第です。共生ケアにはこの様な副産物があることに気づかされました。

 如上の実践では、活動を通して作業所職員とご本人がその後の就労先を決められ、活動を止められるケースが殆どで、当法人に就労された方はいらっしゃいませんが、他の事業所実践においては精神障害を持たれた方が就労に結びついた事例があります。ハローワークと相談支援センターの職員と連携し、ボランティア活動を経て就労に繋がったケースです。

 「地域の絆」における共生ケアの特徴は、介護保険事業における利用者を主たる対象者とし、利用者に対するケアの質が担保できる範囲で、「他分野」の方々の支援を行うことにあります。よって、職員は高齢者ケアの研鑽に絶えず励む一方で、「他分野」における研鑽には敢えて手を出さずに、福祉専門職としての共通基盤の範囲で「他分野」に対応することとしています。最大の特徴は、共通基盤で対応できないケースには対応しないという姿勢ではなく、法人外部の専門機関としっかりと連携を取った上で受け入れを行うことにあります。例えば、障害を持たれた方が職員として就労した後、突然出勤しなくなった場合、事業所は深追いせずに、障害分野の専門機関に対応を委ねます。また、活動中に心身の症状が悪化した際も、事業所職員のみで対応することはありません。必ず連携先の専門機関に対応を依頼することにしています。

 同じ空間・居場所は提供させていただくものの、多様な人々に対する具体的支援は、多様な専門職が連携して実践することが私たちの目指す共生ケアのあり方かも知れません。一つの事業所が全てを抱え込んで対応するのではなく、地域には多様な専門職がいるわけで、スペシフィックな外部の専門職の力を借りて、多様な人々の支援にあたることで、地域の中に多様で有機的なネットワークが形成されます。これこそがコミュニティケアの実践に繋がるのではないかと考えているのです。餅は餅屋と言いますが、逆に私たちが専門とする高齢者ケアの専門性を「他分野」の方々に提供することもあるわけです。

 時代の趨勢上、福祉専門職がジェネラリストとしての要請を受けていることは事実ですが、共通基盤で対応できる範囲には限界があります。その部分をスペシフィックな専門職が地域で連携を図り対応していくことこそが今強く求められているのではないでしょうか。

 また、外部との連携を基盤とした共生ケアを実践するためには、法人の理念や方針をしっかりと外部に示していく必要があります。今までご紹介してきた事例中の外部機関は、「地域の絆」の運営方針を理解された上で、連携を模索して来られました。つまり、「地域の絆」であれば、この話に乗ってくれるのではないかと予測して来られたのです。その意味では、私たちが実践する共生ケアの取り組みはネットワークを礎としています。

 共生ケアが徐々に広がりを見せつつある昨今ですが、多くの事業所が実践し日常的な光景となるまでは定着していないのも事実です。その必要性は理解できるが、「敷居の高さ」や「不安」を抱えている事業所も多いようです。まずは、私たちのように、介護保険事業を運営しながら、高齢者ケアを中心に据え、利用者の生活の質を高めるもしくは低下させない範囲において、児童・障害者ケアに取り組むといったことから始めてもよいのではないでしょうか。


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中島康晴 特定非営利活動法人 地域の絆 代表理事
1973年10月6日生まれ。大学では、八木晃介先生(花園大学教授・元毎日新聞記者)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる少数派の側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前をヒントに命名。
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